メダカの交配、その楽しみ方と方法 1

先日、栃木県栃木市にある『めだかの箱庭』にメダカの撮影にお邪魔した。

その目的は、『めだかの箱庭』の島田賢一さんの交配に独創性を感じたからである。
改良メダカの面白さは、「新たな表現を作る」ところにもある。

現在、多くのメダカ愛好家が目指す目的の一つに「自分のオリジナルを作りたい!」という思いがある。「ハウスネームを付けられる」という改良メダカの世界独特の楽しみ方があるからだ。

しかし、ここ1、2年、これまでの「ハウスネーム」の考え方から、「ハウスネーム」が商品名になってしまっている感が強いのである。

「ハウスネーム」とは言っても、実際は「他の人に認められてその名前が使われる」部分が大きく、これまで、様々な「ハウスネーム」が付けられてきたが、残ったものより、ほとんど知られずに消えていったものの方が遥かに多いのである。「ハウスネーム」は自ら付けるものというより、ベテランのメダカの選別眼を持った人が見て、「名前を付ければ?」と言われて付けられたものが圧倒的な知名度を持つことが多いのである。

現在、流通する系統を繁殖していれば、変わった個体が出てくるだろう。その変わった個体を見つけて、いきなり「ハウスネーム」を付ける人もいる。また、既存の品種に違う名前を付けて、オリジナルのように「ハウスネーム」を付けて販売する者もいる。

その「オリジナルを装ったハウスネーム」をどう知らせるか?その方法がSNSやヤフオク、雑誌広告の利用である。ピーシーズでは、そういった「自分のところさえ売れれば良い」的な考え方のショップ広告は取らないが、改良メダカ人気に肖って誌面を作る出版社もある。そういったところは、誌面作りが読者の方向ではなく、クライアントの方向を向いていることが多く、それもビジネスなのかもしれないが、趣味の世界では馴染まないところもある。誤った情報を流すことになることに繋がりかねないからである。

また、販売する側も、ヤフオクなどで作出者の名前を利用して、高値を付けようとする出品者や、自作自演のようにヤフオクで新しい「ハウスネーム」を付けて価格を吊り上げ、出品者自らが落札して、高額が付いたように見せかける出品者も出てきているようだ。そういった「高額が付いたように見えるもの」を今度は卵売りが利用する…という悪循環も生じている。

そういったことが特に昨年から多くなってきているのである。

それに伴って、改良メダカの飼育者の中には、自分が欲しいと思うメダカの姿形、色柄が具体的になく、「有名そうなハウスネーム」が付けられたものを買おうという人も見られる。食べ物だって、音楽だって、自分の好きなものを食べたり、聴いたりすることが楽しいのであって、人気があるものを食べても、聴いても、心に響かないものである。

観賞魚、やはり飼うなら、自分の好みの魚を自分の目で選び、気に入った品種の価格がいくらであっても、選んだ魚を飼うことは楽しいし、殖えればもっと楽しいのである。

メダカの交配も同じである。自分が「こういったメダカを作りたい!」というイメージを持って、それを作るための素材を集め、そこから二世代、三世代進めることが、系統作出することなのである。

『めだかの箱庭』を東京スカイツリー近辺と栃木県栃木市で展開している島田賢一さん、島田さんのインスタグラムで「オッ!」っと思うメダカを見つけたのである。

https://www.instagram.com/medakanoxiangting/

この“青花魁”と書かれていた個体である。老成個体間近のメスで、この青さを島田さんは追求しようとされたのである。

“花魁”は2019年に「ハウスネーム」が付けられた、三重県鈴鹿市在住の川戸博貴氏の作る系統である。「黄三色体外光」と呼んでいた時期を経て累代繁殖を続けられた系統で、これまでにも『メダカ百華』等でたびたび、撮影をさせて頂いてきた。


“花魁” 川戸博貴氏撮影


“花魁” 川戸博貴氏撮影

その“花魁”を3年前に入手された島田さん、その後、ずっと累代繁殖されて、現在に至っているのである。

ちなみに

こちらが、川戸博貴氏がインスタグラムにアップされていた“花魁 ブルー” である。

川戸さんのインスタグラムは

https://www.instagram.com/hiro48jp/

こちらである。

島田さんは、この累代繁殖から出た“花魁ブルー”に、“黒ラメ幹之サファイア系”を交配されたのである。

まだF1なので、“黒ラメ幹之”の血統が強めに現れているが、現在、F2が育ってきており、今秋にまた見せて頂く予定である。

こちらは、やはり島田さんが、累代繁殖させてきた“花魁”に、静岡県浜松市にある『猫飯』の作る“古龍”の「ハウスネーム」が付けられたオスを交配して進めているもので、現在、F2に至っている。


“古龍” 『猫飯』撮影

“古龍”は、『猫飯』の池谷雄二氏が、胸ビレ外縁にグアニンの輝きを持った“黒幹之”に三色ラメを交配して進められた系統である。池谷氏の交配意図は、「二色の黒幹之」を作るためであったと言われる。

黄三色体外光表現の“花魁”に「二色の黒幹之」“古龍”を交配することで、多色の体外光表現のものが出来るのではないか?とは交配を実践された方にはイメージが湧くことだろう。

掲載したF1個体を一匹ずつ見ていくと、その両系統の特徴を表しているところに、楽しさがあったりするのである。

こちらも現在、F2が2cmほどに育ってきており、やはり今秋見せて頂くのが楽しみである。

よく、ランダムな繁殖の中から一匹変わった表現の個体が出てきたものを「珍しくないですか?」的に写真を送ってくださる方がおられるが、私個人としてはそういった個体を「珍しい!」、「面白い!」と感じることはあまりない。目的を持った交配から出てきたものと、親の血統は判らないが表現が面白いものとは価値観が全く違うと思っている。もちろん、それをその方が楽しんで飼育されることは自由だが、そういった人はその個体に「ハウスネーム」を付けたいと思われていたなら、一過性のものであることを予め知っておいて頂きたい。

改良品種の交配に絶対に必要なものは、時間である。その時間を短くすることは出来ないのである。

じっくりと自分の作りたいメダカの姿形、色柄をイメージされて、それに使える種親を選び、累代繁殖させながら選別淘汰を繰り返したものが、メダカ愛好家の多くから認められる系統になるのである。

「急がば回れ」という例えがあるが、メダカを作っていくなら、じっくりと時間をかけてメダカの繁殖を楽しむことである。「じっくりと時間をかけて」と言っても、メダカの場合は卵から2ヶ月で産卵を始める次期種親を育て上げることが出来る。今日は関東地方などはとんでもない酷暑になるが、今から頑張れば、今冬にはF2が育ってくるのがメダカなのである。

是非、是非、多くのメダカ愛好家に新たな表現を持ったメダカを創作する楽しみを実践して頂きたい。

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