シクリッドの楽しみ方 再考2 パピリオクロミス・ラミレジィ

「シクリッドの楽しみ方 再考1」にてアピストグラマ属を順序立てて飼育することの大切さを書かせていただいたが、自分が中高生時代には、「アピスト」の代表種として知られていたのは、このラミレジィであった。今はアピストグラマ属とは違うパピリオクロミス属(あるいはミクロゲオファーグス属)に分類上は違うものとされたが、このラミレジィからドワーフシクリッドの魅力を知ったのである。

以前、当社が刊行していたアクアウエーブでも、一度、『ラミレジィが教えてくれるもの』という巻頭特集を組んだことがあった。

こちらはドイツ・ラム、ジャーマン・ラム、時にはオランダ・ラムと呼ばれているラミレジィの一型である。

このドイツ・ラムからラミレジィを取り巻く状況は変化したのであるが、それまでは、シンガポールなどで繁殖されていたラミレジィが多くの人にラミレジィの魅力を教えてくれたのである。

最近はあまり輸入されなくなってきているが、シンガポール産のラミレジィである。

こちらがコロンビアなどから輸入されてくるワイルドのラミレジィで、昔からシンガポールなどで養殖されていた元親はこの系統だったと推測できる。

ドイツから輸入される額部に黒斑をもつものが、ラミレジィの変異型と言ってもいいのである。

シンガポール産のラミレジィは、ドイツ・ラムが輸入されるようになる以前は、どこのショップでも販売され、しかも10匹以上が普通に売られていたのである。

初心者はこの魚を「ラミレジィ」だから購入していた訳ではない。ショップの水槽で綺麗な体色を輝かせて泳いでいたから、飼ってみたくなった魚なのである。

この「ラミレジィ」を入手し、飼育書や図鑑を見て、ドワーフシクリッドというカテゴリーがあることを知り、ペアを作って産卵するシクリッドの一種なんだということを知っていったものなのである。

こちらは卵を保護するラミレジィのメスである。ご覧のように、ラミレジィのメスは、成熟すると腹部が淡く桃色に染まるのである。

シクリッド類の多くは、オスの方が大型になり、体色も鮮やかなものが多いのだが、このラミレジィは多少の差はあるが、雌雄共に同じような体色を見せるのである。

産卵し、卵を保護すると仔魚たちが浮上し、自由遊泳を始めるようになる。その仔魚たちもラミレジィのペアはずっと保護するのである。

この微笑ましい光景を見たくて、シクリッド類を飼う人が多いのである。

仔魚たちを保護するオス親。

仔魚たちを保護するメス親である。

アピストグラマ属の稚魚は自由遊泳を始めてすぐにブラインシュリンプ幼生を食べることが出来るのだが、ラミレジィの場合は仔魚のサイズがやや小さく、自由遊泳を始めた当初の二日間ほどは、インフゾリアやパウダー状のベビーフード(人工飼料)などを小まめに与えて、ブラインシュリンプ幼生を与えるようにする工夫も必要なことが多い。せっかく自分で産卵させ、自由遊泳を始めた仔魚を「絶対に育て上げたい!」と飼育者なら思うもの、そのために「インフゾリアってどうやって殖やすのか?」、「市販されるベビーフードを使ってみよう」などの工夫をするのである。

「魚を飼育する」っていうことは、そういうことで、飼った魚をいかに状態良くするか?どんな餌が好みか?どんな水質で一番美しくなるのか?などを追求していくことが難しいが楽しいのである。

バルーンタイプと呼ばれる体が短くなったタイプである。メダカでいうだるま体形やピンポンパールなどとは異なり、薬品類を用いて、わざわざこういった脊椎骨の成長を阻害してこういった体形にしたものである。

こういったタイプを見て、「可愛い!」と思われ、バルーンタイプは観賞魚の世界では妙な人気があるのだが、生き物を飼うという意味を知っている人はこういった薬品で作られた魚は絶対に買わないようにしてもらいたい。

日本などが買うから、次々とバルーンタイプの魚を東南アジアのブリーダーは作る訳で、パールグーラミィ、キッシンググーラミィ、プラティ、モーリィなど信じられないほど多くの魚で、バルーンタイプが作られている。悲しい限りである。

しっかりと餌やりをしていけば、細く、小さかった仔魚たちも、ラミレジィらしい丸みを帯びてくる。

水草水槽にも良く似合い、鮮やかな体色はドワーフシクリッド類の中でもトップクラス、ペアを得るのも容易、産卵もよくしてくれる魚がラミレジィなのである。

今では自由に良い個体を選べるほどのストックをしているショップが少なくなってしまったが、テトラ類と同様、販売用の水槽で、お客さんの眼に留まる魚をショップには見せてもらいたいのである。

「この魚が欲しい!」と買っていくお客さんを作ること、それも楽しいはずである。

ラミレジィだけで一冊作ったことがあるが、一種類で64ページの本が出来るってそれだけラミレジィに魅力があるからである。

3 thoughts on “シクリッドの楽しみ方 再考2 パピリオクロミス・ラミレジィ

  1. nari211 より:

    fmb様、お疲れ様です!
    懐かしい!印象を持つパピリオ・クロミス・ラミレジィですが、私がグッピーの飼育を行いその後繁殖、でもって淡水性熱帯魚から海水魚へ飼育を変えた時に初めてこのラミレジィに出会いました。(^^)/
    最初見た時の美しさは今でも覚えてますよ!空いた水槽が無かったので、断念しましたが、最近は状態がイマイチか?
    種類が異なるのか?ドイツラムを見てもキレイでは無い個体が多く感じます!(+_+)
    知り合いが繁殖させていて孵化稚魚の初期給餌はインフゾリアを与えてましたねぇ!
    状態の良い個体が居れば購入したいと思ってます。
    最近では、ブルー系?を多く見ますが私はブルーよりワイルドが好きです!!(^^)!

  2. きむきむ より:

    この≪バルーンタイプ≫はいったいどうやって生成されるのかと思っていましたが、薬品で成長を阻害するんですね。
    てっきり放射性物質でも使うのかと思ってました。
    なんとも下品な表現型だとおもっていて、大型熱帯魚店ではいつも眉をひそめてみています。

    1. 株式会社ピーシーズ より:

      「売れればなんでもあり!」こんなことをしてきたから、熱帯魚人気が下がってきてしまったんです。魚そのものの魅力を楽しむ。この大前提をもっと訴えていきたいと思っています!今年は『All about Cichlid』って本をまとめます!

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