植本孝弘さん宅訪問
新型コロナによる緊急事態宣言も解除され、久しぶりの岡山入りである。主要駅や新幹線の乗車率からも、人の流れは回復しているように感じられる。各地でも様々な催しなども行われるようになってきている。11月3日には、兵庫県三木市で「さくらめだかとゆかいな仲間たち」というメダカの販売イベントが行われることになっており、大きな盛り上がりが期待される。この日お伺いさせていただいたのは、そのイベントの主要メンバーとして名前があげられている植本孝弘さん宅である。
植本さんの飼育場。ご自宅裏手のお庭に、プラ舟やジャンボだらい、box容器、丸鉢容器がずらりと並べられていた。「一番好きなのは紅白ですね」とおっしゃる植本さん。メダカ飼育歴は16年ほどになるベテランである。もともと、熱帯魚や海水魚といった観賞魚の飼育歴は40年を超えるキャリアをお持ちで、魚中心の生活をされていたそうだ。仕事的に転勤族だったそうだが、その際にも常に数本の水槽で飼育をされていたという。熱帯魚はポリプテルスの繁殖をしたり、アジアアロワナを幼魚からしっかりと育て上げられたなど、大型魚中心で、玄関前の表札には飼っていたアジアアロワナのレリーフにもされていたのが目に止まった。「そんな魚を飼っていたので、メダカは餌用としての存在だったんです」と笑われておられた。そんな時、職場の同僚であった同イベントの主要メンバーである木口秀清さんから、メダカを薦められたことが改良メダカにのめり込まれるきっかけだそうだ。木口さんはメダカ百華の取材で何度もお伺いさせていただいている方である。その木口さんから見せられた楊貴妃やダルマメダカは、餌用のメダカとはまったく別物の衝撃的な姿に見えたそうだ。
当時の楊貴妃は、今でもしっかりと大切に累代されておられ、思い入れの強い系統になっている。
累代を続けている木口氏の楊貴妃。その体色の濃さは強烈であった。
そして、5年ほど前にメダカ交流会in愛媛の垂水政治さんや交流会メンバーと知り合ったことから、さらにメダカ飼育に熱が入ったそうである。
改良メダカを飼育していると、新たな品種を導入したり、系統や特徴分けをすることで容器の数が次々と増えていくのはお約束である。庭へと続く部分など、ご自宅周りにもメダカ容器は増えていったそうである。
「紅白を仕上げたいですね」とおっしゃる植本さん。「“白地が綺麗で赤がくっきり、際が綺麗”と当たり前のことなんですけど、それが難しい」と取り組まれておられる。
“女雛”からの紅白
“女雛”と三色ラメの交配から紅白柄へ進めている系統。青いラメが紅白に映える姿に作られている。
“女雛”もしっかりと維持されている。「柿色と体の黒さ、ラメなし」というオリジナルの特徴を大切にされておられ、黒容器に溶け込むほどの体の黒さが印象的であった。「いまいち人気が低いのが残念です」と笑われていた。
もうひとつ、力を入れられているのが“夜桜”の累代である。めだか日本海・中島さんの“夜桜”を元に、派生したタイプを系統分けして管理されておられた。
頭赤、柄物、白体色、外光持ちなど、複数の系統で管理されている。「いろんな姿が楽しめるとこがいいですね」と、特徴的な表現から自分好みの姿に仕上げる行程を楽しまれている。
ただ、生き物であるからすべてをコントロールすることは難しく、うまくいかなかったりすることもあるが、それを含めてがメダカ飼育の魅力とお考えである。また、そんなメダカを介しての友人達とのつながりも大切にされている。イベントに参加すれば、新たな出会いや仲間の作ったメダカに刺激され、ご自分のメダカ作りの活力にもなるそうだ。「お店行っても話し込んで終わっちゃうからいいお客さんじゃないんで」だそうだが、友人や親しいお店といろいろなやりとりをしながら楽しくできるのがメダカの醍醐味とされておられた。