中里氏の作る幹之TSから出てきたフルマスクの一匹のオス
神奈川県川崎市在住の中里良則氏、氏の作られたブラックダイヤや累代繁殖させている幹之メダカ、そして、星河と呼ばれる青ラメ幹之は常に注目されているメダカである。
その中里氏が累代繁殖させておられる幹之メダカを初めてタイプ分けして繁殖させることにされたのが、幹之Sと幹之TSである。
https://piscesbook.com/archives/11245
https://piscesbook.com/archives/12018
その二系統については以前の記事をご覧いただきたい。
そして、その交配から、一匹のフルマスク、ほぼ90%の体側がプラチナ色に輝くオスが出てきた。
この個体である。尾ビレの付け根付近でだけ、グアニン層の輝きがなくなっているだけで、それ以外はほぼ全身がプラチナ色に輝いている。
この個体の右半身の様子はこれである。
左側の胸ビレにも、色が乗り、サンセットタイプへの変化につながりそうである。
この個体を見て、まず、思い出したのが、
当社から発刊されている『メダカ品種図鑑273』の173ページに掲載した、この“鉄仮面変異個体”であった。
この個体は、静岡県浜松市にある『猫飯』の池谷雄二氏が幹之メダカの中から見つけた一個体である。池谷氏と話をしたのだが、今までに、このタイプの体側がプラチナ光沢になる個体を10個体ほど見ているそうである。「市場に出ていた幹之の中にいたこともある」そうだが、同時に雌雄が揃ったことはなかったそうである。
初めて見た個体で、繁殖をさせたそうだが、「メスだったんですけど、遺伝は確認できなかった」そうである。
まず、初めて“鉄仮面”と呼ばれた個体を再び見ておいて頂こう。
写真は広島県廿日市市にある『めだかの館』所有のものである。
この個体が発表されたのは、2007年のこと、埼玉県の藤井氏が最初に発表されたもので、頭部から体の前方1/3ほどが全てグアニン層の輝きを持っている個体で、2009年に“二代目鉄仮面”と言われたメダカを栗原氏が発表されている。
よくただのフルボディタイプ(当社ではフルラインと呼ぶ)に“鉄仮面”の呼称が使われることもあるが、それは誤りというか、“鉄仮面”という言葉に定義はないのだが、こういった混乱を招くような使い方がなくなっていくことを望みたい。
この個体は頭部全体がプラチナ色に輝いており、“鉄仮面”と呼ぶに相応しい。
下の写真を見ていると、尾ビレ付近で、向こう側のグアニン層が透けて見えているのが判った。
この透けているところを見ていて、別のメダカを思い出した。
こちら、埼玉県の三上氏のところで出た“ふぶきメダカ”と呼ばれたメダカで、2006年の写真である。今から13年前のことである。
こちらは、“菊鱗黄金”と呼ばれた2010年に行われた第2回春季日本メダカ品評会に出品された個体で、当時は大騒ぎになったメダカである。愛媛県の菊鱗園出品の個体であった。
この2匹は基調色は異なるのだが、同じように、体内に暗色の色素が現れた個体で、今回のこの全身プラチナ色の、中里氏の幹之メダカTSも、体表に現れたグアニンの輝きと白に近い色素が体内に現れたものが二重になってこのように見えるように思えてきた。
さらにクローズアップして撮影してみる予定である。
こういった表現が子孫に受け継がれていく可能性はゼロではない。今後の展開を楽しみにしていたい。