“東の達人“” 高草木二三男氏の飼育場へ!

先の週末は群馬県へ。

お伺いさせて頂いたのは高草木二三男さん宅である。地元、桐生地区を中心にメダカの普及に務めてこられた高草木さんは、メダカ飼育歴28年になる大ベテランで、ピュラブラックなどスモールアイの作り手としても知られ、日本メダカ協会の品評会でも数多くの入賞歴をお持ちの方である。

ご自宅の壁に沿っていくつもの発泡スチロールが並び、その先にはメダカ用のビニールハウスが建てられていた。中には大小さまざまな発泡スチロールが並んでおり、その雰囲気はベテラン独特な感じを受けた。

それというのも、まだ春まで少しという時期でもあるが、どの容器もエアーは入っておらず、完全に止水の状態である。しかも、水は真っ青の濃い青水になっていた。その濃さは尋常ではなく、見ただけでとろみを感じるくらいなのである。経験上、ここまで濃い青水になって健康にメダカを飼えたことはなかった。それなのに、さらに驚かされたのはそこに入っているメダカの数がもの凄いのである。

さほど大きくない発泡でも、優に200匹以上が入っている。しばらく覗いていると、青水の中にとんでもない数のメダカたちが浮かんでくる。どの容器もその調子なのだが、調子が悪くて浮かんできているのではない。しっかりとした状態でいる光景はちょっと信じられない光景であった。もし自分がこの水にしていたら、間違いなくメダカを殺してしまう自信があった。

高草木さんにお伺いすると、冬場はこうした状態が普通だとお答えいただいた。11月頃からはなにもされず、寒い間は水換えもまったくしない。蒸発した分を水道水で足し水するだけだそうである。平然とメダカを見せてくれるために網を入れておられたが、どの容器からも、ちょっと網を入れただけで数十匹のメダカが入ってくる。

水は下に堆積していたヘドロ状のものが舞い上がり、さらに濃いドロッとした状態になるのだが、意に介さない高草木さんであった。この状態でキープされている状況は、名人芸というのだろうか、高草木さんでないとできないだろう環境であった。

真っ青で見えない容器から、次々とメダカを掬いだし見せてくださる高草木さん。メダカが大好きだということが強く伝わってきた。

メダカにまつわる話も尽きない。スモールアイに関しても、導入当初はまったく出なかったそうで、10年近く苦労されたとおっしゃる。容器の置き場所を変えたり、水温の調節をしたりと試行錯誤を繰り返し、コツをつかんだそうである。決してうまくいくことばかりではなかったが、「メダカ作りは楽しい。楽しいのが一番」とおっしゃる姿が印象的であった。

掛け合わせも精力的に行われておられ、「他の人が作ったメダカを繁殖させることは好きではない。自分がやれば作れる」と、新たな品種が発表されても、ご自分で交配を考えて、作り出す作業をされるそうである。現在はスモールアイからヒレ長に興味の中心を移され、数多くのヒレ長交配を楽しまれておられた。また、ヒカリ体形のメダカはヒカリ同士では採らず、必ず普通体形との組み合わせで採られるなど、体形作りも妥協されない。この組み合わせでは普通体形も出てしまうのだが、特にヒカリ体形の骨曲がりをなくすためには有効で、ざっと掬っていただいた東天光の幼魚たちも綺麗な体に揃っていた。

オリジナルの組み合わせでできたメダカや三色ラメ、各種ヒレ長など数多くのメダカがいたが、自分が気になったのは、特に全身体内光であった。『めだかのビーンズ』から導入した初期の“百式”をひたすら累代されておられた。その姿は、今までに見てきた全身体内光の様々なタイプどれもが得られているようであった。

体内の輝きが強く、全身のものから飛び飛びに入る表現で、最も多く見られる全身体内光の姿

飛び飛びに体内の輝きを持ち、体外光も入る“百式”表現を忠実に表す姿

“梵天”と呼ばれる頭部に輝きを持つ姿

体内の輝きが赤みを帯びたり、多色に見える姿

また、高草木さんがラメを重視して分けておられるタイプも興味深かった。


その色合いは緑がかっており、“緑光”を思わせる姿に作り上げられていた。

さらに、「こんなのはどうかな」と出していただいたのはブラックのヒレ長を交配したもの

黒みのある姿は、“黒百式”をイメージさせる。

白容器に入れてみると、体内の黒さをしっかりと持っていた。この個体は高草木さんが作出された“清流きりゅう”と言う名を付けられたタイプに似ているのだが、“清流きりゅう”、現在は高草木さんにとって、とても嫌な経験となってしまった部分があったそうで、現在、高草木さんは累代繁殖をされておられない。「メダカ飼育を止めようかと思っていた」とまで高草木さんは口にされたのだが、高草木さんの経験とメダカはまだまだ多くの真面目にメダカを追求される愛好家に見て頂かなくてはいけない貴重で、情熱の込められた魚ばかりなのである。再び、“清流きりゅう”を凌ぐメダカを作って頂きたいと思った。

今回、高草木さんの“百式”の累代からのありとあらゆるタイプを一同に見ることができた印象であった。
お話をお聞きし、そのメダカを撮っていると、「こっちのはね…」と次々に他のメダカを紹介してくれる高草木さん。本当にメダカがお好きで楽しんでおられるのが伝わってきた。「メダカの趣味はお金じゃない。楽しいのが一番」とおっしゃる関東を代表される達人のお一人であった。取材を終えた頃、少しだけ表情を緩ませてくださった高草木さん、とても1日では撮り切れないメダカが多数おり、「また必ず来ます!」と約束させて頂いた。

これからの高草木さんのメダカに注目である。

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