『観月』というハウスネームが付いた紅薊血統の三色メダカ
広島県福山市在住の『あまぞんめだか』、須賀 貴氏が新たな表現の透明鱗性の三色メダカを作られた。
須賀さんには、これまで、“あけぼの”×(“あけぼの”ד灯”)をベースにした非透明鱗三色系のハウスネーム“珊瑚(さんご)”が知られていたが、今回、須賀さんが「ハウスネーム発表の気持ちに一点の曇りもない!」と言われる新たな表現の三色メダカを作られたのである。
この2個体は、昨年の9月『メダカ百華第6号』の取材時に須賀さんのところで撮影させていただいた、瀬尾開三氏の作られた“紅薊”である。このまま累代繁殖させても十分に魅力的なメダカなのであるが、須賀さんは、「“紅薊”の持つブラックリム血統を薄めながら、三色のメダカにしていきたい!」という狙いで、透明鱗三色を交配されたのである。
使われた透明鱗三色は、“あけぼの”作出者の小寺義克氏の系統で、小寺氏の透明鱗三色は墨斑が明瞭に現れる「知る人ぞ知る」銘系統なのである。その透明鱗三色は、『メダカ百華第4号』や『メダカ品種図鑑273』に掲載させて頂いている。
「背ビレ、尾ビレの朱赤色はなるべく残す」選別をされた須賀さん、それだけに止まらず、別系統の“紅薊”と『栗原養魚場』の栗原さんが累代繁殖されていた透明鱗三色を交配された別系統を掛け合わせたものが、今回、紹介する新たなハウスネーム“観月(みづき)”なのである。この“観月”の命名者は愛知県岡崎市にある『岡崎葵メダカ』の天野氏である。
呼称は「みづき」で、全く異なる三色ラメ系統に“美月”と同じ読みになるのだが、命名の意図は異なる。
横見でも観賞できる姿を須賀さんは目指されており、この個体のように、横見でも魅力たっぷりな個体も出る。
これからお見せする“観月”は上に掲載した魚より若い個体群である。
上見も紹介しておこう。
蛍光色を持ったような“紅薊”血統の朱赤色を透明鱗三色に移行させると、趣を異にする魅力を示す透明鱗性三色となる。
透明鱗三色の元々持っていた魅力を“紅薊”血統が強調すると言ったところであろう。
須賀さんが、広島県福山と岡山県笠岡、備後地区の血統を上手く利用して新たな表現を作り上げたことは羨ましくもあり、「流石は福山!」と思うところもある。
改良メダカは、使う系統があって、それをミックスして新たな姿に変貌させるところに魅力がある。F1を採っただけでハウスネームを付けたがる傾向は相変わらずひどいものがあるが、使用した系統の作出者が「良くしたね!」と褒めてくれてこそ、付けたハウスネームは後々まで使われるのである。
銘品種と呼ばれる系統は、他の人に認められて初めて品種名的なハウスネームとなる。そういったハウスネームを一つ作ることってやはりF3以降のメダカで成立するものだと思っている。
“観月”を累代繁殖させるのも楽しいだろうし、更に他の系統と交配してみるのも良いだろう。
改良メダカは飼育者が色柄を追求していく交配が楽しいのである。