独特な体外光を見せ、今年になってヤフオクでの注目度を上げているメダカの一品種が、hiro48jpのハンドルネームの出品者である川戸博貴氏の作る“カブキ”である。
厳しい寒さだった今年の冬が終わり、ようやく春めいて来た頃、川戸さんの“カブキ”の評価が高まったことが、2018年の本格的なメダカシーズンのスタートになったような気がした。
その川戸さんのオークション出品魚を、自分は10年前、そして4年前に落札したことがあった。10年前は、琥珀、黄金、4年前は透明鱗三色を落札したのだが、その時のメダカの写真は自分のストック写真として外付けハードディスクに保存されている。
その当時から、「しっかりとしたメダカを作る人」というのが自分の印象であった。
取材希望の連絡をさせていただくと、メダカの話しになり、川戸さんも自分が落札したことを覚えていてくださった。そして、取材の許可を頂けた。
川戸さんの飼育設備である。
去年からコンスタントに素晴らしい“カブキ”を出品されておられた川戸さん、「そこそこの飼育設備をお持ちなんだろうな!?」と思ってはいたのだが、この規模だとは思っていなかった。
60サイズの練り舟が230枚、80サイズの練り舟が75枚、13〜23リットル入りの小ケースが33個、汲み置き用のタンクも設置された、個人レベルでは最高レベルの飼育設備を管理されておられたのである。
川戸さんは、幼少の頃からの生物好きの方で、ドジョウやメダカ、コイ、ウナギ、ザリガニを捕ったり、昆虫採集もお好きだったそうである。
「両親が自分の好きなようにさせてくれたんです」とご両親への感謝の言葉を飼育場に着くまでの車内で話してくださった。
メダカ飼育は15年ほど前から始められたそうで、最初は白メダカを飼育されたことからだったそうだ。その時の白メダカから白ダルマメダカが出て来たことから、川戸さんはメダカへの興味を深めていかれたそうだ。
ヤフオク歴は今年でちょうど10年目だそうで、10年前に自分が落札したということは、結構、早めの落札者だったようだ(笑)
当初は、青光メダカ、白光メダカ、琥珀光メダカなどを出品されていたそうである。
そして、『葵メダカ』の天野雅弘氏が作出した“カブキ”を見たことから、“カブキ”系黒幹之を入手され、今に至っておられるのである。
これが川戸さんの“カブキ”である。体外光が幅広く、しかも長く伸長しているのである。
「作出者の天野さんはここまでの体外光は望んでいなかったんじゃないですかね?」と言われた川戸さん、それを天野さんに尋ねてみると、「うん、そこはそうかな!」と答えてくださった。川戸さんは作出者の意図まで理解されながら、川戸さんの“カブキ”に独自の磨きをかけておられるたのである。
こちら、川戸さんの“白カブキ”である。“白カブキ”は黄幹之と呼ばれるタイプがひそかに人気が高まったと同時に、再注目されているメダカの一つで、川戸さんの作る“白カブキ”は体外光もしっかりと出ており、愛媛県の垂水さんの“煌”や『静楽庵』の作るラメ幹之体外光など、体外光を入れる方向が注目されたことも影響してか、“白カブキ”は体外光は再び、そのスッキリとした美しさもあって、人気が再燃している。
その“白カブキ”で言えば、川戸さんは、緋色の“白カブキ”にも見事な体外光を入れておられ、また新たなタイプとして人気を集めそうなのである。
「どうして川戸さんの“カブキ”はここまで美しくなったか?」それは、川戸さんのこだわりと少しの変化、違いを見逃さない“観察眼”をお持ちだったからである。川戸さんは、「そんなことないですよ」と言われるが、その部分は、これまで多くの観賞魚飼育者、ブリーダーを取材してきた自分には、見えてしまうのである。
こちらはミジンコ培養容器など、川戸さんの気配りが感じられる飼育設備である。
自分のことを話すのは変だが、これまで取材させて頂いた観賞魚飼育者、ブリーダーの数は2,000人は下らないのである。ディスカス、金魚、グッピー、アロワナ、日本産淡水魚、その他の熱帯魚…しかも日本だけでなく、海外の観賞魚飼育者、ブリーダーの方々から多くのことを学ばせて頂いて、今の自分があると言えるのである。改良メダカに関しては、まだ取材をさせて頂いた方は40人ほどであるが、魚種が違っても、優れたセンス、感性をお持ちの方はメダカを見せていただければある程度は判ってしまうのである。
こちらは作出者である天野さんが言うところの“黒錦カブキ”に酷似したタイプである。川戸さんは“黒錦カブキ”の呼称を使われていないのだが、それは天野さんへの気を遣われてのことでありそうだ。呼称は置いておいても、この黒ブチの明瞭さは見事である。
これは“カブキ”から分離された黒幹之である。このメダカの仕上がりも見事であった。
これは幹之メダカである。川戸さんは幹之メダカにも常に磨きをかけておられるのである。この部分の詳しい話しは『メダカ百華第5号』で紹介させていただく予定である。
こちら、透明鱗三色である。自分にとっては4年前の姿も知っているのだが、朱赤色の濃さ、そしてその境界線の明瞭さは見事であった。
この4匹は、川戸さんのオリジナルのブリーダーネームが付けられた“紫蝶(しちょう)”である。
上2匹が体外光がよく乗ったもの、下2匹が体外光が弱い個体である。ただ、体外光が弱い方が、紫色が見えやすい面があり、それぞれ飼育者の好みに合わせて選ばれれば良いだろう。
この“紫蝶”、光体形の螺鈿光と呼ばれていたメダカと宝鱗無双を交配したF4に、“カブキ”を交配されて作ってこられたF3である。命名に関しては慎重さをお持ちのはずの川戸さん、だからこそ、この“紫蝶”に強いこだわりをお持ちなのであろう。
川戸さんはとても穏やかな方で、ここまでのメダカを作っておられても、「そんなに特別なことはしていないですよ〜」と謙遜される。でも、川戸さんのメダカはそういう川戸さんの人柄もあって、美しく仕上げられているのだとも感じた。
これからはもっともっと川戸さんの作るメダカは注目を浴びることだろうし、川戸さんのメダカを手にした方は、川戸さんの入手者への想いも感じられるに違いない。
まだまだ多くの魅力的なメダカが泳いでいたのだが、川戸さんの飼育場には、また必ず、お邪魔させていただこうと思っている。
川戸さん、その時は宜しくお願いいたします!!
いつも楽しくメダカ仲間と記事を読ませて
頂いております。
今回の川戸様の記事ですが、以前から
ヤフオクで気になっており(実際に個体
も購入しました)非常に楽しく読ませて
頂きました。
それと同時に今まで以上に川戸様のメダカ
の魅力、情熱を感じとれました。
私も夢中メダカ様のイベント後に静楽庵様に
行き、バケツに泳いでいた素晴らしい三色
ラメ幹之の体外光を見せて頂きました。
とても素晴らしく、体外光と黄色色素が
魚が体をひねる度、キラキラと宝石の
ようだったのを今も鮮明に思い出せます。
これからもメダカの記事を楽しみにして
おります。
いつもありがとうございます。