水路の水辺植物
取材先へ向かう途中、ふと覗いてみた水路は水草で埋まっていた。雨の影響か、川の本流に近い場所や田んぼ周りの水路は茶色く濁って増水している状況がほとんどであったが、この水路は水深15cmもない程度であった。
両側の壁もしっかりと護岸された幅2mもないような水路で、周りは普通の民家が建ち並ぶ町中であったが、水面を覆うように草が繁茂し、隙間から見える水面には、メダカやフナの子供だろうか、魚の姿も見られた。そしてアメリカザリガニも。
まず目に入ったのはヒシであった。流れによって溜まったのだろうか、折り重なるようにして水路を埋め尽くしている状態が何カ所も見られた。
ヒシは特徴的なギザギザの縁をした浮葉植物で、ランナーを伸ばしながら水面で殖えていく。秋には、水中に大きな棘を持つ果実をつけ、その果実は食用にもされる。
ヒシの仲間にはオニビシという種類も知られるが、ヒシの仲間の葉は環境などの要因により変異が見られ、ヒシとオニビシも正確な同定には実を確認する必要がある。
そして、このヒシと混成するように繁茂していた草があった。
細長い葉で、特に特徴のないような植物であったが、こんもりとした殖えっぷりが目に付き、「なんだろう?まさか外来種じゃないよね」などと話していたものであったが、帰宅して調べてみると、まさにビンゴ!
南米を原産とする湿性植物のナガエツルノゲイトウであった。
這うようにしながら茎を伸ばし、その先端が立ち上がって群落を作る。実際に見ているところよりも、ずっと奥に根元があり、1m以上茎を伸ばしているようであった。
湿性植物であるが、乾燥にも強く、千切れた茎からも殖えるという強靱な種で、日本では特定外来生物にも指定され、世界的に見ても侵略的外来種として指定されている種であった。
小さな白い花を咲かせていた。茎から柄を伸ばした先に花があり、名前の由来にもなっている。
町中の水路という場所で見られ、「水草が簡単に見られていいな」などと簡単に思ったものだが、そう簡単な問題ではないものであった。伐採するにしても、取り残した茎や葉からも再生してしまうので、駆除も簡単ではないだろう。特定外来生物に指定された動植物は、運搬や販売、もちろん栽培も禁止されている。