メダカ愛好家宅訪問
この日はメダカ愛好家のぶりんさんのお宅へ。
メダカとの出会いは20年近く前だそうで、当時は改良メダカと言えば白メダカという時代であった。お父さんが錦鯉を飼っていたことから、錦鯉店で白メダカに出会い、その姿と当時としては非常に高価な存在に驚き、興味を持たれたそうだ。当時はご自宅の周りに鯉用の池がびっしりと並び、井戸もあったそうだ。獅子脅しなどもあったことから睡蓮鉢や雲形容器などで白メダカを飼育し始めたそうだ。その後、鯉の池は撤去することになり、お子さんの野球生活に力を入れておられたのが、卒業と共に時間もできたそうで、なにげなくネットを見ると、それこそ錦鯉のような姿のメダカがいて驚き、本格的にメダカ飼育を始められたのが4年ほど前だそうだ。
ご自宅の周りにはプランターや発泡、プラ舟などが所狭しと並べられていた。フタなどは簡単な様子であったが、鳥や獣の被害はないそうだ。自分の所ではサギやらアライグマやらが日参するような環境である。こちらは周りの環境はすぐ近くに川や山があり、自然豊なのであるが、もしかすると町中の獣の方が狩り場を求めて飼育場にやってくるのかもしれないと思えた。
お好きなメダカをお聞きすると、柄物、特に力を入れているのが非透明鱗三色だそうだ。白地に赤、そして墨の表現にこだわり、それを作るために足し算引き算を考えるのが楽しいとおっしゃる。「単色のメダカは骨や体形しか見ないからいまいちやりがいなくって」と笑われていた。
三色ラメが力強く泳いでいた。静楽庵血統のF4になるそうだが、秋には4000匹以上いたそうである。ただ、ラメメダカはラメが強く表現されると色味がオレンジ色になってしまうことが多く、紅白ラメを入れるなどして赤を追求されている。それによって墨が薄くなるものでもあるが、錦鯉の経験があることから、赤の表現にはこだわられていた。
三色ラメの選抜した種親や煌、紅白などのメダカたちの紹介は、メダカ百華7号をお待ちいただきたい。
自分が目を惹かれたのは、やはり女雛。
柿色はもちろん、頭赤の表現にこだわられているのがよくわかる。そういえば、先の三色のところも頭赤の個体が数多く見られたものであった。
もうひとつは夜桜×女雛
垂水氏の直系で、メダカ仲間がF3まで進めていたのを分けていただき、現在はF5になっている。やはりこの掛け合わせの目標には煌の存在があるのだが、様々な表現がでてくるのも魅力である。特に黒っぽい表現に着目し、柿色の表現は少しだけという黒勝ちの女雛という姿もひとつの目標にされていた。この組み合わせは方向性がいろいろあることで楽しんでおられた。煌は別槽に見事な個体が選別されており、こちらはこの春先から親に選ばれる予定である。黄色の表現も見られ
この明るい色合いも面白そうに思えたものである。
屋外の容器の中には、ミジンコ用のものも多数含まれている。
この2年ほど絶やしたことがないとおっしゃるミジンコは、メダカを健康に育てるために大切だとされる。お仕事の関係で早朝に出社されるため、昼間に餌をやることができないが、ミジンコをいれておけば、常に生き餌が供給されることになる。
最初に購入されたのはタマミジンコだったそうだが、泳いでいる姿を見るとタマミジンコではなかった。屋外で越冬し、休眠卵が浮いていたことでオオミジンコかとも思われたが、それほど大型の個体は見られず、卵の鞘の形も異なる。
ミジンコとは微妙に頭部の形が違うようにも見え、鞘の中にふたつの卵が見えることからタイリクミジンコとも思える部分もある。日本在来のミジンコはいないことが知られており、どうやら、ミジンコという和名の一型のようだ。ミジンコの同定もなかなか難しいものである。
メダカの飼育で大切なことは「手を抜かない。明日でいいやは絶対にダメ」とされる。
洋蘭用だった加温スペースの容器は、毎日の水換えを行われる。フ化した稚魚もしっかりと水換えをして、粉餌だけでも育て上げられている。もちろん、ブラインシュリンプをフ化させて与えた方が、しっかりと体ができあがると実感されているそうだが、お仕事などでセットする時間がずれてしまうのが悩ましいそうだ。そのためミジンコを入れておいたりと、生き餌の活用を大切にされている。外の容器から生きたアカムシを洗い出し、ピンセットで与えることもあるそうだ。そして、採取した卵も産卵床をそのままということはせず、すべてをしっかりとクリーニングしてフ化槽に入れておられる。そうした作業の手抜きは絶対にしない姿勢で、すべての作業を楽しみながらご自分のメダカ作りに励むのぶりんさん。見習うべき点をいくつも見せていただいたものであった。