岡崎葵メダカ訪問

2019年のメダカ取材が始まった。
まずは愛知県からである。土曜の朝、新幹線で豊橋駅に到着、岡崎葵メダカの天野雅弘氏と待ち合わせ、二日間ナビゲートしていただいた。最初の取材を終え、岡崎葵メダカの店舗に着いた時には、もう夕方近く、完全に夕陽が差し込む状態であった。
岡崎に泊まり、翌日にもお邪魔するのではあるが、少しでも多くメダカは見たいので、陽が落ちる寸前まで撮らせていただいた。

こちらは小ハウスと天野氏が呼ばれているハウスで、販売や種親の展示スペースとして使われている。ただし、この冬は2月いっぱいはお店は休業とのことであった。シーズンオフなので、それほど来店する方もいないこともあるが、メダカの負担を考えて休んでみることにされたという。元々、メダカは冬季には動かず冬眠状態になる魚、加温していれば温かい時期と変わらぬ姿を見せるが、魚にはどうしても負担がかかる。
また、ある程度のメダカ飼育の経験がある人ならよいが、まだそれほど飼育経験のない人では、真冬にメダカを移動させたり、加温していたものを外で飼ってしまったりして失敗してしまうことも多い。そのため、特に初心者の方には冬から飼育を始めることはオススメしないそうである。
こちらは大ハウスと呼ぶ、主に育成に使われている普段は立入禁止の場所。

ハウスの中にさらにハウスがあるようなビニールの張り方がされており、保温効果を高めているが、おかげで内側のビニールは結露し、巻き上げると、しばらくは雨降りのような状態になっていた。
そんな中、今回メインに見せていただきたかったメダカが“カブキ”である。岡崎葵メダカの看板魚とも言える存在で、2014年に発表されて以来、多くの愛好家を惹きつけ、今なお進化を続け、注目度の高い品種である。
“カブキ”

オスに青幹之ヒカリメダカ、メスに白幹之メダカ体内光の透明なタイプを使われ、そこから得られた緑色がかった1匹のメダカを用いて作られた幹之系のメダカである。黒緑がかった体色に黄褐色の斑紋が入る。
こちらは“白カブキ”

幹之の血統のため、白体色の“カブキ”も生まれてくる。天野氏の元から旅立った“白カブキ”は、それぞれの愛好家の元で、さらなる進化を遂げ、人気を博している現在、「うちにいるのはおとなしめですよ。でも自分ではこのくらいの感じが好きなんです」と天野さん。「負け惜しみじゃないけど」とことわりを入れつつも笑われておられた。
“ウコンカブキ”

岡山の静楽庵の体外光を見せていないオーロラ黒幹之を交配して累代されている。独特な黄褐色から鬱金(ウコン)と名付けられた。
“翡翠カブキ”
まずは“蒼翡翠ヒカリ”

ヒレの光を重視されており、ヒカリ体形になっていることでその特徴がよく表れている。
“碧翡翠カブキ”

エラ蓋が透明感のある万華鏡のように輝いている個体を選び、アルビノ“コスモ”を交配して進めた系統になる。体色の色合いもやや黄色みの強いものや青よりの緑など、バラエティに富んでいた。
そして、現在リリースされている“カブキ”の最新型が“紅三色カブキ”である。

“カブキ”を繁殖中に得られた黒みの強いものの中から、黄褐色の発色を見せる個体が得られ、それを累代し、“黄三色カブキ”が作られた。それを岡山の栗原養魚場の栗原氏がラメを入れるよう青ラメを交配された。ラメ表現を持つようになったタイプを天野さんがさらに静楽庵系のラメメダカを交配し、2018年に発表されたものである。

見せていただいた親個体は、濃い朱赤の色彩が目を惹いたが、なんといっても黒斑のくっきりとした入り方が印象的であった。まるでチェッカーフラッグのように濃く入っており、これから生まれてくる子供たちが楽しみなものであった。

天野さんと言えば、“カブキ”と共にメダカを求めて日本全国の愛好家や養魚場を訪問する「メダカ旅」が知られる。昨年までで訪れた先は100件を超えるそうだ。この旅により、各地から様々なメダカが入荷するのが岡崎葵メダカの特徴でもある。
メダカ仲間からの情報や専門誌、ネットなどで気になったメダカを見つけると、積極的に訪問を申し込み、よいメダカの情報発信に努めておられる。天野さんは、繁殖させる時はもちろん、作出者の血統を守ることを強く意識されておられる。それは本物を提供するという自信と共に、購入する方に安心してもらうことにもつながるものである。

こちらは八畳のプレハブ小屋で、エアコン管理で室温28℃に保たれており、冬場のフ化仔魚が管理されていた。

各容器にはエアチューブがセットされているが、常にエアレーションをするのではなく、タイマーをセットし、長くても30分程度で、1日に計3時間ほど弱くエアーを入れる。メダカの自然環境は止水のところが多いことから、流れをあまりつけない育成法にされているそうだ。
天野さんの殖やされている“夜桜”

作出者の垂水氏直系の“夜桜”であるが、天野さんの選抜交配により、ネオン街を思わせるような煌びやかな姿になっていた。
そして三色ラメ幹之体外光

左のメスの体外光は口先までしっかりと伸びており、ラメや三色表現も揃った目を見張る姿であった。この魚、実は静楽庵の黒ラメ幹之体外光から出てきたそうで、この特徴を見せる個体を選抜され、この表現はこの表現で天野さんが次世代へつなげていかれる方向で飼育、採卵されておられた。

天野さんは、新たなメダカ作りに取り組む際に、「これこれこういう具合に…」という狙いをつけるよりも、偶然の産物である1匹を見つけて、それを固定することを心掛けておられた。「メダカの新種作出は、自分の作出能力ではなくて、メダカの持つ変化力頼み。今までにいないメダカは想像することはできないけど、メダカはいつも新しい姿を表現してくれるから」とおっしゃっていた。“カブキ”ですら、狙ったものではなく、偶然得られた1匹からすべてが始まった。要はその1匹の存在を見逃さず、しっかりとつなげていくことが大切なのだということであった。
「メダカのお客さんは話すことが好き。共通の趣味を持つことで話しも盛り上がる」と、メダカを通してのやりとりを大切にされておられる。メダカ業界はまだ歴史も浅く、新しいのでやるべきことは多いと感じておられ、メダカの世界の窓口として、愛好家も増やしたいし、メダカの質も高めたい、そしてそれぞれの作出者が作り上げたメダカのブランドを守るのも専門店の仕事と考えておられた。この先の新たな情報発信の内容が楽しみな岡崎葵メダカであった。

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