『武州めだか』訪問
埼玉県熊谷市にある『武州めだか』の安藤さんは、埼玉県の加須市場や浜松の清水金魚へメダカを出荷されている生産業者である。錦鯉や金魚、タナゴなどの日本産淡水魚と様々な観賞魚を手がけておられ、2020年の10月から『武州めだか』として本格的に動き出された。
畑や田んぼの中を進んでいくと、一際目立つハウスが目に入ってきたのが、『武州めだか』のハウスである。生産業者であり、こちらで小売はされていないため、一般公開はされていない。ハウスは15×9mのサイズで、昨年お伺いした際は、手前のハウスには左右にジャンボダライが並び、中央はNV-BOXが単管パイプで二段に組まれ、約200個の容器がフル稼働していた。奥のハウスは準備中とのことであったが、今年お伺いすると、ジャンボダライやNV-BOXの仕様と共に、3トンのプールが中央にずらりと並んでいた。
大水量のプールを使用したことで、メダカの成長は格段によくなったそうである。「100リットルに100匹よりも、3000リットルに3000匹の方がいいですね」とおっしゃる安藤さん。よく水量の目安にメダカ1匹に1リットルの話もでるが、水量は多ければ多いほどよいという結果を得られていた。
昨年の夏からリリースを始められたのが、クリアブラウン系統の肌色体色をベースに、緑色がかったラメ、スワローのヒレを持たせたハウスネーム“ミント”である。
市場に出してからも人気を得ているそうで、『武州めだか』の代名詞的存在になっているそうだ。
昨年、お話をお聞きした際にも「ラメ系の人気が高いので意識してますね」と、市場の動向を気に気にしながら生産するメダカを決めておられた。市場に出すのは若い個体が中心になり、ヒレ長や三色など仕上がりまでに時間のかかる品種は不利になることもあるそうだ。また、話題の品種では多くの生産者が一挙に出品してくると価格が下がることもあり、品種選びにも気を使うそうだ。人気品種でも、あえて大量に出てくるのは避けたり、他の業者が作っていなかったりやめてしまった品種を作ることで、安藤さんしか出していない品種もあるそうだ。そして続くラメ人気から、オリジナルのラメ系統作りにも力を入れられている。
“ミント”の普通体形に“夜桜”を交配したハウスネーム“彩桜”
「彩の国」である埼玉県、そして熊谷市の花である桜から名付けられた。ラメをより強化するために“夜桜”を交配し、普通体形にするために交配系をさらに“夜桜”に掛け戻しをして形質を固めているそうだ。
“ミント”の普通体形に“煌ラメ”を交配したハウスネーム“フェニックス”
こちらは濃いオレンジに緑系のラメを持たせる方向で、やはり普通体形にまとめられている。
代名詞である“ミント”を使っての交配を精力的に行っている安藤さんであった。“ミント”はスワロー表現であるが、普通体形での改良を進めているのは、どうしてもスワローではうまく産卵ができなかったりするので、それを改善したいという思いがあったそうだ。
“銀箭”にオーロラブラックラメの青ラメを交配したハウスネーム“グレイシャーブルー”
氷河の青さを意味することから名付けられた。青白い輝く色合いやヒレの光に注意されており、交配個体のオスを選び、それに“銀箭”のメス、オーロラブラックラメのメスを掛け戻すようにして交配作業をされているそうだ。ある程度育ってから完成するので、市場的には不利だそうだが、普通体形とロングフィンと系統作りを進めている。
これら以外にも交配や選抜育成を精力的に行われておられ、この春以降、市場への出荷も始まる予定である。ハウス内もフル稼働であるが、さらにハウス奥にも用地が準備されていた。次にお伺いする際には、また新たな姿を見せていただけそうである。