メダカの孵化、稚仔魚を育てる 2
フ化したメダカの稚魚は非常に小さいため、卵黄を吸収し終えてからの初期餌料は、メダカの小さな口に入るものでなければならない。稚魚の食欲は旺盛である。稚魚の初期餌料はその後の成長に重要なので、なるべく早い時期からしっかりと与える必要がある。
また、メダカの稚魚は水面付近にいることが多いので、水面に浮いている時間が長い粉末状の人工飼料が各メーカーからメダカ用として販売されており、より粒の細かい稚魚用の製品もあるので、それを少量ずつ与えるようにする。ある程度育った稚魚は沈んだ餌を拾って食べることもあるが、初期の稚魚にはなるべく浮いている時間の長い餌が向いている。
スドーが出している稚魚用の人工飼料。使いやすい稚魚用の人工飼料である。
今年から販売が始まったキョーリンのメダカベビー ハイパー育成。
わさびのメダカ針子の餌。植物質主体のごく細かいパウダー状で、水を汚さない長所がある。
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人工飼料を与える際、与える量には最も注意が必要である。メダカの孵化仔魚は小さく、飼育者は出来るだけ早く育てたい気持ちが強くなり、一回に与える餌の量がついつい多めになってしまうようである。しかし、与え過ぎは水質悪化につながり、底に残餌が溜まり、アンモニア、亜硝酸濃度が高まると、体力のない稚魚はアッという間に死んでしまうことにつながりかねないのである。
メダカの仔稚魚を育てる容器は、その数にもよるが、エアーレーションを施していない場合、20×20cmの表面積以上、出来れば40×40cmの表面積がある容器を使うようにしたい。
成魚は広く、稚仔魚には狭い飼育容器という感覚がメダカの飼育者にはあるようだが、小さい容器ではそれだけ飼育、育成難易度が高くなってしまうのである。
餌の量だが、水底に残餌が溜まり、膜状になってしまった飼育容器では、メダカの仔魚は日に日に死んでいってしまうだろう。
人工飼料の量は残餌が底に堪らない量、「これで餌の量は足りているかな?」と思う程度で構わないのである。
孵化した仔魚が200匹いたなら、160匹以上は育てる…「8割は育てる」ことをしっかりと目標で持って頂きたい。多くのメダカ愛好家は、「200匹孵化したら、100匹育ったら御の字、50匹ぐらいでも仕方がない」という感覚がある人が多いが、どんな改良品種でも「質は量から!」やはりなるべく多くの稚魚を育て上げたいのである。

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最近では、ゾウリムシ、ミジンコなどを与える人も増えてきているが、メダカの稚魚にとって、ブラインシュリンプ幼生は最高の餌となる。必要な量を食塩水を作ってエアーレーションさせて孵化させる、乾燥卵の状態で市販されている多くの魚類、水生生物の初期餌料として使われているものである。
これを人工飼料を食べて、少し育った、孵化後5〜10日頃、ブラインシュリンプの孵化幼生を食べられるようになった時期から一週間ほど与えることである。
ブラインシュリンプ幼生を食べたメダカの稚魚は、骨格、体形がしっかりした個体に育て上げられるのである。このブラインシュリンプについては、近日、詳細をブログアップすることにしたい。

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人工飼料は水面に落ちた瞬間、 サーッと水面に広がっていく。餌が広がっていかない、エアーレーションを施していない容器では、水面に油膜が張っている可能性が高く、水の状態が悪いサインである。水質の悪化と共に水中の酸素量も減るため、こうした状態は稚魚への大きなダメージになってしまい、全滅してしまうことも多々あるだろう。特に、室内など風通しの少ない場所ではこうした状態になりやすいので、フ化した稚魚がある程度の数になったら、水換えするか、できれば屋外など水面に風が当たるような所に容器を置くようにするとよい。
稚魚を育てていて、もう一つ大切なことは、「稚魚のサイズに差を作らない」ことである。例えば、一週間分の卵を同じ容器で孵化させている場合、最初に孵化してきた稚魚と、一週間目に孵化してきた稚魚ではサイズに差が生じてしまう。それをそのままにしておくと、大きめの個体が小さめの個体を追い回したり、尾を齧ったりすることが起こる。大きくなった個体を小さな選別用の網で掬い、別容器に移していくようにしないと、稚魚のサイズに倍以上の差が出来れば、大きな個体が弱った小さな個体を食べている場面を見ることになってしまうだろう。
「成魚のことより、稚魚の世話に時間をかける」、「稚魚をよく観察する」ようにして、今年はメダカを大繁殖させて頂きたい。