『行田淡水魚』訪問
埼玉県行田の『行田淡水魚』と言えば、メダカ歴20年を超える小暮 武氏である。小暮さんが世に送り出したメダカは数多く、“北斗”、“赤色らんちゅうメダカ”こと背ビレなしメダカ、水泡眼を固定した“Hitomi”など、メダカの品種改良に多大な影響を与えてきたメダカたちである。
その小暮さんが今年3月5日に小売部をオープンされた。『行田淡水魚』は生産業者のため、基本的にはほとんど小売はされていなかったのだが、息子さんが一緒にメダカ業をされることにもなり、ご自宅前のハウスを小売部として整備された。
行田駅から住宅街を進むこと10分ほどで、『行田淡水魚』のハウスが目に入る。2棟並ぶ左側が小売用にされた。中にはプラ舟やNV-BOXが整然と並び、エアーも配管され、養殖業用の時よりも格段に見やすい配置になっていた。
右側には小型のガラス水槽が並び、中にはお薦めのペア組みされた品種が収容されている。また、プラ舟の方も品種によってはオスメスで容器が分けられており、個体選びがしやすいスタイルになっており、前準備をすることになるが、売る側も買う側にも利点のある形になっている。
市場に流通させるための各種メダカを養殖されているが、新品種作りや特異な形質を固定するための品種交配を精力的に行っている小暮さん。そうした交配品種は、すぐに流通させることはされず、5〜6世代交配を重ね、形質のまとまりが8割ほどに達さないと出さない強いこだわりをお持ちである。改良品種作りでは当たり前のことなのでもあるのだが、その当たり前ができていないものが多い中、プロのこだわりを見せていただける。
『行田淡水魚』小売部では、その小暮さんご本人が作り選別したメダカ達を購入することができるのである。
“北斗”。『行田淡水魚』の代名詞とも言える品種で、近年人気の高まった“黒百式”など全身体内光メダカなどに大きな影響を与えた系統である。
“マーブル”。“北斗”に体内光メダカを交配したもので、黒みが増すとともに体側にグアニンの輝きも現れ、明るい容器でもその独特な姿を楽しむことができる。
“Hitomi”。ビッグアイの水泡眼メダカ。水泡眼は遺伝しないと言われていたが、小暮さんはクリアブラウンのF4で水泡眼の遺伝を確認された。単発でしか見られなかった水泡眼が、複数群れ泳ぐ光景を見せていただいた時には驚かされた。
“緑光パール”とされていた個体。“緑光”を殖やすうちに、ラメ表現に着目して分けているそうだが、ちょっと独特な体の色合いに目が止まった。
これらのメダカたちは、すべて販売槽から撮らせていただいたものである。どれもしっかりとした作りで、気温が上がってきたこともあり、ほどなく産卵も開始するだろうと思える状態の良さであった。
プレオープンの際には、親しい方々が接客や販売の応援に駆けつけていた。アットホームな雰囲気に包まれた空間であり、小暮さんのメダカに関するお話も興味深い話ばかりである。機会があれば、ぜひ訪れて欲しい場所である。