磯のヤドカリたち
潮だまりの定番種とも言えるヤドカリの仲間。その中でも特にポピュラーなのが、ホンヤドカリとケアシホンヤドカリである。
ホンヤドカリ
ダークグリーンの地味めな体色で、触覚が黒の中に白が破線状に入ることや、歩脚の先端が白いことが特徴。
ケアシホンヤドカリ
名前の通り、歩脚が細かな毛で覆われ、黒い小斑点が点在している。最大の特徴は、触角が赤いことで、野外などで見ていても、まずこの触覚の赤が目につくものである。
磯には他にも数種のヤドカリが見られるが、まず覚えられるのは、このケアシホンヤドカリだろう。
どちらも北海道から九州の浅海に広く生息している。潮の引く大潮の日に磯に行くと、水のなくなった磯に残った潮溜まりの中で動き回るホンヤドカリたちを観察することができる。昼間よりも夜の方が活発に動くので観察しやすいのだが、ライトを当てると驚いて貝殻の中に入ってしまう。しかし、しばらくそのまま待っていると、やがて貝殻から顔を出して、また行動しだすので、じっくりと見てみるとよい。
すると、大きな個体が貝殻を持って歩いているところに遭遇することがある。
そして、よく見てみると、その持たれた小さな貝殻には、しっかりとヤドカリが入っているのである。これは交尾前のガード行動と呼ばれ、オスがメスの貝殻を掴み、持ち歩いているものになる。甲殻類の多くは、メスが脱皮してから交尾を行うため、オスがメスの準備が整うまでガードしているものとされている。しかし、観察していると、1cmもないような小さなメスをキープしている様子も見られる。
まだ産卵できないのでは?と思えてしまうペアも見られたものだった。
ホンヤドカリもケアシホンヤドカリも右のハサミ脚の方が大きい。メスをつかむのは左のハサミ脚で、大きな右脚はメスを横取りしようとする他のオスとの闘争に使われる。
この時は右からきたオスとの闘争が激しくなり、メスを手放しての争いになっていた。
冬の大潮はよく潮が引き、観察しやすいのではあるが、寒さも相当なものである。おでかけの際は、防寒対策と足下には十分に気をつけていただきたい。