広島県福山市在住の近藤泰幸氏の作る近藤系“紅薊”
“紅薊”と言えば、ブラックリムと呼ばれる黒い鱗辺を持つクリアブラウンの特徴を持ち、その下地の黒さを持ちながら朱赤が乗ることで、よりべっとりと塗ったような濃い厚みのある体色を見せる。また、パンダ目と呼ばれる目の外環が黒いことから、独特な迫力が感じられるイメージの顔つきにも見える品種である。
広島県『めだか屋本舗』の近藤泰幸氏は、パンダ目だと体色が暗めになってしまうと感じられ、目の外環を明るくするようにと改良を進められた。体色も“紅薊”の通常のものより明るめの赤橙色をしているのも“近藤系紅薊”の特徴である。
近藤泰幸氏の飼育場である。
お邪魔したこの時は5月で、まだ採卵前、さらに種親用とされる“紅薊”は2cmほどの幼魚サイズであった。それというのも、近藤さんは気温の上がった8月から採卵をされるそうで、この時期、メダカ愛好家の容器で必ず見られる産卵床が近藤さんの飼育場ではほとんど見られなかったのである。この光景には少々違和感を感じたほどであった。
しかし、近藤さんの“紅薊”は夏に向かって温度が上がり、昼夜の温度差が大きくなると共に体色も濃くなるそうで、選別もそれを待つ。5月の姿では、まだまだ体色は完成されていないのである。高水温時には卵の数も少な目になってしまうが、歩留まりや質はよいと経験されておられ、他の“紅薊”とはひと味違う“近藤系紅薊”に仕上げられる。
5月の“近藤系紅薊”
朱赤色の上がりはさらにこれからなのだが、群れを見ていると白っぽく見えるような個体も多く見られる。“紅薊”と言えば、濃い独特な朱赤と黒のイメージだが、この三色柄とも言える姿が“近藤系紅薊”の特徴でもある。そのため、幼魚の群れがこのような光景になっている。
さらに、近藤さんが種親に使う個体は、黒みの強い個体を外される。ブラックリムの因子は非常に強く、普通に採っていても黒赤のタイプは出てくるため、そのタイプの組み合わせにしてしまうとそればかりになってしまうそうだ。ここからペアを組ませるのに、どういう組み合わせをするかなど考えると楽しくなる。
今回、近藤さんが残された冬の個体を撮影させていただいた。“近藤系紅薊”らしい三色柄が多く、“紅薊”らしい黒赤をした個体も見られた。
ペア1
ペア2
ペア3
ペア4
ペア5
ペア6
ペア7
ペア8
ペア9
ペア10
近藤さんご自身が選ばれた個体をお送りくださり、撮影させて頂いて個体で、今年の春本番になった時の採卵が楽しみである。“紅薊”系統はまだまだポテンシャルが高く、意外な組み合わせを考えて、交配するのも面白いだろう。