2004年に広島県の『めだかの館』から発表された“楊貴妃メダカ”。発表当初、その濃い体色はヒメダカやシロ、アオメダカが改良メダカの主流だった中で、圧倒的な存在感を示し、呼称の良さも人気に拍車をかけた。
発表から20年近くが経過し、三色など様々な姿へと進化した改良メダカであるが、いまだに“楊貴妃メダカ”の流通量は多く、根強いファンがいると共に、この“楊貴妃”と“幹之”は改良メダカの基本として飼育を始める方も多い。
野生のメダカに対して、そこから黒色素胞が欠如したタイプがヒメダカになる。それと同様に、“楊貴妃メダカ”は“琥珀メダカ”の黒色素胞が欠如した姿という関係性になる。“楊貴妃メダカ”は体色の朱赤色が濃く、同じ黒色素胞が欠如した色合いのヒメダカと比べ、美しく鮮やかな体色を持つ。尾ビレの上下端や顎下から腹にかけて朱に染まるのも特徴である。
その鮮やかな体色は、水草の緑との対比でより美しく見える。ただ、この色みは太陽光の当たらない室内飼育では、だんだんと薄れてしまう。定期的に太陽光の当たる屋外で飼育したり、体色の鮮やかさを補助する人工餌料などを与えるようにしたい。繁殖させる際の親個体にも、しっかりと体色の濃い個体を選ぶようにして特徴の色みを維持していきたい。無選別な繁殖をさせていると、ヒメダカのような姿になってしまうので注意する。
多色の柄を持つ品種の人気が高く、初めて飼育したメダカが三色体外光という愛好家も増え、“楊貴妃メダカ”を飼育したことがないという話も多く聞く。「古い品種、単色、安価」といった理由で飼わないのはもったいないと言える。しっかりと濃い色合いに仕上がった“楊貴妃メダカ”の魅力は、多色のメダカに引けをとらないのである。