『北本の太郎』さん宅訪問
『北本の太郎』さん宅へお邪魔した。商売とは関係なく、純粋にメダカ飼育を楽しまれており、特に黒百式に関して、並々ならぬこだわりを持って取り組まれている方である。初めて訪問させていただいたのは、メダカ百華8号用の取材で、2019年秋であった。オークションで見つけた“黒百式”は、「いくら積んでも欲しい!」と思えたほどであったそうで、その“黒百式”を中心に、“緑光”、“全身体内光”との交配系統を見せていただいた。その交配系は、後にハウスネームがつけられることになる。
『北本の太郎』さんの飼育場
引っ越しを期に、お庭に専用のハウスを建てられた。それまでの屋外飼育では、温度変化や雨水が入ることでの水質変化があったが、ハウスにしたことで、管理が格段にしやすくなったそうである。
プランターを中心に、NVボックスなど大小さまざまな容器をお使いである。飼われている品種が“黒百式”系中心ということもあり、容器の色は白が大部分を占めている。
また、ハウスの利点として、加温をあげられていた。やはり屋外に比べれば、温度管理がしやすくなる。中央に見える大きな木箱は、冬季の保温用箱になる。中に小型容器を敷き詰め、周りの水をヒーターで加温し蓋をすることで全体を温めて、冬場でも採卵や稚魚の育成を行える。
新たな交配などもされており、この結果も楽しみであった。
最初にお伺いした際に、横見で独特な黒さを見せ、透明鱗性だがエラ蓋まで黒くなる姿を、「今、一番かわいいお気に入りです。女性や一般受けはしないかもしれませんけど」とも笑われていたのを覚えている。そして、翌年夏、思い描いていた姿になったことからハウスネームをつけられた。
まずは、“黒百式”ד緑光”の交配による“黒衣(くろころも)”
体内から滲み出るような黒さを持つ体に、“緑光”由来の輝きを持たせ、累代が進むにつれ、輝きが体側を埋めるほどの表現になっている。
そして“黒百式”ד全身体内光”の交配による“天鵞絨(びろーど)”
埼玉県『行田淡水魚』の黒みの強い全身体内光を使うことで、その黒みを伸ばしている。透明鱗性の個体を親に使っていても、エラ蓋が赤く透けず、フルブラックフェイスと言えるような黒い顔と、体側の輝きを両立させつつある。
昨冬までに、F8世代まで進めており、今シーズンもより特徴が顕著になるように選別を進めている。“黒百式”系統では、小型化しやすい傾向も見られるが、その辺りも改善してきたいとされていた。さらには、白体色で黒みと体側の輝きを目指す“白百式(仮)”
“黒衣”ד天鵞絨”
こうした自家産のクロスや他品種との交配でヒレ変化を目標にされるなど、新たな試みも精力的に試されていた。
お仕事も忙しくされ、メダカの世話は帰宅後、お子さん達との時間を楽しんだ後、深夜に行うという具合にご家族を大切にされている方である。「自分のメダカを作出してみたい」という当初から持たれていた気持ちを実現し、ご自分のこだわりに一直線な姿に、本当のメダカ好きな愛好家の姿を見せていただいた。