2025年2月11日、茨城県神栖市で改良メダカを作られている『水郷めだか』さんにお邪魔させて頂いた。

本業が多忙なため、今冬はあまりメダカの世話はされておられなかったと言われる額賀義樹さん(44)は、メダカ飼育歴10年目、水郷めだか』の看板をあげられてから5年目を迎えられた。

ご自宅前に店舗を兼ねたハウスが1棟、ご自宅の裏手に本格的な繁殖用のハウスと屋外育成用のジャンボだらいが並べられ、コンテナを改良された加温設備も作られたいた。

加温用にコンテナを改造された飼育設備内部である。

こちらが額賀さんのメインの飼育、育成用のハウス

屋外のジャンボだらい群である。

『水郷めだか』さんのメダカを見て、まず、驚かされたのが、どこのメダカ専門店でも扱われているような品種、系統が全くと言っていいほどいないのである。

どの系統も額賀さんが交配によって作られた系統だらけだったのである。

額賀さんがメダカ飼育を始められたのは、額賀さんの父親が楊貴妃メダカを買って持ち帰られたことがきっかけだったそうである。
「こんな赤いメダカがいるんだなぁ」と思われたそうで、そこからメダカに興味を持たれ、初めて額賀さんご本人が購入された品種は“オロチ”だったそうである。

「黒が好きなんですよね」と額賀さん、それから趣味としてのメダカ作りを楽しまれるようになった方である。

「『水郷めだか』の看板をあげて、商売になると、商売の方に気持ちが行って悩んだこともあるんですけど、やっぱり楽しむことが大切なんだって考え直しました」と額賀さん、「メダカと向き合っていくこと」を大切にされておられるのである。

それでは、額賀さんオリジナルのメダカをご覧いただこう。

“アビス”である。この“アビス”は、『鹿行めだか』さんのAWシリーズや『レオンメダカ』さんの“墨狂極”にも交配に疲れた系統で、
後述する“ブラックフェアリー”のリアルロングフィンスワローに、アースアイ系黒体色のメダカを掛け合わせ累代している系統である。

“アビス”の名前はSF映画の『アビス』から名付けられたそうで、深海にいる見たこともない魚をイメージされたと言われる。

“レオニダス(スワロー)”である。
“アビス・リアルロングフィン”דブラックダイヤ北辻系ワイドフィン”のF3の個体に、さらに“ブラックマンバ”を掛け合わせたF3に至った系統である。“ブラックマンバ”を使われた理由は、ラメもだが、令和遺伝子を組み込むためだったそうである。

“ベルダ”である。
“月下美人”ד女雛系スワロー”のF4に“エメキン”や“レッドクリフ系スワロー”も掛け合わせたワイドフィンスワローの個体だそうだ。名前はスペイン語で女性の美しさなどの意味でつけられたと言われる。

“バンデッドアビスLG”である。
“アビス”から出た虎柄で、特にグロウボディの際立った個体に、有岡さんセレクトの“銀墨”のアースアイタイプを掛け合わせ累代してこられた系統。Lはラメ、Gはグロウの意味だそうだ。

“バンデッドアビス”である。
“アビス”ד和墨三色”のF1に、“アビス”から生まれた虎柄の個体を掛け合わせ累代した系統である。呼称は縞柄の“アビス”をイメージされたと言われる。

“ステラ”である。
“エメキン”דアビス”のF1で生まれたアースアイで、幹之に近い個体に“エメキン”を数世代かけ戻し累代した系統。“エメキン”タイプのアースアイを狙ってかけ戻しを進められてきたと言われ、額賀さんの狙い通りの姿になっている。

“バロンVA”である。
“黄金緑光”系דステラ”の掛け合わせで生まれた青体色個体にアースアイ、グロウボディーそして色素が乗った系統である。

“バロン”である。
“黄金緑光”系דステラ”の累代品種。表現は黄金体色にアースアイグロウボディである。名前はジブリ映画ののバロン男爵をイメージしてつけたそうだ。

“キューティーハニー”である。
“アビス”×紅白系幹之、紅マドンナと掛け合わせアースアイを遺伝させた系統。

“レオニダス”である。
“アビスリアルロングフィン”דブラックダイヤ北辻系ワイドフィン”のF3の個体にブラックマンバを掛け合わせたF3の個体群。
「レオニダス」の名前はベルギー王室ご用達のチョコレートブランドからイメージして名付けられたそうだ。

“ガルーダX”である。
“プラチナ幹之リアルロングフィン”דサンセット極龍”で、額賀さんは「プラチナ幹之にサンセット極龍の胸鰭のグアニンを乗せる」ことを狙われたそうで、そのF10に“エメキン”を掛け合わせ、F2からリアルロングフィンをワイドフィン化(これをガルーダとして管理)され、さらに“レーヴキッシング”をかけた改良途中の個体がガルーダXだと言われる。
レーヴを使われた理由は、累代が進んでいるので亜種表現の遺伝が良いと思い掛け合わせに使ったそうだ。この辺の感覚も額賀さんならではのものだと感じる。

“ブラックフェアリーテール”である。
2021年に“ブラックスワロー”×同時進行で掛け合わせていたオロチ系リアルロングフィンの累代で、F2でスワローとリアルスワロー表現が出てきたそうで、写真の個体は数世代累代した“ブラックフェアリー”に飛鳥系オロチを掛け合わせ、F2で生まれたスワロー個体だそうだ。ブラックフェアリーテール、可愛いけど、かっこいい黒い妖精のしっぽのイメージでつけられたそうだ。

“マリリン”である。
“エメキン”ד雪月花”の交配で進められた系統で、ワイドフィンにスワロー表現を加えた系統である。光体形や白体色の個体も出てくる。ヒレ伸びの良い個体のみを厳選されて累代繁殖をされた系統である。

以上、今回の撮影で撮らせて頂いた、額賀さん作の一部である。加温設備の水槽内には撮りたかった個体も見られたのだが、まずはしっかりと採卵していただくことにして、撮影はまた次回に!

額賀さんが掛け合わせを考えつく時は、「魚を見ていて、こういうふうになったらどうかな?」、「この交配で出てくるメダカは面白そうだ!?」というひらめき、創造を大切にそれを実践されておられるそうである。

今後は「やっぱりリアルスワローを作っていきたいですね」と額賀さん、リアルロングフィンの角ばった尾ビレからスワローのピョンピョンとヒレの軟条が突出する姿が楽しいと言われる。

松井ヒレ長は一切使っておられず、「リアルスワローを極めたい!」と力強く口にされたのである。

メダカ飼育の初心者の方が、いきなり『水郷めだか』さんに行くと戸惑ってしまうかもしれない。普通に見られるメダカがほとんどいないからである。

しかし、「掛け合わせを楽しんでみたい」、「個性的なメダカを作るには?」と思っておられる方にとっては、こんな素敵な場所はないのである。「なんでこれまでここに来なかったのか?」撮影を終わって本当に後悔したものの、またこれを機会に魚を見せてもらえる場所が増えたことを嬉しく思った。

日曜日限定の店舗は、今年は5月頃から始められる予定で、その前は、各地のメダカ関連のイベントに出展される予定だそうだ。『水郷めだか』さんが出展されるイベントに行かれた方は、値札ではなく、メダカ個々をじっくりと見てみられることをお勧めしたい。

メダカ飼育が楽しくなるヒントを『水郷めだか』さんの作られるメダカは、あなたに姿形、色合いで伝えてくれるに違いない。

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