『安藤養魚場』訪問
一泊二日中部取材の締めは、静岡県周智郡の『安藤養魚場』である。こちらの安藤さん宅には、すでに何度もお伺いしているのだが、それはすべてらんちゅうの取材であった。安藤さんは、日本らんちう協会が行う全国品評大会で、当歳魚の部で日本一を獲得され、所属される浜松の錦友会でも数多くの受賞歴をお持ちの方なので、数多くのらんちゅうを撮らせていただいていたのであった。安藤さんのらんちゅうの養殖飼育技術は誰もが認めるもので、その『安藤養魚場』が3年前からメダカの養殖と販売も本格的に開始されたのである。
幾度も訪れたことのある安藤さんの飼育場
大型のFRP舟が30面並ぶ専用のハウスである。本来ならば、らんちゅうで埋まっているのだが、昨年からのコロナの影響により、らんちゅうの品評会が行われないことから、らんちゅうの養殖は例年の半分程度に抑え、その分、メダカの養殖に力を入れたそうである。このご自宅横のハウスと実家にあるハウス二カ所を使用されていたが、新たに元メロン栽培用のガラスハウスを7棟メダカ用に借りられた。
長さ20m強のハウスで、急ピッチで整備を進めている。中にはジャンボダライやプールを設置しているが、一方のサイドに手堀りで長さ20mの池を掘り、大水量を活かして幼魚の育成用にされている。まだ3棟目を整備中であったが、7棟がフル稼働すれば、相当な数のメダカが作られるだろう。
扱う品種は、三色ラメ、紅白ラメ、サファイア、オロチに幹之、そしてアルビノ品種の王妃と龍の瞳で、品種数をむやみに増やそうとはされていない。「ひとつの品種を大量に増やしたいので」とされ、らんちゅうの経験からも「質は量から」を実践されている。アルビノ品種が難しいと聞き、それならばと取り組まれ、お伺いした際には王妃だけでも大型のFRP池6面を使われていた。
125cm角の池には何百という王妃が群れていた。こうした池が6面あり、さらには卵がびっしりと付いた産卵床がいくつも入れられた池もあった。「皆が難しいというのをやりたい」と負けず嫌いが顔を出していた。
王妃
サファイア
三色ラメ
紅白ラメも群れ泳いでいた。
池を覗き込んで魚をじっくりとチェックする安藤さん
こうした様子はらんちゅうの時と同様である。「らんちゅうに比べたら簡単」と笑うが、それだけのしっかりとした管理や育成を行っているからの言葉でもあるのだろう。どの品種でも水換えを頻繁に行い、代謝を高めてその分餌を食べさせるというらんちゅう同様の飼育を心掛ける安藤さんであった。「納得いく姿で出荷したい」と、赤や墨の濃さ、体格やサイズにもこだわり、ハイレベルの個体作りを目指されている。これからはらんちゅうだけでなく、メダカの撮影個体もたくさん排出してくれるだろう。