九州、5人のメダカ愛好家の飼育場訪問 2
2018年10月20日、宿泊先の久留米からレンタカーで福岡県朝倉市に向かった。『朝倉めだか倶楽部』というメダカ愛好家が仲間内で集まり、展示会などを行っておられる、熊谷誠治氏と仲山浩宣氏の飼育場を取材させてもらったのである。
ちょうど、10月21日の日曜日には、『朝倉めだか倶楽部』の展示即売会が行われ、取材時は熊谷さんはお仕事中ということもあり、お二人には展示即売会の準備もあった中で、撮影をさせていただいたのである。
こちら、仲山さんの飼育場である。
仲山さんのメダカ飼育歴は5年ほどだと言われるが、小学生時代から金魚を飼育されたり、熱帯魚もアジアアロワナ、ポリプテルスと大型魚の飼育を楽しまれた方である。特に金魚に関してはパールスケール系の金魚を仔引きから楽しまれ、その飼育歴は20年ほどだそうだ。
このパールスケール系の金魚飼育歴が、仲山さんの感性を磨くことに役立ったことは間違いないだろう。
幹之メダカを初めて見られた時に、その体外光の輝きに驚かれ、それをきっかけに改良メダカの飼育を始められたそうである。
熊谷さんとの出会いは、道の駅で熊谷さんの作られたメダカを見たことだったそうである。
熊谷さんの繁殖方法の基本は雌雄1:1の掛け合わせで、種親となる雌雄の選択が的確だからこそ、熊谷さんのメダカはまとまっている印象を強く受ける、特徴的な容姿になっているのであろう。
また、仲山さんのメダカをご覧になった方は、その体形の良さと大きさに感嘆される。『Azuma medaka』の田中さんからも、「仲山さんのメダカはプリプリしていて体形が素晴らしいんです」という話をお聞きしていたのだが、実際に目にして、その体形の良さはトップレベルであった。
「そんなことはないですよ」と謙遜される仲山さんだが、メダカたちは仲山さんの水換え、餌やりという日常管理の適切さを姿、形で見せてくれていたのである。
仲山さんの“雲海”である。“雲海”は愛媛県の『めだかのビーンズ』さん作出のあけぼの×雲州三色から累代繁殖された非透明鱗三色の一型である。それをしっかりと仲山さんは仕上げておられたのである。
こちらは奈良県の『飛鳥めだか』さんが系統繁殖されている透明鱗三色の“飛鳥錦”である。この色合いの濃さ、見事である。
これは仲山さんオリジナルのハウスネーム“月詠(つくよみ)”である。三色ラメ×オーロラ黄ラメに灯を交配して作っておられるメダカで、現在、このタイプと金色タイプに大別されて累代繁殖されておられた。
“小豆超新星”
仲山さんが作る“煌”
“アステカ” 大分県にある『ypメダカ繁殖改良研究所』さんが女雛×雲州三色体外光の交配から作られた非透明鱗のメダカである。
“ホーネット”
多くの仲山さんが仕上げられたメダカを撮影させて頂いたが、仲山さんの詳報は『メダカ百華第6号』にて!
仲山さん宅を後にして、向かったのは『朝倉めだか倶楽部』を主宰されておられる熊谷誠治さんの飼育場である。
こちらは熊谷さんのご自宅に作られたメインの飼育場である。
こちらは主に稚魚、若魚を育成されている飼育スペースである。これだけの容器が並ぶハウスが2棟並んでいる。
ハウスだけで育成容器数は400を軽く超えている。
仲山さんはこれだけの飼育容器を持ちながら、プロではなく、好きなメダカの飼育繁殖を楽しんでおられる方なのである。
『朝倉めだか倶楽部』は熊谷さんを中心にメダカ愛好家がオークションに出品する時のハンドルネームとして付けられたことが最初だそうで、愛好家が繁殖させたメダカの展示即売を行うために、熊谷さんのご自宅横にあった倉庫を借りられ、今年は4回の展示即売会を行ったそうである。
取材日の翌日も展示即売会が行われ、多くの来場者で賑わったそうである。
前日の準備日に分譲されるメダカを見せていただいたが、品種数、メダカの品質、ともに「ここまで揃った分譲会ってあるのだろうか?」と唸ってしまうレベルの高さであった。
熊谷さんの繁殖させておられる紅白ラメ幹之である。熊谷さんのメダカ飼育歴は15年になる改良メダカの初期からメダカを楽しんでこられた方で、改良メダカの進歩と品種改良の歴史をつぶさに見てこられた方である。
三色ラメ幹之
素晴らしい三色幹之
黒蜜レモン×黒龍姫の後輩から朱赤色の上に現れる黒を抜いていく方向で選別淘汰をされてこられた美しいメダカである。
熊谷さんの繁殖されている“雲海”
三色ラメ幹之体外光
熊谷さんは、エビネの栽培歴30年以上の方で、カンアオイなども愛でてこられたそうである。
「赤が濃いメダカ」がお好きだそうで、飼育されておられる各品種も色合いの美しい、朱赤色だけでなく、黒斑、黄金色なら黄金色も濃く、色合いのメリハリが効いたメダカを作っておられた。
熊谷さんを中心に『朝倉めだか倶楽部』に集うメダカ愛好家の方々は、高いレベルで改良メダカを見ておられる方々であった。
詳報は、『メダカ百華第6号』にて掲載させて頂く。
熊谷さんのお宅を後にして、朝倉市から筑紫野市に向かった。
今年、初めてうかがった『筑紫めだか』の大石哲也さんの飼育場を再訪させて頂いた。
前回は7月5日のことで、ちょうど西日本豪雨の真っ只中のことで、土砂降りの中でメダカを撮影させて頂いただけで、飼育場、飼育容器の様子を全く見ることができなかったのである。(汗)
福岡から関門海峡を渡れなくなり、大石さん、同行くださった八女市在住の田尻英二さん、『コンムーのめだか屋』の近藤 努さんと長い時間、夕食を楽しんだことも忘れられない。
「大石さんの作るメダカをもっと見たい!」と思っての再訪であった。
女雛×夜桜スワローから採れた子供にオーロラ灯を交配したもの。
こちらは大石さんのオリジナル、ハウスネーム“蒼(そう)”である。オーロラ灯×小豆超新星を交配して作っておられる系統である。
あけぼの×三色ラメ幹之 大石さんが交配、累代繁殖をされている系統で、見事な個体に仕上げられていた。
こちらも、あけぼの×三色ラメ幹之
“ウコンカブキ”
“ウコンカブキ”
“オーロラ三色”の『しいらメダカ』さんのハウスネームが付けられた非透明鱗三色の一型
大石さんの作られるメダカを暗くなるまで撮影させて頂いた。詳報は『メダカ百華第5号』に続き、『メダカ百華第6号』にて掲載させて頂く。
10月20日は移動時間も含めて10時間、お三方のメダカ撮影とメダカ談義に費やせた。
今回、九州の5人の愛好家の取材をさせて頂いて感じたことは、「九州のメダカ愛好家の作るメダカがいずれは日本全体のトレンドになる」ということだった。
改良メダカは日本全国に愛好家が年々、増えているのだが、特に昨年からその増加は右肩上がりになってきている。
それだけ、全国各地で新しい表現、それに磨きを掛けた系統が続々と誕生してきているのである。
まだまだ九州全体を語れるほど、取材を進めていないのだが、今回の5人は九州、いや日本のトップクラスを走っていく方々であるのは間違いないだろう。
夜8時前の電車に乗って、翌日の長洲金魚品評会に参加するため、宿泊地とした長洲に向かった。