非透明鱗紅白、ハウスネーム“小町”
改良メダカの面白さは、既存の品種を交配して、新たな表現のメダカを作ることができるところも魅力である。
それぞれのブリーダーが自由にハウスネームと呼ばれるニックネームを付けて楽しまれている部分がある。
現在のところ、同じような表現のメダカに、複数のハウスネームが付けられ、改良メダカの世界では、正式な品種名を決めるルールが確立していないため、混乱を招いている部分はあるのだが、品種名レベルにハウスネームが評価されるようになるのは、ハウスネームを付けた人がいくらアピールしても、それがほとんど知られずに消えていくことがほとんどである。
ハウスネームが品種名レベルまで評価されるのは、一年後以降、多くのメダカ愛好家が普通の使うようになって初めて認められる部分が強いものである。“楊貴妃”、“琥珀”、“幹之”、“紅”などは誰がどう変えようとしても変えられないほど周知された名称である。そして、“紅帝”、“オーロラ”、“灯”、“カブキ”、“マリンブルー”、“月虹”、“鳳凰”、“乙姫”、“紅薊”、“あけぼの”、“雲州三色”、“女雛”、“夜桜”、“オロチ”、“緑光”などが広く使われるようになったハウスネームで、そのメダカが特徴的で、多くのメダカ愛好家が「飼育したい!」と思うメダカの名称だけが後々、残ってきているのである。
ハウスネームを使わない、そのメダカの特徴を名称に使用した、“三色ラメ幹之”、“紅白ラメ幹之”、“オーロラ黄ラメ幹之”など『静楽庵』血統のメダカや、“ピュアブラック”、“極ブラック”、“小川ブラック”などもハウスネームの代わりになっているものなのである。
「改良メダカを様々な交配から新しい表現のメダカに!」これは改良メダカを飼育、繁殖している人のモチベーションを高める一つの要因となっており、改良メダカを長年、撮影してきても、エンドレスに撮影するメダカが毎年、少しずつ加わってくるのである。
そして、先週土曜日、後々までこのハウスネームが残る可能性が高いメダカを撮影させて頂いた。この美しい、非透明鱗紅白のハウスネーム“小町”である。2018年末に少量がリリースされたメダカで、本格的なリリースは2019年春からを予定されているそうである。
このメダカを作られたのは、愛知県田原市在住の小野久仁雄さんである。小野さんの本業は花の育苗で、アルストルメリアを中心に美しい花を作っておられる。その小野さんがメダカに興味を持たれ、繁殖されるようになって8年が経つと言われる。魚類の飼育は錦鯉で経験されていたそうで、繁殖はメダカが初めてだったそうである。
それでも小野さんの観察眼と日々の世話の良さによって、すぐに当時、珍しかったメダカをまとまった数で殖やせてしまったと言われる。「それなら!」とメダカの繁殖を副業を始められたそうである。その後、(株)清水金魚の市場に出品されるようになり、小野さんの作る紅帝と幹之は他の出品者のメダカより「赤い!」、「フルライン(フルボディ)率が高い!」と言われるようになり、(株)清水金魚の市場では、「小野さんのメダカ」は常に注目され、全国に流通してきたのである。
この“小町”、青森の対馬義人氏が作られている透明鱗紅白の一系統、“凛音(りんね)”に、煌紅白、そして、黒幹之から少数が出てきたと言われる白桃色のメダカを交配して作られたと言われる。
こちらが元親となった“凛音”である。透明鱗性の紅白柄の系統である。
こちらが煌の紅白タイプである。この写真は煌を作られた愛媛県西条市在住の垂水政治さんのものである。
そして、白桃色のメダカと小野さんが言われたメダカがこのタイプだそうだ。黒幹之系統を繁殖されていた中からごく少量が出てきたと言われるのだが、その由来は現在のところ不明である。
そして、小野さんの選抜交配、選別淘汰によって“小町”が出来上がったのである。白地の白さがここまで明瞭なメダカは多くのメダカ愛好家にとって垂涎の的になるだろう。
この個体は少しだが体外光を持っている。これは煌からの血統であろう。
“小町”はメダカ愛好家がその美しさを楽しめるだけでなく、出現率も比較的高いので、繁殖され、美しい“小町”を群泳させることもF1から楽しめる。それに、非透明鱗性なので、ラメ系統やオーロラ幹之などとの交配によって、さらに体外光を強く乗せることも難しくはなさそうである。
http://blog.livedoor.jp/aoimedaka/archives/36321884.html
http://blog.livedoor.jp/aoimedaka/archives/36304848.html
『岡崎葵メダカ』さんが、この“小町”を先行でリリースされるそうである。多くのメダカ愛好家の手に渡る日はもうすぐである。