『早稲田の杜のめだか』訪問
普段、西へ向かう新幹線にはよく乗っているのだが、この日は逆方向へ。ある意味、新鮮な景色を見ながらの移動である。向かった先は埼玉県の本庄早稲田駅。そこから歩くこと15分ほど、住宅街を抜けた先に大きなハウスが見えてきた。広さ約1300平米の敷地を使う『早稲田の杜のめだか』である。
元々、群馬県で『高崎らんちゅう』というらんちゅう専門店をされていたおり、らんちゅうだけでなくメダカへと分野を広げられたそうだが、場所の問題などもあり、より広くよい場所をと探し、この本庄市に使われていないハウスの物件を決め、ご家族だけで3年をかけてボロボロだったハウス設備を仕立て直したそうである。
中には広々とした坪池が並ぶ。ひとつの池は約600リッターの水量が入り、ここで2-300匹ほどを育成される。
池からメダカを収穫するのも一苦労であるが、のびのびと育てられたメダカ達はしっかりとした体つきをしている。
ハウスinハウス
ハウスの中に、さらにビニールハウスを組み込んだ形になっており、中では冬場の採卵や稚魚の育成が行われている。ある程度育ったら、外の坪池へと移動される。
主に10月から3月の間に使用されるそうで、気温が上がってきたら使わなくなる。それというのも、今の時期でも陽射しがあると中の気温は40℃を超えるそうで、夏場にはとてもではないが中にいられなくなるそうである。メインのハウス自体、温度は上昇しやすいそうだが、その分、体外光やラメのメダカがよい具合にできあがっているそうである。
高崎よりも、この場所の方が水がメダカに向いているようで、全体的によい感じにメダカ作りができているそうである。らんちゅうの飼育経験から、メダカ作りはある意味、楽にできると感じられたそうである。らんちゅうは、病気になったり、育てる内に多くを淘汰しなければならないが、メダカの場合は、それがごく少なくて済む。しかし、柄物など、特徴的な表現をしっかり作ることは、大変なことだとも実感されている。
代表の宮澤 健さんが最もお好きなのは“煌”だそうだ。その名前と表現を、最初にリリースされた当時に「シンプルでかっこいい」と感じられたそうである。柿色の頭の体外光というオリジナルの姿に惚れ込んだそうだが、見かける姿はそうでないものが多く、作出者の意図を大切にしたいと強く感じられたという。
宮澤さんの作る“煌”
スタート時から約3年、このハウス作りと同時進行だったこともあり、うまく外光が乗らないなど相当苦労されたそうであるが、「やるしかない」と取り組み、この姿ができたことは「感無量です」とされていた。
他にも外光持ちのメダカを殖やされている。こちらは“オーロラ黄ラメ体外光”
“煌”と似た表現になるが、そこはしっかりと選別して区別されている。
ラメ系のヒレ長品種も複数を扱う。“忘却の翼”と呼ばれる“松井ヒレ長オーロラ黄ラメ”
“明けの明星”と呼ばれる“松井ヒレ長三色ラメ”
このハウスの特性を活かした品種作りに力を入れられている。昨年は、コロナの影響で市場などへ出かけることも少なく、その分、持っているメダカを練り上げることができたのもよい経験になったそうである。“煌”も、満足いく姿ができてはいるが、その割合はまだまだ低いとされる。「雲州さんの記事を読んで、数を採っての選別に感心しましたが、“煌”に取り組んで、その大切さを痛感しました」とされる。作出者の意図、オリジナルの姿の大切さを胸に、さらなる質の向上と生産量のアップを目指す宮澤さんであった。