『Black MEDAKA』宅 訪問

　『Black Medaka』さんは、熱心なメダカ愛好家で、SNSにも三色ラメを中心に載せられているのだが、飼育されているのもほとんど三色ラメというこだわりを持つ方である。「柄物だったらBlackさん」という具合に、他の愛好家の方やお店からもお名前を聞き、初訪問させていただいたのは昨年の7月頭、今回、ほぼ1年ぶりに再訪問させていただいた。

　『Black Medaka』さんの三色ラメには、複数の系統が導入されて作られている。4年ほど前にはまだグレードの高い三色が少なかったことから、ご自分で作り上げる選択をされた。スタート時の三色ラメは、墨もほとんどなく、赤とは言えないような色合いの今では絶対に外す姿であったが、累代する途中途中で「朱を入れたいから“あけぼの”を」という具合にいくつもの特徴ある系統を交配されて作り上げられていった。


　三色ラメではあるが、強く意識されているのは墨や柄の表現で、ラメはそれほど重視されていない。それでも昨年よりも今年の方がラメは強い印象を受けた。「とにかく数を採ること」を心掛けており、卵一粒をも無駄にしないようにされる。「その一粒がいい姿になるかもしれないと考えちゃって」と、冬前ギリギリまで採卵をされ、通算8000ほどを採られる。

　驚かされるのは、その数である。「数いませんよ」と言われていたのだが、この時にいた採卵用の親は6匹であった。直前に2匹が落ちてしまったそうだが、それでも10匹に満たない。柄や地色、墨の乗り具合などで厳しい選別をされるのだが、それにしても一桁しか残されていないというのには驚かされた。

　若魚と言えるようなサイズが100以上いたのではあるが、これはすべて親にはしない外し個体だという。中には三色ラメとして普通に販売されているような個体もいるのだが、ご自身の親としては使えないと判断されていた。「あくまで趣味でやってますから。販売目的だったら、とてもじゃないけど採算は考えられませんね」と笑われる。
　コツコツと進めることを苦にされず、水質や水温、容器に入れる数など実験的な取り組みもされ、探求心の深い追求型の方である。紅白ラメなども飼育されていたが、これらも朱色の出方などを見るために飼われていたそうで、卵を採って成長させたことでデータとしては取れたそうなので、もう手放してしまうとされていた。

　こちらはブラインシュリンプを食べ出した稚魚たち。限られた飼育容器でやりくりをするために、選別も早めに行うそうだ。まだ空き容器があったことから無選別であったが、生まれてから1週間ほどで頭部に赤が出始めたような針子から稚魚手前のサイズで選別もされるそうだ。妥協しない選別や稚魚のサイズ分けなどをしっかりすることが大切とされていた。　

　ウッドデッキとお庭が飼育場で、プラ舟が30面ほど置かれている。このプラ舟の8割は三色ラメである。しかも大部分は針仔と稚魚だったのが驚きであった。数だけでいえば、数千匹の三色ラメの仔たちである。この子供達が育つ夏頃にはそこから親用の個体を選ばれる。もちろん、現在も採卵は進行しているため、それらもギリギリまで育てて選別をかけるのであるが、それだけの数から選んでも、満足いく個体はごく少ない。表現を固めることが難しい柄物の三色だからこそ、「難しいからやりがいがある」と取り組まれ、その難しさも含めて多くの人に三色を楽しんでほしいと考えられている。「苦労はするだろうけど、まずは子供をとって、ひと冬越した時の色の違いを見て欲しい」と、様々な経験を通して三色ラメ作りを多くの人に取り組んでほしいとされていた。