“夜桜ゴールド”からの“夜桜”
ちょうど一年前に『岡崎葵メダカ』で見せていただいた“夜桜”
黒灰色がかった体にラメが散らばる姿が特徴の“夜桜”だが、こちらは天野さんが黄体色のタイプを固める方向で累代されており、当時は“夜桜”の黄体色と呼ばれていたが、その後、“夜桜ゴールド”と名付けられた。
黄体色の上に、“夜桜”の特徴であるラメが青緑に輝くように入り、より映える姿である。
頭部の黄色が濃い個体はより派手な姿をしているが、黄色が薄目の個体では緑がかった色合いにも見える。
これらのタイプで選抜累代されていることで、特徴的なタイプとして固められていた。
天野さんの“夜桜”は、もちろん作出者の垂水政治氏直系の系統である。昨年、垂水さんに“夜桜”や“女雛”に関するお話をお聞きした際に様々な体色のバリエーションが得られるとのお話を聞けた。“夜桜”も“女雛”も非常に多くのバリエーションのような姿を見るようになった昨今であるが、垂水さんの繁殖過程でほとんどが見られた表現だとされていた。
その中からあえて赤系でなく青黒の体色に注され、“夜桜”として発表された。この“夜桜ゴールド”は、黄体色に注目したバリエーションだと言える。
今回、ひとつの容器に目が止まった。
柿色にラメを持ち“女雛ラメ”と呼ばれる姿であるが、これは“夜桜ゴールド”からの派生個体だそうだ。
“夜桜”からは“女雛”のように柿色に近い色合いをしたタイプも得られる。“夜桜”と“女雛”は同じ作出過程を経ている兄弟関係のメダカなので、同じような体色のタイプが得られ、それらを分離して固めていくことで完成されている。
この容器のメダカたちは、“夜桜ゴールド”を繁殖している中で得られた一群とのことであった。
黄体色は感じられず、柿色も持つが、ラメが入ることで“夜桜”血統だとわかる。この一群だけがこうした姿になったそうで、「おそらく先祖帰りしたのでしょう」と天野さん。“夜桜ゴールド”は黄体色の姿でしっかりと殖やされているが、こうして得られた別タイプも検証用にしっかりとキープされておられた。
こうした分離されたいくつもの表現を見ていると、数多く存在するバリエーションがつながっていくこともわかる。累代を進めていくと、新たな姿を見せてくる改良メダカであるが、こうして先祖帰りをして元の姿を見せることもあるのであった。