『うなとろふぁ〜む』へ
埼玉県富士見市の『うなとろふぁ~む』に寄らせていただいた。
11月も半ばを過ぎ、日中でも肌寒く感じる季節になってきたが、ここのメダカ達はハウス内で管理されている。
ハウス内で動いていると、暖かいどころかTシャツ姿でも汗ばむくらいである。夜には外気温が下がることにより同じ程度にハウス内の温度も下がるが、昼間の陽射しがあたっていれば、冬ということを忘れるほど暖かく、卵を持ったメダカもまだまだ見られた。屋外中心の販売店では、冬季休業するメダカ店もあるが、こちらは真冬でも元気なメダカ達に会うことができる。
まず見せていただいたのは『うなとろふぁ~む』で“青蝶クラウンテール”と呼んでいる系統。
『行田淡水魚』が作出した松井ヒレ長幹之ロングフィンである“青蝶”。浜松の『猫飯』はそのヒカリ体形“青蝶半月”に固定化を進めた。『うなとろふぁ~む』ではさらに体の色味の改良も意識し、“青蝶半月”に“緑光半月”の黒みのある個体を交配して累代を進められている。『猫飯』では、“天露の糸”と呼ぶようにした系統で、『うなとろふぁ~む』では熱帯魚のベタの品種にもあるヒレの軟状が伸びるクラウンテールをイメージされ、当初の呼称を用いているそうだ。
上見でもその特徴的なヒレと共に、独特な体内光の輝きも見ることができた。ヒカリ体形であることから、骨曲がりを淘汰すると綺麗な個体は3割も残らないのが悩ましいところだそうだが、この掛け合わせにしてヒレの伸びもよくなったそうだ。11月3日に行われた第52回埼玉県観賞魚品評会のメダカの部で優勝され、さらにクオリティをあげるべく力を入れている品種だそうだ。
こちらは全身体内光系の“巫(かんなぎ)”
黒みのある全身体内光を選別累代してきたもので、独特な不気味さを表現しようとされている。確かに体内の黄金の輝きに体表の黒みが合わさり、なんとも言えない雰囲気を出している。全身体内光系のメダカは、顔つきがごつくなったり、口先の短い顔になりがちであるが、メダカらしいシャープな顔つきになるよう選別に気をつけて進めている。
体外光を持つタイプもいる。体内光メダカの場合、体外光の面積が大きくなると、せっかくの体内光を隠してしまうことになる。そのバランス加減も難しいところである。
横見にすると独特な輝きも見せる。水槽飼育でも楽しめそうである。
オーロララメ幹之から累代されている“閃光”
青、黄、そして体外光を意識されており、見る度に完成度はあがってきている。
昨年の春に見たプロトタイプ。その面影を見ることができる。
“緑光”も累代されており、そこから出る白体色のタイプも分離し、固定化を進めていた。
白地に映える緑が美しく、来シーズンに向けてこれも力を入れている。
青黒い色調に目がいった黒幹之から、斑模様のタイプも出たそうである。
さらにこのタイプ同士の交配から新たな表現も出現していた。
黄に斑模様、そして青の体外光が目につく。ここからさらに変化が出るのか?なんとも不明なことから、タイプ“?”として進められている。
もちろん、人気のある三色ラメも意識されており、取り組まれている。濃い朱色や墨の入り具合のよい個体が見られたが、どうしてもこの色合いが濃くなると、ラメの入り方が甘くなってしまう。そこで三色ラメにオーロララメを交配し、ラメを増やせるかも試されていた。
この模様でラメが増えていく姿を期待した。
『うなとろふぁ~む』の山崎さんは、導入したメダカを次々と交配するよりも、累代繁殖する中で派生した表現を選抜し、質を高めていくことを強く意識されて取り組まれている。その中でもよりよい表現ができればと、試行錯誤もされていた。
「これは趣味です」とされていた“サタン”のヒカリ体形
アイキャッチが入ったのでやっと目の位置がわかるくらいの体色の濃さを見せていたが、この黒さの出現率は10%にも満たないそうで、さらにヒカリ体形のため骨曲がりも出るため、しっかりと骨がまっすぐで、なおかつ体色とヒレの色合いまで揃えるとなると、その割合は100分の1以下かもしれないそうで、「商売にしたら合いません」と笑われていた。
冬の時期ではあったが、次々と訪れるお客さんとの会話も楽しみながら、メダカの世話をされている姿にアットホームな雰囲気を感じた『うなとろふぁ~む』であった。