テトラと呼ばれる小型美魚 再考1
カラシン目の中でも小型種をテトラ類と呼んでいる。
ネオンテトラ、カージナルテトラ、グローライトテトラ、レモンテトラ、フレームテトラ、ペレズテトラ…
南米アマゾン水系を中心に多くの種類が知られている魅力的な小型美魚たちである。
南米からの輸入便がIBAMAの保護政策により様々な魚類の輸出に規制がかかるようになり、また南米からの輸入の空路が限定的になりつつあるなど、売れ筋の熱帯魚が輸入できないとなると多くのボックスでの輸入が年々、減り、小型のテトラ類のポピュラー種はカージナルテトラ以外は不安定な輸入状況になっているのが今日である。
それに代わり、インドネシアなどで繁殖されたブリード物が安価で輸入されるようになり、それはそれで「安過ぎる」というか、飼育者の飼育欲を削ぐようになったのは皮肉なところである。
熱帯魚の魅力の一つに「高級感」がある。また「なかなか手に入れられないから、手に入れたくなる」という部分もある。
それがブリード物が安定して輸入される恵まれた環境になったとしても、人気が下降していく…という反比例的な動向をここ10年ほど見せていたのである。
「魅力がなくなったのか?」と言えば、そんなことはない。安価になった分だけ、テトラ類は数を購入できるし、使わなくてよかったお金で水草などを購入することも出来るのである。
これはブラックファントム・テトラ。渋い体色だが、それが水草水槽で映えるのである。
こちらはレッドファントム・テトラ。「ルブラ」と呼ばれる赤さが濃いタイプも知られているが、体形、特に背ビレの長さが魅力的である。
この二種類ともインドネシアで盛んに養殖されており、「ワイルド個体じゃなきゃ!」という人も少なくないだろうが…
インドネシアブリードのブラックファントムにしても…
レッドファントムにしても、しっかりとした給餌、質の良い餌を与えることで、ワイルド個体と同じような体色、体形を楽しめるのである。
問題は…
安価だからとベアタンクなどで販売しているショップでのストック状況のようにも思える。
しっかりと水草を繁茂させた水槽で群泳させれば、こういった種類の良さをビギナーにも知ってもらえると思えるのだが、ベアタンクで餌もあまり与えられずに泳いでいても、「美しい!」とは思ってもらえないのである。
こちら、イエローファントムと呼ばれることもあるハイフェソブリコン・ロゼウスである。
そのドイツブリードの個体である。
こちら、レッドテール・イエローファントムと呼ばれるロゼウス種に近縁な種類で、こちらは東南アジアでのブリード個体がコンスタントに輸入されてきている。
こちらはファイヤーファントム・テトラと呼ばれる種類。以前はsp.パンタナルと呼ばれていた種類で、こちらは現地採集個体である。
しっかりと飼育していけば…
ここまで鮮やかな体色を観賞できるのである!
テトラ類の魅力は価格では計れない。
要は「飼育者がどれだけ綺麗にしたいと思って飼育するか?」である。テトラ類、特にインドネシアからのブリード物は飼育は非常に容易である。
しかし、容易だからと言って、手を抜いてはつまらない。人工飼料にしても、冷凍餌料にしても、飼育するテトラにとって効果的なものを探すのだって飼育の面白さである。テトラ類のために毎日、少量ずつブラインシュリンプを孵化させて与えることも飼育者が「綺麗にしたい!」と思えば、実践したいのである。
テトラ類はコレクションも楽しいし、群泳も素晴らしい。それに加えて、それを引き立てる水草もバックにあれば、本当にずっと見ていても飽きることはない光景なのである。
是非とも、好みのテトラを見つけ、本気で美しくしようと飼育されてはいかがだろう?その一歩目はカージナルテトラ、ラミーノーズテトラなど様々な種類がいる中で、今日、紹介したファントムと呼ばれる種類を選ばれても良いだろう。
昔話ばかりをしているようなスタッフブログであるが、20年前、30年前の熱帯魚ショップでは見事な体色を輝かせるテトラ類が普通に販売されていたのである。
そういう熱帯魚飼育のビギナーが「わぁ!綺麗!」と思わず言ってしまうようなレッドファントム、ブラックファントムを始めとするテトラ類を見せるプロショップ…そういうショップが一軒でも増えることを望みたい!