一年振りの雲州三色。その美しさに惚れ惚れした一日

5月4日、一年振りに“雲州三色”の誕生の地、島根県出雲市の野尻治男氏の飼育場にお邪魔させて頂いた。

初めて訪問させて頂いたのが、2017年5月4日のこと、今年も5月4日、本当に一年振りの再訪となった。

前日は三色ラメの作り手、岡山県岡山市の坂出和彦さん、『夢中めだか』のオープニング、そして『静楽庵』と素晴らしいメダカを堪能し、レンタカーで宿泊地の岡山県新見に向かうと、夜の10時で気温は8℃(汗)、実は「もう大丈夫だろう」と半袖しか持って行かなかったのである。風は強く、小雨混じり、「おいおい、マジか??」と思いながら、レンタカーからすぐにホテルの部屋に入って暖房を点けた。

昨年のメダカ界で大きな注目を浴び、マーケットを牽引した一つが非透明鱗性の三色メダカであったことは間違いない。岡山県笠岡市在住の小寺義克氏の作る“あけぼの”、静岡県牧之原市の『平和めだか』の“平和錦”、栃木県佐野市在住の島田一美さんが作られた“万葉”、福井県福井市の池田勇治氏が作られた“越前三色”など、各地のメダカ愛好家が時間をかけて作ってこられた非透明鱗性の三色が一気に注目を集めたのである。

野尻さんが作る“雲州三色”の注目度は、当社のホームページでダントツの一位の閲覧数で、それだけ多くのメダカ愛好家が、検索ワードで「雲州三色、雲州めだか…」を探されたのである。今日、現在で閲覧数の総数は18,256ビュー、昨年、一度、閲覧数をリセットしており、それ以前も5,000ビューを超えていたのである。トータルすると23,000ビュー、とんでもない数字なのである。

雲州めだかの“雲州三色”の素晴らしさ

雲州めだかの“雲州三色”の素晴らしさ

これが一年前の野尻さんの作る“雲州三色”のブログである。

5月4日、朝の5時半に新見市のホテルを出発、中国自動車道は空いていたのだが、時折、強風と激しい雨になる時もあったが、出雲に近づくにつれて天気は回復し、運転途中で綺麗な虹も見て、気分良く200kmの距離を走ることが出来た。

野尻さんに伝えていた到着予定時間は9時頃だったが、8時過ぎには到着!

すると、出雲市周辺は5月3日の夜には大粒の雹(ひょう)が降り、野尻さんの飼育場にも雹が積もったそうであった。

「今日、fmbさんが来るって言っていたけど、どうなっちゃうのか?と思うほどひどい雹が降った」と言われる。

雹によって木々の葉が落とされて、野尻さんのメダカ飼育池の表面にも千切れた葉が多く浮いていた。

まずはウダウダ言わずに、2018年になり、成魚となった“雲州三色”をご覧いただこう。

今年の“雲州三色”である。この仕上がり、素晴らしいの一言である。

非透明鱗性ならではの、白地と斑(墨)の美しさを発揮していたのである。

野尻さんは、今年の“雲州三色”の出来に満足されている部分が会話の中で少ない気がしたのだが、一年振りに見せて頂いた私の印象は、「まとまってきている!雲州三色の特徴が良く出てきた!」というものであった。

毎日、メダカの世話をしながら見ている野尻さんにとっては、日常見る普通の“雲州三色”になっているのは間違いないのだが、今年の“雲州三色”のまとまりは「凄い!」の一言だったのである。

種親として選ばれていた“雲州三色”は3〜4池に入れられており、本格的な採卵が始まったばかりであった。

ご覧いただいたメダカは昨年の同時期に採卵された個体で一歳である。野尻さんの飼育池には、秋仔と呼ばれる晩夏生まれの“雲州三色”もいたのだが、そちらは、これから緋色が上がって来るサイズであった。

「噂では10万匹以上、採ったって聞いていたんですけど」と尋ねると、

「10万は採った、正確な数は数えていないけど、10万以上は採った」と野尻さん、「三色の配色、これは人間がどうしようもない部分、そこの確率を上げるにはやはり数を採ること」を持論に、酷暑時にも採卵されたと言われる。

「“雲州三色”って呼んで頂いているメダカの持ち味は赤、白、黒のトータルのバランス」と野尻さん、さらに、「“雲州三色”は豪快さと品が揃えば…それが作っていく目標」と言われるのである。

三色の配色を飼育者がコントロールすることはできない。しかし、野尻さんは「その三色の配色のデザイン」と追求され、楽しんでおられるのである。「自分が満足できるのは、10,000匹選別して10匹程度かな?」と野尻さん、いやいや、それは毎日、“雲州三色”を見て、世話をされておられる野尻さんだからこその厳しい選別眼であって、三色の配色は個々の好みが発揮される部分でもあり、昨年も書いたが、20%以上は“雲州三色”としての魅力が体形、体色で表れていたのである。

10万匹以上を採られて、選別淘汰された数は9万8千匹(大汗)、そのメダカたちは既に野尻さんの飼育場には飼われていないのである。

この選別の潔さ、これは以前、野尻さんがメダカよりも難しい面がある出雲ナンキンという金魚の長年の飼育で培ってこられた部分なのであろう。

一年振りに見せていただいて、“雲州三色”、その感想は、「凄い!」、「非透明鱗も進化していくメダカなんだ!」という部分を教えて頂けた。

非透明鱗三色は、繁殖させると表現がバラける品種で、白色、白ブチ、赤ブチ、黄幹之と呼ばれるタイプ、全身、朱赤色の非透明鱗性のもの、幹之の青みが強い個体などが同時に出て来る。昨年、ヤフオクなどで高価になった“雲州三色”は、その後、卵や稚魚などが出品されるようになり、名ばかりの“雲州三色”を飼育している方がおられるかもしれない。

自分が感じる“雲州三色”の出現率が20%とすれば、80%は“雲州三色”とは呼べないメダカということになるのである。

作出者のメダカ、その意味は難易度が高い品種ほど、オリジナルの重要性が高いのである。「改良メダカは品種名を飼うのではない!」ということをメダカ飼育歴の浅い方には忘れないで頂きたい。

野尻さんの満足する配色を獲得した非透明鱗三色が“雲州三色”なのである。

作出者本人である野尻さんが「まだまだ満足していない」と言われるのだから、横で見ているだけの自分が驚いてしまうのである。

実際、野尻親子と話しをさせて頂いて、「お二人の選別眼が昨年より更に厳しくなっている」という印象を受けた。だからこそ、「去年より今年の“雲州三色”は凄い!」という印象を受けることが出来たのだろう。

池見は、前夜の雹の影響で水面に浮遊物が多かったため、綺麗に撮影できなかったがご覧いただこう。そして、個体撮影の新水の中にも花粉が混ざっており、白い粒になって写ってしまったことはご容赦いただきたい。

野尻さんが自信がある!と微笑みながら言われたメダカがいる。

それがこの野尻さんの幹之である。

網の中の姿を撮影させて頂いたが、頭部の輝青色は両眼の下までフルに発色しているのである。

「これは本当に良くなった。もうプラチナ鉄仮面って言う名前にしたいぐらいだ!」と野尻さん、“雲州三色”では「まだまだ満足できない」と言われる野尻さんが微笑みながら楽しそうに言われるのだから、相当な幹之メダカなのである。

約4時間の滞在となったが、本当に楽しい時間を過ごさせて頂いた。

美しいメダカがいて、そのメダカを見ながら作出者と会話が出来る…それこそが改良メダカ飼育の楽しみなのだと感じた。

「また来ますね!」と野尻さんにご挨拶をさせて頂き、出雲を後にした。

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