西へメダカ取材 2日目

二日目は、まず島根県の「雲州めだか」へ。
登場以来、注目を浴び続ける非透明鱗三色の雲州三色は、最初こそ名前だけを聞くような存在であったが、その後、少しづつ殖やされた個体を見るようになった。いろいろな個体を見てはきたが、やはり、その作出者である野尻さんの所を直接訪れることは非常に楽しみなことであった。
野尻さんは出雲ナンキンを長く飼育されてこられた方で、出雲ナンキン愛好会の初代会長を務められた方でもある。自分も出雲ナンキンの品評会の取材に何度か島根県を訪れており、その際にお会いしていた方でもあった。当時はメダカの話しなどはまったくでず、もちろん、改良メダカの世界がこんなに広がるなどとは考えもしていなかった。
野尻さんのご自宅の周りは飼育容器に囲まれていた。こちらは基本的に三色以外のメダカを入れられている場所になる。


外側の風呂桶ではワムシやミジンコを培養されている。ただ、今まではあまりなかったそうだが、今年は鳥にひと池食べられてしまったそうだ。しかも、それは三色だったそうで、「いいのから食べられました」と笑われておられた。
メインは網で囲われたこちらのスペース。


出雲ナンキンを育てられていた大きな池を使われており、その池ごとに数百という感じで三色や幹之が群れ泳いでいたのである。


広い池を悠々と泳ぐ様子は、その模様も相まって、サイズを考えなければまさに錦鯉が群泳しているかのような印象を受けたものだった。誰もが綺麗だと思えるメダカにするため、錦鯉の紅白や三色の存在をイメージされ、それを目指された野尻さんのメダカだ!と感じた。

この日の時点では、まだ採卵は本格的に始まってはいないそうで、とりあえず産卵巣を入れている程度だとおっしゃり、これからしっかりと種親を選び始めるとのことであった。例年10万匹以上採卵されるという野尻さん。そこから満足されるメダカは0.1%ほどとのお話を聞いていたが、それだけの数から選ばれたものが“雲州三色”なのだと実感できた。三色の模様の出方はコントロールできるものではなく、数多くいる中から自分の理想とする魚を残していくことが大切なのだと、改めて思い知らされた。
種親選びはこれからとおっしゃっておられたが、撮影用にと前日に親魚を選んでいただけていた。その親たちは模様の表現もさることながら、サイズや体格のボリュームも素晴らしく、まさに錦鯉を思わせるメダカであった。


「白地の濃さと市松模様状の黒斑」を意識されているのがわかる親メダカ


こちらは黒勝ちの個体たち


次々に掬い出したが、どれもこれも見事な三色であった。
特に墨の表現を重視される。赤を見ると墨が弱くなってしまうので、「赤は二の次三の次」とことん墨を追求するということであったが、見る個体はどれも十分な赤さを持っていると思えたのだが、そこに満足されず、常によりよくされることを意識されておられた。

紅白表現も固められていた。雲州三色のボリュームそのままに、紅白の明瞭な姿に作られていた。


“雲州更紗”として、こちらも人気品種になることが予想できた。

また、「雲州めだか」といえば、幹之の存在も外せない。


フルボディに輝く姿の上、一周光と呼ぶようにヒレにも光を見せていた。幹之メダカといえば、上見向きの品種であったが、この特徴を持つことで水槽など横見での楽しみ方も広がる。まさに全身が光り輝く姿に作り上げられていた。

自分らが撮影している間にも、野尻さんは餌やりに水換えにと動かれていた。時折、ピピピッと電子音が聞こえていたのだが、お尋ねすると「入れてる水が溢れないようにとね」と笑われておられた。さまざまな容器をお使いであるが、その容器ごとにどれくらいで水が溜まるかをしっかりと把握され、次々と作業をこなされていた。昨年は体調が芳しくないこともあったそうだが、動かれる姿はお元気そのものであった。
「今年の冬はメダカより自分が越せるかどうか、今日はあえて元気そうな格好にしたんですよ」と笑われておられた。そうはおっしゃりつつも、ネットなどで周りの最新メダカ事情を調べられているようで、「最近はいろんなメダカが出るようになった。体外光とかすごいね」とおっしゃり、福山の小寺さんがあけぼの体外光“陽炎”を発表された直後であったが、それもチェック済みで「精力的ですよね、すごい情熱」とおっしゃっておられたが、野尻さんの情熱も勝るとも劣らないと思えたものであった。

次に向かったのは鳥取県境港の「あらしまやメダカ」である。
細い路地を抜けていった先にお店があり、ちょっと隠れ家的な雰囲気を感じた。


この日も親しいお客さんたちが訪れており、メダカ談義に華を咲かせていた。入り口のある建物を囲むようにハウスや飼育容器が配置されており、「次のところにはなにがいるだろう?」とワクワクしながら見る楽しみがあった。
店主の佐々木さんは、日本メダカ協会の品評会に精力的に参加されており、バラエティ部門や普通種部門で1席を獲得され、他の部門でも入賞歴は多い。昨年から専務理事にもなられ、今年は審査員もされるとお忙しそうであった。「あえて昔ながらの品種をエントリーして、それで勝ったら面白いじゃないですか」と、ご自分も楽しまれながらなのが感じられた。


ハウスの中にはボックスが並べられ、販売魚と共に佐々木さんが交配されているメダカもいろいろと見られた。

三色ラメ体外光


まだ若い魚たちであったが、これからの色上がりなど期待が持てた。

くもあけレッドタイプ


雲州とあけぼのを交配したもので、赤みに注目したタイプ。ラメとも違うような細かな光が体表に見えていた。

面白かったのがこのメダカ


“非透明鱗琥珀ブラックベース二色ラメ”と名付けられていた。上見なのでラメは見えにくいのだが、なんと言っても目を引いたのはその色合いであった。青灰色か藤色というのか、今までには見たことのない青系の発色を見せていた。

基本品種から最新の人気品種までさまざまなメダカを扱われておられ、その上にオリジナル作りも精力的に行われていた。遠方の方は少々行きにくい場所かもしれないが、新たなメダカがここから発信されるかもしれないと思えたものであった。

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