『花火メダカ』の作る“麒麟”を始めとする、渋い系の交配メダカたち。
“オロチ”誕生の地、奈良県の谷國昌博さんの飼育場取材を終え、次に向かった先が、奈良県天理市でメダカの異品種交配で結果を残されておられる、『花火メダカ』の乾 宏明さんの飼育場であった。
昨年、岡山のRSKバラ園で行われたメダカ交流会in愛媛のイベントで、乾さんにはお会いしたことがあったのだが、短い挨拶程度で、メダカについて長話しした訳ではなかった。
『花火メダカ』さんは、Facebookをやっておられ、そこで自分と友達になっていることもあり、彼のメダカの写真を時々、見ていたのである。
その時。「オッ!」っと思ったメダカが目に飛び込んできた。
この金色に輝く部分を持つ、乾さんが呼ぶ “麒麟”であった。
『メダカ百華』の取材先は、これまでの自分の観賞魚関係の雑誌、書籍を作ってきた経験とこれまでに『メダカ百華』の取材を受けてくださった方々からの推薦、自分がヤフオクで落札したメダカを実際に見るとこ、そして、今ではFacebookなどのSNSでの記事を見て、気になった方の記事を継続して見て、連絡させて頂いたりして読者の皆さんに提供したくなる方々をチョイスさせて頂いている。
乾さんは、“花火メダカ”の名前でFacebookに参加されており、この“麒麟”を見てから、継続して、乾さんのアップされる記事を見せて頂いていた。
自分の印象は、「面白そうな異品種交配をされて、累代繁殖もしっかりとされているみたいだ!」というもので、早速、取材の連絡をさせて頂いた。
乾さんは、「自分なんかで良いんですか?」という言葉を使われたが、取材させて頂く方を選ばせて頂く時は、“その人のメダカに懸ける情熱、そして、読者の方々にその方のメダカの姿、飼育方法から何かヒントを掴んでいただけること”を念頭にチョイスさせて頂いており、乾さんは、十分に魅力的な方だったのである。
『飛鳥めだか』さんまで来てくださった乾さんの車に乗り、乾さんの飼育場へと向かった。
「本当に大したことないところでやってるんですよ」と謙遜され続けておられた乾さんだった。
その乾さんが、飼育場に到着すると、乾さんが繁殖されているメダカを見ながら、饒舌に、そして楽しそうにそれぞれのメダカについて話し始めたのである。
乾さんのメダカ飼育容器である。この飼育場を見て、皆さんの「経験がある」と思われるに違いない。メダカを飼い始めると、次々と容器が増えて、容器を置ける限り置きたくなっていってしまうのである。
乾さんは各品種を累代繁殖されるというより、新しい模様、姿を求めて、異品種交配を中心にメダカを楽しんでおられる方である。
そうすると、F1、F2、そのF2の中からタイプ別に分ける…など、容器数は増えていくものである。
それぞれの種親を見せて頂いたのだが、乾さんはしっかりと目指すメダカの姿を想像して選んでおられるのだろうという意図はすぐに見てとれた。
こちらは乾さんが2012年から交配を始めた“麒麟”である。
品種名としては「黄金ブチ光体形」と言えるかもしれないが、メダカの“黄金”、“金”という呼称はメダカ愛好家にとっては注目される色合いの一つである。
このメダカは、乾さんが、群馬県から通販で入手した“龍神”とシルバー系のメダカを交配したことから始めたそうである。
“龍神”は群馬県の『ペットBRAND』が作っておられた系統だと思われ、「クリーム色ベースに茶・黒斑の個体」に付けられた呼称である。
その交配から光体形が出て来たそうで、もともと、乾さんは金色系がお好きだったそうで、出て来たメダカを3系統に分けて累代繁殖を続けられて現在に至っているのである。
乾さんが屋号に使っている『花火メダカ』は、乾さんが「花火が好きだったんです。その色鮮やかさが好きだったんで、メダカにもその魅力があるなって思って付けました」と教えてくださった。「なんで最初は金冠柳(カムロ)、金青冠柳(カムロ)などと呼んでいた」そうである。
冠柳(カムロ)とは花火の種類の呼称である。
この“麒麟”がこれから更に完成度を高めていくことを楽しみに待っていたい。
こちらは、コスモと“黄輝”の交配から乾さんが繁殖されているメダカである。体内光が赤っぽく反射する魅力的なメダカである。以前、静岡県浜松市にある『猫飯』の池谷さんが作った“蛍火(ほたるび)”と似たメダカだと言えるだろう。
こちらは、幹之フルボディと灯から出て来たブラックリム系のメダカを交配して繁殖されているF4個体である。
そのF5個体である。
乾さんは色鮮やかというより、渋い系のメダカがお好きなようで、「乾さんらしいメダカだなぁ」と感じた。
その中にはこんな個体もいた。
こちらは、三色ラメ幹之とやはりブラックリム系の特徴を表した“カブキ”を交配した個体である。
「自分の幹之はどうですか?結構、こだわって作っているんです」と乾さんが言われる幹之メダカである。顔つきも良く、鱗並び、体外光のきめ細かさ、しっかりと作られた幹之メダカが群泳していた。
こちらは“キラリ”と呼ばれているメダカと幹之光体形を交配したことから出て来たピンクがかった個体である。このメダカについては、今年、乾さんは多くを繁殖された次世代を見て、説明したいと思っている。
このメダカは、幹之フルボディと灯から出て来たブラックリム系のメダカを交配して繁殖された中にいた1匹である。この背中線に沿って光、独特の明褐色の背中線状の体外色はちょっと興味を惹かれた。
「この特徴を狙ってみてね!」と乾さんにリクエストすると、「数匹いるんでやってみます。出来るかなぁ?」と言われておられたが、是非、頑張ってみてもらいたい。
乾さんは、今年からこの場所ではない広い場所で本格的なメダカ作りをされる予定で、今シーズンはさらに繁殖量も増えそうである。
独特な視点でメダカを作っておられる乾さん、今年生まれてくるメダカの色合い、姿が楽しみでしかたないのである。