メダカの孵化、稚仔魚を育てる 3 ブラインシュリンプ

 ブラインシュリンプは、現在、多くの観賞魚の初期餌料として最も重要なエサとされている。このブラインシュリンプの普及によって、金魚の繁殖の場合、ミジンコが採取できる場所とできない場所の仔稚魚の育成の差が小さくなった。また、ミジンコの発生に合わせて金魚の産卵をしていた時期を、ブラインシュリンプは保温器具さえ使えばいつでも採卵させることを可能にしたのである。

メダカ飼育の場合、パウダー状の人工飼料だけで稚仔魚から成魚まで飼育できる手軽さがあり、それだけでもそう問題なく飼育は出来る。そのため、ブラインシュリンプはメダカにとっては必要不可欠な餌とはされていない部分がある。

しかし、ブラインシュリンプをたったの一週間だけメダカの稚魚に与えるだけで、しっかりとした魚に育てることができることはもっと多くの人に知って頂きたいところである。

 ブラインシュリンプは、甲殻類の一群で、エビやカニに近い生物である。甲殻類の鰓脚綱に分類され、日本にも生息する純淡水産のホウネンエビ、カブトエビ、広義にはミジンコと同じ仲間と言える。

 食用魚の養殖場の初期餌餌として利用されてきたもので、熱帯魚を飼っている人の中では、古くから稚魚用の初期餌料として利用されてきた。特にグッピーを飼育している人には、ほぼ毎日、ブラインシュリンプを孵化させている人がほとんどである。アルテミア(学名がアルテミア・フランシスカナ)とも呼ばれ、塩水の湖(塩湖)に生息している。多く見られるのは,アメリカ合衆国のグレートソルトレイクやサンフランシスコ湾周辺、中国各地の塩湖などである。陸地の塩湖は、海水より濃い塩水濃度であることも多い。海水は約3.5%の塩分濃度で、ブラインシュリンプが生息する塩湖は、グレートソルトレイクでは、季節、場所によって違いはあるが、8~25%の濃度である。この塩湖の塩分濃度の高さが、魚類の生息を阻み、結果的にブラインシュリンプが優先する湖沼を作ったのである。

 ブラインシュリンプのフ化には、塩分濃度2~4%の溶液を作る。食塩で問題なくフ化するが、市販の岩塩では孵化しないこともあるので、普通の食塩を購入すると良い。人工海水でフ化させる人もいるが、そこまでしなくても問題なくフ化させることが可能である。フ化させる容器は何でも良く、ペットボトルから梅酒を作るガラス容器、専用のブラインシュリンプフ化器などを用いる。

 ブラインシュリンプのフ化に重要なのが、25~27℃程度の水温と強めのエアーレーションによるフ化させる塩水の撹拌である。ブラインシュリンプは生息環境が過酷になると耐久卵を産み、生息環境の条件が整った時にフ化するメカニズムを持っている。その耐久卵にフ化時期を知らせる刺激が塩水を激しく撹拌することである。エアーレーションの適切さは、フ化させようとするブラインシュリンプの卵が底に少しでも溜まらない強さである。また、光も重要なフ化への刺激で、薄暗いところでフ化させるより、明るいところでフ化させた方がフ化率はよくなる。正常な卵であれば、塩水につけて18~20時間でフ化する。25時間以上かかる場合は、水温、塩分濃度、光の照射などの条件を変えてみることである。

 フ化したてのブラインシュリンプ幼生は、0.08~1.0mmほどで、すぐに脱皮を始めて成長を始める。アルテミアの成体の大きさは、約10~15mmほどで、成熟するとオスとメスは顎の形状で容易に判別できるようになる。フ化した幼生は約40日で成体になり、ブラインシュリンプの寿命は約3ヶ月である。成体が生きていける環境が整っている時には、メスの育房の中で卵は幼生になり、ミジンコなどが条件の良い時に見せるように、幼生として生まれてくる。

 ブラインシュリンプはフ化するとすぐに脱皮を始めるが、よく考えていただきたい。フ化に使った塩水は、ただ真水に食塩や人工海水を溶かしただけで、ブラインシュリンプの餌となるものは入っていない。それでも脱皮してしまうため、耐久卵から孵った幼生は、栄養を成長に使い、生きていてもフ化したての幼生より栄養価が低下していっているのである。「生きているから大丈夫」ではなく、フ化したと同時に幼生を漉して与えるか、すぐに別の容器に綺麗な塩水を少量用意して、そこに漉した幼生を入れて冷蔵庫(冷凍ではなく冷蔵)で保存すべきである。冷蔵保存していると、ブラインシュリンプ幼生を仮死状態にしておくことができるので、二日間ぐらいは問題なく利用することが出来るので、便利である。

 養殖用の海水魚の初期餌料としては、フ化しただけのブラインシュリンプ幼生では成長に不足する部分があり、栄養強化餌料を使うことが一般的である。ブラインシュリンプは、海水魚の成長に必要なDHA やEPA などの必須脂肪酸が不足しているので、それを補うのである。ブラインシュリンプの栄養強化には海産クロレラを与えるのが一番手軽である。海産クロレラは自分でも培養できるし、海水専門店などでは濃縮海産クロレラが販売されているところもあるので、そういったものを利用すると良い。ただし、メダカの稚魚に与えるためには、栄養強化をする必要はない。

 大きさがミジンコより小さいために、ミジンコの方が栄養価が高いと思われがちであるが、フ化したてのブラインシュリンプ幼生の栄養価は、ミジンコよりはるかに高いのである。ミジンコの利点は淡水産なので、メダカの稚魚池中でも長時間生きていることができる点で、仔魚の時に餌不足にしてしまってはその後の成長に大きな差が出るので、大量にフ化させて、冷蔵庫での保存は重宝するはずだ。

 近年、地球温暖化の影響がアメリカ合衆国のグレートソルトレイクにも及ぶようになり、ソルトレイク産のブラインシュリンプの品質が年々、低下してきている。それに伴って中国産のブラインシュリンプの輸入が増えてきている。どちらもアルテミア・フランシスカナ(以前はサリナとされていたもの)という同種である。移植によって、新たなアルテミア産地の開発が盛んに行われてきたのである。最近、輸入されるようになり、2009 年以降はソルトレイク産以上に使われていきそうなのが、中国産である。中国産と言っても、福建省産、天津産、新疆ウイグル自治区産(アルテミア・シニカ)などがある。耐久卵の卵径を比べると天津産がやや大きいとされている。当然、フ化幼生の大きさも天津産が少し大きい。中国産の製品は、これからの利用に期待されている。しかし、世界的に温暖化の影響が忍び寄っており、中国産のものが将来的に安定供給されるか?も不明な点がある。

 そして、数年前からベトナム産のブラインシュリンプも輸入されるようになっている。このベトナムにも、もともとはアルテミアは生息しておらず、アルテミア・フランシスカナを塩田利用して養殖しているものである。孵化率が高い、幼生が小さいと言われるが、乾燥卵の製品化の方法、生息するアルテミアのサイズは養殖環境によって異なることが要因であろう。

「ブラインシュリンプの乾燥卵は高価だ!」という人もいるだろうが、メダカの稚魚に与える程度のブラインシュリンプの乾燥卵の量は少なくてよく、一缶買えば、稚魚の数にもよるが、普通、2〜3ヶ月は十分に使えることだろう。なお、ブラインシュリンプの乾燥卵は、冷蔵庫で常に保管するものである。常温で保管していてはフ化率は低下してしまうからである。

メダカへの給餌は、孵化してから一週間ほどはパウダー状の人工飼料を少なめに、しかし頻繁に与えて育て、ブラインシュリンプ幼生が食べられる大きさに成長した時から給餌をすると良い。ただし、この量も常に少なめに与えることで、ブラインシュリンプは塩水で孵化させるため、淡水中では長時間は生きていられないので、10分以内で食べ尽くす量で十分である。

飼育水中で死んでしまったブラインシュリンプ幼生は、甲殻類が水中で死んだ状態で、水質を悪化させるので、食べ残さない量を与えることが何より大切である。メダカの稚魚がブラインシュリンプをたっぷり食べて、お腹がほんのりとオレンジ色味を帯びて、膨れているのを見れば、どれほど好んで食べる生き餌かを実感してもらえると思う。

1. ペットボトル、梅酒容器などを利用して、水と食塩(3~4%濃度分)、必要量の卵を
入れる。濃度3~4%分の食塩

2. 水温を26~30℃に保ち、水底に卵が沈まない程度の強めのエアーレーションを、24時
間行う。水温は26~30℃強めのエアーレーション

3. 24時間後、エアーレーションを止め、10分ほど置いておくと、フ化した幼生が水底付
近に集まり、卵の殻が水面に分離する。

4. 水底のフ化した幼生をチューブやピペットで取り、漉して、らんちゅうに与える

稚魚が1.2cmを超えるまでブラインシュリンプ幼生を与えてみてもらいたい。その体の幅、体高の高さ…そして何よりキビキビとした泳ぎ、人工飼料だけではそうはならない点を実感して頂きたい。

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