本当の美しさを見たことありますか?Section 1 本当は魅力的な熱帯魚

 これまで、「飼ったことありますか?」とエンゼルフィッシュや小型テトラなどを紹介してきたが、今回は、「本当の美しさを見たことがありますか?」という括りで魅力的な熱帯魚を紹介しようと思う。

 当社の歴史は、『熱帯魚・水草1400種図鑑』という本を24年前に刊行したことから始まった。
そして、図鑑を増やし、改訂しながら、現在は『熱帯魚・水草3000種図鑑』となっているのだが、ここ10年ほどで、日本に輸入されている熱帯魚の数は、24年前の『熱帯魚・水草1400種図鑑』よりも減っているのではないか?とさえ思える状況なのである。

『熱帯魚・水草3000種図鑑』から100種単位で減少してきたとしか言えないのである。

「熱帯魚は売れない、人気が低下している」と言われるのだが、販売される種類数が減ってくれば、当然、マーケットは縮小するのである。

 エンゼルフィッシュの時も書いたが、「60cm水槽が大型水槽…」のように言われれば、60cm水槽以上で飼育できる魚種はほぼカットされてしまうのである。

 東アフリカを南北に走る大地溝帯には、多くの湖沼群が点在している。その湖沼群には多くのシクリッドが生息しており、それぞれの湖で独自の分化を進めてきた。長さ600km、幅80km、深さ472m、総面積31,000km の広大なマラウイ湖、日本の面積から考えれば、海としか思えないマラウイ湖は、透明度も高く、年間の平均水温25℃、pH値7.8~8.5という、ミネラルに富んだ美しい環境を保ち続けている。

 その“硬い水質”のなか、体色も鮮やかな多くのシクリッド類を育んでいるのである。生活様式も多様で、岩礁に付着した藻類を専食する種類、それらを追いかけ回して捕食したり、水草に隠れて待ち伏せする魚食性種、底砂内の微小生物を食べる種類など、まったく無駄のない、他種の入り込む隙間のない生態系を作り出しているのである。

 以前は、このマラウイ湖産のシクリッド類が、そう時間を費やさずに現地から輸送されていた時期があり、また、ヨーロッパなどで累代繁殖された個体が輸入され、20年ほど前にはアフリカンシクリッドがブーム的に楽しまれていたのであるが、最近はあまり注目されなくなってしまった。

「水質を作るのが面倒そうだ!」と思われた以前に、60cm水槽以上、できれば90cm水槽以上での飼育に向くマラウイ湖産シクリッドは、もしかすると今の熱帯魚業界からは真っ先にカットされてしまったのかもしれない。

 別にエンゼルフィッシュのように「一度は飼って欲しい」とは言わないが、飼うチャンスまで奪ってしまっているのが現在の熱帯魚業界なのである。

“アーリィ”の呼称で親しまれていたスキアエノクロミス・フライエリィである。

このメタリックブルーの輝きはなんとも言えない美しさだったのである。

こちら、10年前に訪れた台湾南部のシクリッド養殖場である。

美しいフライエリィが群泳していたのである。手に取らせて頂いたが、太陽光の下で見るメタリックな輝きは本当に「美しい!」の一言であった。

こちらが婚姻色を呈したオス、

オスより地味な体色をしたものがメスである。

仲の良いペアであれば、60cm水槽でも繁殖できる種類がフライエリィなのである。

同じように、マラウイ湖産シクリッドとしては、

イエロー・ピーコックシクリッドと呼ばれるアウロカラ・ベンシュイ

ピーコック・シクリッドと呼ばれるアウロカラ・ハンスベンシュイ

アウロノカラ・マイランティ

アウロノカラ・スチュワートグランティ

アウロノカラ・ヤコブフレイベルギィ

このアウロノカラ属の魅力的な種類も13cm程度の種類で、上手く飼育すれば60cm水槽でも繁殖まで楽しめるのである。

マラウイ湖産シクリッドの代表種としては、

高い人気を誇っていたプラキドクロミス・エレクトラ

独特な体形で目立ったディミディオクロミス・コンプレシケプス

コパディクロミス・ボルレイ

コパディクロミス・アズレウス

「ムロト」の呼称で知られたコバディクロミス・クリソノートゥス

キルトカラ・モーリィ

「レッドトップ・アリストクロミス」と呼ばれていたオトファリンクス・リトバテス

「ステベニー」と呼ばれていたプロトメラス・タエニオラートゥスなど

こんなに美しいシクリッドが知られているのが、マラウイ湖産シクリッドなのである。

「大きな水槽でしか楽しめない」、「水質がうるさそうだ」、「店内でストックするのが大変そうだ」…こんな理由で切り捨てられた魚たちなのである。

そして、ドイツなどヨーロッパから輸入するとコストがかかるから、東南アジアや台湾で養殖された個体を輸入しよう…といった考え方で、その種の本来の魅力を出していない個体を輸入し、価格を下げることばかりを考えた結果も、このマラウイ湖産シクリッドを不幸な存在にしたのではないかと思う。

熱帯魚を飼育しようという人は毎年、新たに誕生するのだが、こういった状況では、マラウイ湖産シクリッドに興味を持つ機会さえなくしてしまっているのである。

「熱帯魚は売れなくなってきた」と言われるが、実は「簡単に売れるものだけを在庫しよう」、「小型水槽で飼える種類だけを売ろう」という、売る側の都合が熱帯魚をつまらないものにしてきたように思える。

日本が買わなければ、10年前に訪れた台湾南部の養殖場も、“アーリィ”の養殖を止めてしまっている。

日本での売る側の都合が実は世界に波及するのである。再び、マラウイ湖産シクリッドが熱帯魚店の水槽を泳ぐ日、それってすぐに出来ることではなく、何年もかかるのである。

当社のプロファイル100シリーズでもマラウイ湖産シクリッドの一冊があるが、熱帯魚は100種類単位でまとまっているもの。それぞれが復活することを願いたいのだが…

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