大きなポテンシャルを持った、カガミ鱗を持つメダカ
3月31日、“猫飯フェスタ”が行われた、静岡県浜松市西区にある『猫飯(ねこまんま)』でヒレ長メダカの各タイプなどの撮影をさせて頂いた。
そして、『猫飯』の池谷雄二氏が発見された、鱗に変化を見せた“池谷カガミ鱗”を撮影させて頂いた。
「カガミ」とは、鱗が反射することから「鏡」が名称の由来だと思われている方も多いかと思うが、コイで知られる、《カガミ》型の鱗を持つ個体のことを指す。
この図は、恒星社厚生閣出版の『魚類育種遺伝学』に掲載されたもので、一番上が普通の鱗鯉(うろこごい)で、二番目がカガミゴイである。そして、三番目、体側の中央に鱗が綺麗に並んだラインゴイである。
日本でも錦鯉などでドイツ鯉、カガミ鯉と呼ばれる大きな鱗を持つ鯉が知られており、このメダカにも《カガミ》型の鱗を持つタイプが固定されつつあることを池谷氏は累代繁殖によって着々と《ライン》型の鱗を持つメダカへと近づけておられるのである。
“池谷カガミ鱗”である。
このような個体を見て、「鱗の並びが乱れているだけ」、あるいは「奇形」と思っている方は残念ながら、このメダカのポテンシャルの高さを理解できないだろう。
これも『魚類育種遺伝学』に掲載されたもので、一番下の個体のようなものを乱鱗(らんりん)と呼び、現在の“池谷カガミ鱗”は下から二番目の図の鯉のレベルにまで繁殖が進んでいると言えるのである。
この乱鱗、これが《カガミ》型の鱗を持つ個体への第一歩なのである。
「何故、池谷氏がこの乱鱗に気づいたか?」と言えば、池谷さんが、メダカ以前にタナゴ類が好きで、和歌山県在住の小川氏が野生で一個体を発見、それを交配して作られた《カガミ》型の鱗を持つタイリクバラタナゴの飼育経験があったからである。
この二点は小川氏の写真で、見事な《カガミ》型の鱗を持つタイリクバラタナゴである。タナゴ類では、ヤリタナゴでもこの《カガミ》型の鱗を持つ個体がかつての『フィッシュマガジン』に掲載されたことがあった。
このタイリクバラタナゴが池谷氏の頭にあったことから、「メダカでも乱鱗の個体を見つけられれば!?」と観察してこられたのである。
ここまで来たことで、池谷氏は《ライン》型の鱗を持つメダカへの道筋が見えてきたに違いない。
この図は、ラインゴイの鱗の並び方と数の遺伝的変異を表したものである。現在、この図で言えば、下から二番目のところまで“池谷カガミ鱗”は来ていると言えるだろう。
今年の春から次世代の“池谷カガミ鱗”が生まれてくるだろう。その個体でさらに《カガミ》型の鱗を持つメダカが顕著に出現してくるのはほぼ間違いないだろう。
これまで、メダカの世界は、体色、ヒレなどに多様な変化を見せてきた。そこに鱗の変異が加われば、バリエーションは大きく増えるに違いない。
大きな《カガミ》型の鱗に、ラメを乗せるのも良し、さらにヒレ長化させるも良し、メダカの改良方向にこの《カガミ》型の鱗を持つメダカは、さらに将来性が豊かで、長い道のりであることを示してくれたと感じている。
今後の展開が楽しみである。