『めだか夢や』訪問
千葉県柏市にある『めだか夢や』にお邪魔した。新京成線五香駅からお店近くまでのバスもきているのだが、この日は東部野田線高柳駅から歩いて向かってみた。駅前から10分弱歩いて住宅街に入り進んでいき、さらに畑や小さな雑木林に囲まれた道を進む。駅からはのんびり歩いても20分ほど、見えてきたハウスには『めだか夢や』の立て看板がすぐに目に入る。
ハウス内は店主の馬場さんがメダカを楽しむ場所でもある。「趣味の延長ですね。毎日の餌やりや世話が楽しくてしょうがないです」とおっしゃる。「売りたくないのは意地悪な値段にしちゃうこともあります」と笑われていた。
ハウス左側は小売スペースに使われ、プランターやNV-BOXが整然と並ぶ。中には楊貴妃や幹之といった基本品種から、馬場さんが精力的に行っている交配系統など様々なメダカが収容されており、ひとつひとつ覗いていく楽しさがある。「誰もが気軽に来られるお店」を目標とされる馬場さん。初心者の人でも長く楽しめるような手引きができるように心掛けておられる。
鑑賞メダカ愛好会のイベントを通してや、海外との交流など幅広い活動をされており、多くの人にメダカを知ってもらい、楽しんでほしいと普及に力を入れられていた。
ハウス右側は主に繁殖育成のスペースである。こちらもプランターがびっしりと並び、下段にはジャンボダライが並ぶ。ここから馬場さんに作られたメダカ達が産み出されていく。
“銀箭(ぎんせん)”。「青色、体外光、ヒレ光、一周光、胸ビレ光、ヒレ長」の要素を持った光体形品種。馬場さんが2015年から松井幹之や月虹、緑光、サンセット極み龍などを用いて選抜交配を進めている『めだか夢や』を代表する系統。本系統と他品種との交配を行う愛好家や養殖業者も多い。
“銀炎(ぎんえん)”。“銀箭”とやはり馬場さんが作出した全ヒレ光松井ヒレ長幹之の“蒼穹(そうきゅう)”を交配した系統。F5まで進めているが、より選別を厳しくしながら、ラメを増やしヒレも伸ばし、側面の質感にも気を配りたいとされていた。
“黒百式光体形”ד鯖”。黒っぽい体に青いグアニンの輝きが人気の“黒百式”系統魚だが、馬場さんも独自の交配でF6まで進めておられた。
“サファイア”×オーロラ黄ラメで進めている系統。多色の体に青いラメが並ぶ姿は、最近の注目表現でもある。
「メダカの交配は絵空事から。妄想するのは自由、できればオー!だし、ダメならアーア」そんな風に取り組むメダカの交配に楽しさを見いだして欲しいとされていた。また、交配をするにも、自分だけでなく二人でやればいろいろな可能性が増えるので、そうしたお手伝いもしたいと考えておられる。なにしろメダカを楽しんでほしいという想いが強く伝わってくる方である。
そして、メダカ飼育に対する熱量も大切とされる。一瞬にガーと燃え上がるのではなく、少ない火でも長く燃え続けることがメダカの品種改良には向くと実感されていた。交配して新たな表現を産み出すのは、選別淘汰を繰り返すなど時間がかかるものである。ぽっと出た表現でなく、しっかりと遺伝することを確認するには当然、時間がかかる。それでも時間をかけて思う表現ができたときの喜びは非常に大きなものになるだろう。そんなメダカへの想いと取り組みが詰まっているお店であった。