西へメダカ取材 1日目 愛好家宅へ

西方へ三泊三日のメダカ取材へと出掛けた。おりしも世間は10連休になるGW真っ盛りである。当初の出発日として考えていた土曜日ではどうにもならないことがわかり、前日の金曜日夜に移動してしまい、土曜早朝から動くことにした。しかし、金曜日はまだ会社や学校もある平日であったのだが、それでも夕方の新横浜駅新幹線乗り場は、すでに人、人、人…ものすごい混雑になっていた。乗車してしまえば、後は黙っていても岡山駅に到着。早々にチェックインし、翌朝早朝から動き出したのである。
まだ薄暗い中出発し、まず向かったのは坂出さん宅。坂出さんは三色ラメ幹之にこだわって追求されている方として有名な方である。


ご自宅前のお庭に、複数の容器が並ぶ。中にはキラキラとラメが輝くメダカが群れていたのだが、この手前の容器はいわば二軍や三軍。種親と残されたメダカたちは、奥の場所にまとめられていた。
黒い!が第一印象であった。


「いろんなメダカをやりたいけど、やるからには突き詰めなきゃ」とおっしゃり、三色ラメ幹之を追求されている。「去年より今年、今年より来年」と、常にクオリティを上げることを考えておられた。墨の濃さをより濃くはっきりとした表現にさせ、朱色も濃くさせるよう心掛けられており、秋から春の水温変化を経験させたり、青水で越冬させるなど、朱色が濃くなるような工夫をいろいろ試されていた。「見た人に去年のよりいいですねって言われるのがうれしい」とおっしゃり、ご自分では出来具合に謙遜されておられ、周りの人の感想を聞くのが楽しみなようであった。
こちらは三色ラメから出た紅白


これはこれでまとめられていたが、やはり墨の表現に強くこだわられていた。「赤を濃くするのは難しいけど、赤くするのはできる。紅白も出るから白地もついてくる。だからこそ墨にこだわる」と言われていた。
ものすごい三色ラメが揃っている坂出さん宅であるが、特別なことはされていないとおっしゃる。「庭先に容器がいくつかあれば誰でもできるでしょう」とおっしゃるが、そこはそれ、基本的な飼育がしっかりとできているところにセンスが必要になる。飼うことは誰にでもできるが、代名詞のような表現のメダカを作り出すことは簡単なことではない。坂出さんも「どうしたらいいの作れるか?と聞かれるけど、センスですとしか答えられない」と笑われていたが、楽しみながらしっかりと取り組まれておられた。「産んだ卵は100%針子にし、その針子も100%育て上げたい」と、卵一粒を大事にされている。
「展示会とかで一般の人に綺麗と言ってもらえると嬉しいね」と、皆で楽しくやりたいと微笑まれる姿が印象的であった。

次に向かったのは木口さん宅。メダカ交流会の倉敷支部の支部長を任されることになった木口さん、商売ではなく、ご自分の趣味としてメダカ飼育を楽しまれている方であった。
まず驚かされたのはその飼育場である。


200個近い数のプラ舟が並ぶ壮観な眺めであった。この他にもビニールハウスもあり、その合わせた容器数は300ほどもあるだろうか。それらをおひとりで管理されているのも驚いたものだったが、この規模で殖やされていても、販売など一切外に出されることはさ
れず、ご自分の楽しみにされていたのであった。
まず見せていただいたのがこのメダカ


澄んだ青さを見せるメダカであった。深海や体内光を思わせるような色合いであるが、これは木口さんのオリジナルメダカである。幹之と透明鱗を交配して累代されており、体の雰囲気とその青さの組み合わせは見たことのない表現であった。
他にも透明鱗系の交配品種をいくつも作られておられ、どれもが他では見ないような表現をしていた。透明鱗を使うことに強いこだわりを感じられたものであった。そしてそのどれをも外に出されることはせず、ご自分の趣味として楽しまれておられた。案内役として同行していただけた坂出さんも「どれも長く累代してるのに、一切外に出さない人だから、全然知られてない。ここまで見に来る人もおらんし」と笑われておられた。
このメダカもそうだが、他にも黄色体色の透明鱗ブチのメダカなど、いくつも累代品種を作られているのだが、どれにも木口さんはオリジナルのハウスネームをつけておられなかった。「黄色黒」や「黄色でしっぽ黒」といった感じにおっしゃり、外に出すおつもりがないからか、ご自分がわかっていればよいということだろうか。変に呼称が氾濫することはヨシとされず、これもひとつのこだわりの形なのだろうと思えた。
透明鱗を中心に交配を楽しまれておられたが、ずっと系統維持されているメダカもいた。それがこの楊貴妃である。


昨年、福山で取材した際に話しをお聞きした「金龍さつき園」の楊貴妃であった。紅帝の大元であるメダカで、木口さんはそれをしっかりと累代されていた。その赤さはベタッとした色合いで、他で見る楊貴妃とはひと味もふた味も違うものであった。

まさに趣味としてのメダカ飼育を楽しまれているお方で、表に出さず黙々と累代を進める職人気質の強いお二人であった。
そして、この日の締めである静楽庵へと向かった。

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