ブドウ眼アルビノの銘品種 “かぐや姫”
福岡県朝倉市在住の上村 剛氏の“卑弥呼”の優雅な姿をがTV番組でご覧になられた方も多いことだろう。
ブドウ目のアルビノで松井ヒレ長とスワロー(“風雅”)双方の特徴を持ったヒレ長のメダカは、その後、各地のメダカイベントやオークションで注目度の高い系統となった。
それまでアルビノと言えば、「普通体色のものより飼いにくい」、「針仔が育てにくい」、「色柄がなく単調…」などの理由で飼育が敬遠されることも多かった。
そして、愛媛県西条市在住の垂水政治氏が多色のアルビノを追究されていることが知られるようになり、ロングフィンを持つアルビノが作られ、そしてヒレ光を持ったアルビノに“王妃”の呼称が付けられ、2020年に更に注目される存在となることは容易に想像できるのである。
これまでそれほど注目されていなかったアルビノが2020年以降、再び、脚光を浴びる予感がする。
ブドウ眼と呼ばれる、リアルレッドアイアルビノに比べると暗赤色の目を持ったアルビノの先駆けは、かの長岡龍聖氏作の“かぐや姫”である。“かぐや姫”は、小宮正城氏の銘品種“紅”と楊貴妃アルビノを交配した楊貴妃透明鱗の光体形のアルビノで、2009年に固定された品種である。発表当初は、「骨曲りが強いため、良い個体を得にくい…」と言われていたものである。
上の2点とも、多少の脊椎骨に曲がりが見える。これは、長岡氏が固定していた当時からのもので、この“かぐや姫”だけではなく、全ての光体形の難点である。
この脊椎骨の曲がりについては、見た目で「曲がっている」というのは簡単だが、この光体形の脊椎骨については、「曲がっている」という言葉で片付けるほど簡単なことではない。
今年の6月、楊貴妃光体形と“紅”を交配した。グループ産卵させて一週間毎に卵を採って孵化させていた。
すると、一週目の稚魚では20%が背曲がりだったが、二週目の稚魚では90%が背曲がり(汗)、「えっ?」と思ってもう一度、卵を採って育ててみると、三週目の稚魚では30%が背曲がりになった。グループ産卵だから、データがバラつくのは当然なのだが、「それだけではない何かが背曲がりに作用しているのではないか?」と検証中である。孵化水温、餌やり、湿度、水換えによる水質の安定…大きく分ければこの4点が要因の可能性が高い。そのことについてはまたいずれ!
こういった個体の脊椎骨をどう直していくか?と言えば、普通体形で普通体色のものを交配して作り直していく必要がある。こういった方法は観賞魚ではグッピーで普通に行われていることなのだが、メダカの場合、その回り道を積極的に行う愛好家はまだまだ少ない。
アルビノの飼育、作り方については、『メダカ百華第8号』で佐藤昭広氏が触りであるが述べてくれている。
この“かぐや姫”を作り直すためには、普通体色の骨曲がりのない光体形の『紅』あるいは普通体形の楊貴妃透明鱗を交配して作り直す作業が必要であろう。
さらに、上村氏の“卑弥呼”のようなヒレ長を持った方向へ進むなら、普通体色の松井ヒレ長とスワロー双方の特徴を持ったメダカを交配するのもいいだろう。
F2、F3まで採ればそれは実現へと進む。一年後の2020年の今頃、チャレンジした愛好家は更に美しさを増したアルビノメダカを手にすることが出来るだろう。
アルビノだけではなく、「異品種交配してF2、F3まで採る!」そういったチャレンジを一人でも多くに方に楽しんでもらう2020年になれば!?と思っている。