『あんずめだか』訪問
雨中の撮影を終え、『凸凹めだか凸凹』さん宅から移動すること1時間半ほど、次に訪れたのは「柄物が好き」とされる『あんずめだか』さんのお宅である。次のメダカ百華で柄物を取り上げるために、お伺いさせていただいた。
最寄り駅で拾っていただいた際には、ぽつりぽつりと雨が落ちていたのだが、幸いなことにほどなくして止んだのはあんずさんの日頃の行いだろうか、なんにせよ、屋外での撮影ができてほっとしたものであった。
あんずさんに初めてお会いしたのは、2019年の8月、浜松の『猫飯』で行われた「猫飯フェスタ」であった。この時、三色系を中心に並べられたブースに目が止まった。そこがこのフェスタに初出店された『あんずめだか』ブースであった。それまでは来場者側であったが、せっかくメダカを殖やしているのだからと、出店してみたそうであった。「自分が育てたメダカを気に入って買ってくれるのも嬉しいし、お客さんや他の参加者の方とお話するのも楽しいです」と、メダカ仲間とのふれ合いを楽しまれているのがよくわかる方であった。
ご自宅のお庭は、メダカの飼育容器で埋め尽くされていた。
大小さまざまな容器があり、採卵やフ化用の容器まで含めれば、優に100は超えるだろう。ぱっと見、下段のジャンボダライがメインのようにも見えるが、上段の容器で一連の育成は完結させているという。
上段の容器は、100均で販売されている200円収納BOX。20リットル弱の水量だが、若い個体であれば200匹ほどを管理されている。大型容器を導入したのは昨年のことで、それまで小型容器中心で飼育していたため、この容器の方が管理に慣れているそうである。エアーが入っているとはいえ、かなりの密度である。熱帯魚などの飼育経験が長いこともあり、水の管理がしっかりとできていることが窺えた。
飼育されているメダカは、三色系など「柄物」が中心である。「掛け合わせはぺーぺーです。累代が基本ですね」とおっしゃり、累代する中で特徴的な表現を見いだし、固定するべくさらに累代を重ねるスタイルである。
非透明鱗三色の“桜錦”
“雲州三色”ד女雛紅白”という交配系で、オークションで入手された系統を累代されている。
朱の色合いや細かく入る墨の表現がお気に入りである。
こちらはとりあえず“極錦(改)”と呼んでいる系統
“極錦”は透明鱗三色の系統であるが、累代しているうちに透明鱗性でないタイプが得られ、普通鱗表現に選抜累代されている。
“ドス黒三色”とも呼ばれており、黒系の表現がお好きである。
他にも坂出和彦氏の“三色ラメ幹之”
小寺義克氏の“あけぼの”
それぞれ累代されており、好みの姿に仕上げて楽しまれている。ただし、「趣味で楽しむ分にはいいけど、商売にするには三色は大変ですね」とされる。どうしても数を採らないといけないし、成長によって変化するため、出来上がるまでに時間もかかる。「前に若い個体だしたら、後ですごくよくなったと聞いたら悔しくて」と笑われていた。
『備中めだか』から入手した“金十六夜ラメ”
ブラックリム系の品種で、上見でも独特な黒さと赤さを楽しめる。光体形を累代されており、横からも見てみる。
光体形で体高があるため、熱帯魚のプラティのような可愛さがある。オレンジがかった色合いや虎柄のような模様も楽しめる姿であった。
「柄物は個人の好みが出るところが面白いですね。自分がいいと思っても、人によって評価が変わる」とされる。こうしたセリフは、三色などをされている人の所でよく聞く。柄はコントロールできるものではなく、数を採ってそこから選んでいくことになるのだが、それだけにいろいろな表現に巡り会えるとも言える。その中からは、びっくりするような発見もあるかもしれない。あんずさんのメダカたちも、さらに累代が進むことで、また新たな姿を見せてくれるだろう。柄物の楽しみには終わりがない。