幹之メダカ再考 1

まだ安定してきたとは言えないが、ようやく春らしい季節がやってきた。

2019年のメダカシーズンの開幕である。この時期は、まずは冬越しした水の水換えと容器を洗う作業が中心となる。まだ昼夜の気温差が低いので、水換えをするなら、午前中に済ませて、新しい飼育環境に少しでも慣れてから夜を迎えるようにすると良い。

すぐに餌をやりたくなるだろうが、メダカたちを冬眠から起こすには、10日ほどかけて、ごくごく少量の餌を与えながら、食べ残しが底に溜まらないようにすることが大切である。

それと雨!関東地方は先週末はかなりまとまった雨であったが、水換えして新たな環境にした飼育容器に雨水が入るような場所なら、雨があがったら、すぐに1/2以上の水換えは行うようにしたい。雨水は小さな飼育容器で飼われているメダカにとっては良い面は何もない。水温が低い時期なら、まだその影響は小さいのだが、昨年の梅雨時、梅雨明けの頃のような雨の後に気温が急激に上昇する時などは、メダカが死に至るぐらいのダメージにつながる。水換えをあまりしていない飼育容器で飼っている場合も、この気温が急激に上昇する時に午前中に餌やりをして、夕方にメダカが全滅していたというような例は普通に起こり得ることである。

メダカの飼育は簡単なように言われるが、他の観賞魚に比べれば簡単な部分は多いが、何もしないでも生きていける魚ではない。

このブログなどでもよく使うのだが、「飼育する」ことと、「ただ容器で泳がせている」ことは全く意味が違うのである。

「飼育する」ということは、飼育者が飼育する魚をより良い環境を作って、そこで生物を飼うことである。「これで十分!」ということはなく、毎年、毎月、毎日、「こうした方が良さそうだ!」と観察しながら、飼育環境、餌の種類と与え方などをより良くしていくことが大切である。

一品種で最低でも2個、出来れば3個の容器を用意したいので、魅力的な品種が多いメダカなのだが、自分が集中して飼育するメダカの品種数は10品種以下にしている。撮影するためにストックしているメダカと、累代繁殖させたいメダカの飼育方法、飼育環境は違っていて、集中して飼育、繁殖させるメダカたちの水換えを始めとする飼育方法は最善の方法を模索しながら日々、楽しんでいるのである。

「水換えはしない」、「エアーレーションはしない」、「餌の種類は一種類で十分」など、それが正しいことのように、さも自慢げに口にする人がいるが、メダカをより健康に、より美しく育てたいなら、最低限、出来る限りのことはしたいのである。

「水換えはしない」ことで良いことは何もなく、「エアーレーションはしない」という人は、エアーレーションをした飼育環境としていない飼育環境の中のメダカの泳ぎ、体形、産卵数などを見比べてみて欲しいのである。メダカの強健性に頼って、エアーレーションがなくてもメダカが生きているのと、積極的な飼育をすることは別次元であることを知っていて欲しい。

さて、三月になり、各地のショップで非透明鱗紅白の“小町”が一斉リリースされ、2019年のメダカシーズンが開幕した。

https://piscesbook.com/archives/10917

今年は、個人的には、ブドウ目のアルビノ、ヒレ長、ラメ系統のラメを美しく並べる、緑光などを追求してみようと思っているのだが、先日、神奈川県川崎市在住の中里良則氏が進めている幹之メダカのセレクト群 “幹之S”の生後三ヶ月の個体をいただいた。

オスである。

メスである。

“幹之S”と称しているのだが、セレクトと言ってしまうと、選別して残したもののような印象にもなってしまうのだが、種親を選抜して、それを系統立てていこうとしたものに、“幹之S”と名付けたもので、大量な中から選んだ個体ではなく、狙いをもって累代繁殖させたものである。

2007年に愛媛県今治市在住の菅 高志氏が発見された個体に、広島県廿日市市にある『めだかの館』で様々な品種、個体にその菅氏のメダカを交配されて固定されたのが幹之メダカである。

それから12年目、今では全国各地にフルボディ(私個人はフルラインと呼ぶ)と呼ばれる吻端まで体外光が伸びた素晴らしい幹之メダカが普通に見られるまでになっている。それだけ人気がある品種で、この幹之メダカがいたからこそ、現在、人気の多色のメダカの体外光タイプが誕生したのである。

この多色の体外光タイプの改良は今年も多くのメダカ愛好者の手によって行われるだろうが、幹之メダカもフルラインタイプで一括りにされるべきメダカではないのである。

少しずつ変化をしてきているところを逃さずに見ていくことが2019年以降は大切になっていくのは間違いないだろう。

中里氏の“幹之S”は背面の輝青色の体外光がさらに幅を広げているのである。

この後半身のグアニンの輝き、そして、中里氏とは“ツインバー”と呼んでいる尾ビレの上下端に出るグアニンの輝青色のラインなどこれからの幹之メダカのさらなる進化の可能性を示しているのである。

幹之メダカをより美しくしていくことで、体外光を持った別系統のメダカを作るにしても、最初に交配する幹之メダカの質が高い方が有利なことは間違いない。

中里氏の飼育場では、次世代も孵化しており、この3ヶ月目になった若魚たちが、これからどこまで輝青色を濃く発色させていくか?楽しみである。

1 thoughts on “幹之メダカ再考 1

  1. otti より:

     毎回楽しく拝見させていただいております。幹之もどんどん変化しているのですね。このような記事は選別の参考になります。今回もありがとうございました。

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