紅薊
“紅薊”は、広島県の瀬尾開三氏のメダカを種親にして、同じ広島県の神原美和氏が作出されたブラックリム系の品種である。濃く厚みのあるオレンジの体色で、見た目のインパクトの強い品種である。
先日、一年ぶりにお邪魔した埼玉県のメダカワールドで、久しぶりにその姿を見た。
メダカワールドで種親にされていた“紅薊”
そういえば…と思い出したものである。この品種は、その独特な濃いオレンジの色合いが印象に残っていたのだが、生きた実物をしっかりと見たことがなかった。画像や印刷物で見ていて、「この色は濃すぎるのではないか?」と、デジカメの色調や印刷による色上がりが過ぎるようにも見えてしまうことがあったもので、そこはやはり「現物を見るべき」メダカのひとつであった。その機会を得られたのが、昨年の広島福山の取材での近藤泰幸さん宅であった。
実際に見せていただくと、あの独特な体色は誇張どころか、陽の光の下で見る方がより強烈で、毒々しいような印象さえ受けたものであった。
近藤さんの“紅薊”
近藤さんも神原さんの“紅薊”を元に繁殖させておられたが、「目の外環を明るくする」という明確な目標を持たれて交配を薦められており、近藤さん独自の雰囲気を持つ“紅薊”を作出されていた。
頭部が濃いオレンジで、体側から尾ビレにかけて墨が染み込んだような姿のタイプ
典型的なタイプとも思っていたが、その表現のバリエーションは非常に幅広いこともわかった。
全身がオレンジに染まる個体
体の地色に黒みがあることから、その上に載るオレンジがさらに濃い表現になるのも本種の特徴である。
体の黒みが少ない白地の個体
体格がガッシリとしており、錦鯉の紅白を思わせられた。
こちらも体が白地になっているが、正中線を走る黒がよいアクセントになっている。
同じ体の色合いだが、くっきりとしたオレンジの粒状の発色が面白いタイプ
オレンジ、白、黒という三色の表現で、これらも錦鯉ぽい印象を持ったものだ。
黒みの強い個体
錦鯉で言えば金松葉だろうか、まったく別の雰囲気を感じさせる。
“紅薊”に特にこだわって殖やされている近藤さんのところであるから、こうした様々なバリエーションを見られたものであるが、どれも非常に魅力的で、単純に「飼いたい!」と思えたものであった。掛け合わせもメダカの楽しみ方であるが、一種を徹底して追い続けることも奥深く楽しめるものである。