『唐草めだか』訪問

『唐草めだか』さんを知ったのはInstagram がきっかけであった。画像の綺麗さと、独特なメダカ達が気になったもので、コンタクトをとらせていただいた。取材のお願いをすると「うちには派手なメダカいませんよ？地味で渋かっこいい系が好きなんですが」とのお返事だったが「その独自路線が気になりましたので、お願いします」と返したものであった。その後もSNS上でやりとりをしていたのだが、文面からも気さくな方で、しばらくしてから「お名前聞いてなかった（汗）」と気づいたほどであった。
　前日からの愛知県内取材で、豊橋駅近くに宿をとっていた。昨日の雨はすっかりとあがり、この日は朝からよい天気である。駅前で待ち合わせをしていたのだが、自分の前に一台の車が止まった。「これか？」とも思ったのだが、中にはどう見ても年輩の方。電話でお話した感じから、同年代くらいと思っていたのだが、「まさか、こんな年上の方だったとは」と思っていたら、別の車がその後ろから。危なく間違えて声をかけるところであった。

　ご自宅前のスペースが飼育場である。様々な容器をお使いであったが、メインはバケツである。しかも、その中には、結構な数のメダカが入っていた。

『唐草めだか』さんは、改良メダカを本格的に始めるまでは、熱帯魚の飼育経験が長く、水草レイアウト水槽などを楽しまれていたそうである。その飼育経験から、水作りなどが身についているのだろう。メダカの容器には溶岩石などが入れられており、澄んだ状態のよい環境が整えられていた。水量に対して多めのメダカが入っていても、状態を崩しているということはなく、しっかりと管理されていることが見てとれた。

　小型ハウスの中は加温設備になっているが、こちらの中に並ぶBOX容器内にも、溶岩石が敷かれ、エアーレーションが施されていた。

　お伺いした際には、まだ冬越しからやっと明けだしたというタイミングで、越冬状態の容器が多かったのだが、容器を覗き込むと、ここにしかいないという姿のメダカ達が泳いでいた。それというのも、『唐草めだか』さんは、交配がお好きで、独自のメダカ作りを楽しんでいる。あらかじめ「派手なのはいない」とお聞きしていたが、飼われているメダカたちには、品種名の付かない姿のメダカたちであるが、どれもがこだわりのポイントを持っており、改良メダカの楽しみ方は人それぞれなのであるというのがよくわかった。

“灯”からの累代から出現したもので、ヒレに乗る色合い、そして青みがかった輝きを伸ばしたいとされていた個体。

黒ラメ黄幹之からの累代で、冬越ししたことで黄色みが強くなったそうだが、地肌の色合いが肌色がかるタイプ。画像にするとわかりにくいが、肉眼では確かに変わった色合いの基調色であった。

　ここでは珍しいと言える赤系品種。三色体外光であるが、体外光の上に色を乗せることで下から照らされるような表現を狙っている。

　黒幹之に“煌”を交配して累代を進めているタイプ。使った“煌”は、あえて煌めいていないタイプをお使いで、赤よりも黄色系統に持っていかれている。

　そして、斑メダカ好きな自分が特に反応してしまったメダカがいた。

　ハウスネーム“龍田姫”と呼ばれる（舞姫×三色ラメ）×オロチヒレ長で作出された、しっかりとした斑模様が特徴的で、体形、ヒレ、模様にこだわって作られているお気に入りの系統である。マットな質感を重視され、その斑模様は白容器でも楽しめる。

　光体形もおり、横見での選別をされることで、綺麗な体形でまとめられていた。

　熱帯魚歴が長いだけあり、熱帯魚のように水槽で楽しめるメダカをイメージされている。ただ、よく知られるようにメダカには保護色機能があり、室内飼育や水槽では体色が薄れてしまう。そうした点も改善できないかと交配を試し始め、“龍田姫”などを作り出されている。異種交配の他、同一種を累代しているうちに得られた変わった姿を突き詰めるなど、まだまだ独自路線を進まれており、取材の後にも、「越冬容器を洗ったら、面白いのが出てきてます」と連絡をいただいており、次にお伺いする際には、さらなる“渋かっこいい”メダカ達に出会えるのが楽しみである。