“オロチ”誕生の地『飛鳥めだか』 谷國昌博氏の飼育場訪問

2016年、突然、日本中のメダカ愛好家を驚愕させたメダカが、“オロチ”である。

“オロチ”の呼称で発表されたのは、2015年10月に行われた、『第2回鑑賞メダカ品評会』でのことで、谷國さんが、オロチとオロチスモールアイの2点を出品されたことが記録に残っている。

全身、漆黒のメダカを選別淘汰によって、作り出されたのが、『飛鳥めだか』の谷國昌博さんである。実はまだ45歳とお若いメダカ愛好家で、以前からFacebookのメッセンジャーなどで連絡させて頂いていて、言葉使いが丁寧な方だったので、50歳以上、もしかしたら60歳以上の方だと勝手に思っていた(汗)。「谷國さん、失礼いたしましたぁ」

今では、改良メダカを楽しんでおられる方々なら、誰もが聞いたことがある名称の一つとなっているのが、“オロチ”である。

ここが谷國さんのメダカ飼育場所である。

谷國さんは、高校生の頃から錦鯉がお好きだったそうで、「父親が魚が好きで、その影響から、庭中に容器を並べて錦鯉を飼っていた」と言われる。

谷國さんがメダカと出会うのは、職場の仲間から殖えた白メダカを譲り受けたことからだったそうだ。

12年ほど前のことだったそうで、「白メダカを飼うことになって、ネットでメダカについてを調べ始めたことがきっかけで、ちょうどその頃に幹之メダカが出始めの頃で、“メダカにこんな高価な品種がいるのか!?”と思われたこと、そして、楊貴妃メダカという呼称にインパクトのある品種がいることを知ったことがより自分に改良メダカへの興味を強くしていった」と言われる。

スーパーブラックを入手され、その頃から6年半をかけて、“より黒い個体を”と追求されながら、飼育を続けてこられたと言われる。

谷國さんは、逆説的な考え方での選別方法を編み出された。ブラック系のメダカは、普通は黒い容器で飼育するところを、白い容器で飼育されて、黒色が薄くなっていく個体を淘汰されたり、夜中に蛍光灯の灯りでヒレの黒さを見て種親を残されたりとこれまでに黒色を追究された方々とは異質の方法も取り入れられたと言われるのである。「“オロチ”が透明鱗性なのも、やはり黒を乗せにくかったから、その透明鱗でも黒くなる個体を選んだりしました」と谷國さん、「各ヒレに滲み出るような黒さを持つ個体を残した」そうである。この“オロチ”には当初のスーパーブラックの累代繁殖個体に、ピュアブラックが交配されているそうである。

その谷國さん独特の選別淘汰方法が、突然変異の遺伝子を持った“オロチ”となったのであろう。

「この呼称が、このメダカにぴったりと合いましたよね?」と谷國さんにうかがうと、「公募もしたんですけど、『めだかのビーンズ』の丹下さんが“オロチ”と呼んだんで、それで、即、決めました」と谷國さん、2016年、『めだかのビーンズ』からヤフオクなどで“オロチ”がリリースされ、これまでになかった黒さを持った“オロチ”は一躍、全国のメダカ愛好家に知れ渡るようになったのである。

「スモールアイだった個体には“キングオロチ”って名付けたんですけど、それは定着しませんでした」と微笑みながら言われる谷國さん、黒いメダカに対する探究心が、“オロチ”を生み出したのである。

谷國さんは、“オロチ”だけでなく、様々なメダカを飼育、繁殖されておられる。

こちら、非透明鱗三色の“もみじ”である。『め組』のスミレ由来の非透明鱗三色だそうで、白ブチの中から黄斑を持つものから累代繁殖されたそうである。

こちらは“飛鳥錦”と呼んでいる透明鱗三色である。最初は透明鱗紅白から始められ、『極めだか』の朱赤錦透明鱗を交配、非常にまとまった系統になったそうで、「良い時には綺麗な透明鱗三色が8割ぐらい出ることもある」と言われる。厚みのある、朱赤色の濃い良血統となっていた。

谷國さんが好きで、累代繁殖されている幹之光メダカである。「結構、自信がある」と言われるメダカである。

こちらは、極ブラックとAzumaめだかのロングフィン幹之を交配した黒幹之である。仲間うちでは、「飛鳥ブラック」をもじって“AKB”と呼んでいるそうだ。

こちらは谷國さんが累代繁殖されておられる烏城三色である。

こちらは、今、谷國さんが三色ラメ幹之からラメを抜いていく方向と黒を強める方向で作っておられるメダカである。
「やっぱり黒っぽい方に行くんです」と笑われる谷國さん、いやいや、これはこれで面白そうなメダカである。

そう言われながら、ラメを抜く方向とは言え、きっちりと美しい三色ラメも飼育容器には泳いでいた。

谷國さんの今後の目標を伺うと、遊びに来られていた、メダカ仲間から「“オロチッチ”でしょ?」とツッコミが…
「“オロチッチ”とは?」と尋ねると、「“オロチ”で目前にして、出目にして、ダルマにして、それにさらにヒレ長にして…」と谷國さん、「女性が喜びそうな“オロチ”に出来れば!?」と言われるのである。

「それは冗談として、本当に狙っているのは?」と伺うと、「いえいえ、“オロチッチ”は本気ですよ!」と谷國さん、「あとはやっぱり真っ赤なメダカを作ることです」と意外な答えが返って来た。

「真っ赤なメダカ?」と尋ね返すと、「やっぱり楊貴妃でも、真っ赤な楊貴妃、これはずっと目標にしている一つです」と言われたのである。

谷國さんの飼育場を取材させて頂いているうちに、多くのメダカ仲間が谷國宅へと集われ、改良メダカについて、あれこれと楽しそうに話されていたのである。

それを端から見ていて、「雰囲気の良い仲間たちだな!」と羨ましく思えた。改良メダカが拡げる友人の輪、その中心におられるのが、谷國さんだったのである。

今後は、飼育場も拡張されるそうで、奈良県から発信される改良メダカが広く知られることを仲間の方々と共に目標にされておられたのである。

谷國さんの今後の活躍を楽しみに待っていたい。

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