『上州めだか』訪問
午前中の『ひまわり園』取材を終え、午後には同じ群馬県の『上州めだか』へお邪魔した。今回の主目的は、“王鱗”である。“王鱗”は“鱗光”ד王華”で『上州めだか』岡田さんが交配を進めている系統である。垂水政治氏の作出された“鱗光”のロングフィンやヒレ光などの特徴に、岡田さんの作出された特徴的なラメ模様を持つ紅白ラメ“王華”を交配された。2020年の9月に見せていただいた際には、まだハウスネームはつけておらず、単純に“鱗光”ד王華”として4タイプほどを見せていただいていた。その後、累代を進め、“王鱗”と名付けられたのである。
外は上州のからっ風が吹く状況であるが、ハウスの中は春を通り越して夏場のようである。中に入るとすぐにメガネが曇り、視界がなくなる。おなじみのたたき池には、青々としたホテイソウがひしめき合っており、その下にはメダカ達が群れているのである。
早速、岡田さんが“王鱗”を出してくれる。前回、見たときよりも累代は進んでいるが、まだ数タイプの姿を見ることができた。
まずは、岡田さんが「ベース的な存在」とされているタイプ
体外光とラメを併せ持っており、黄色がかった緑色の体色を持っている。“鱗光”っぽさを持ちながらラメ表現を重視されていた。体色も緑黄金のような色合いを意識されている。
「若干の色合い」とされていたタイプ
やはりラメと体外光はしっかりと入るが、体色は淡い緑がかった表現であった。
ラメの強いタイプ
体色はブロンズ色から緑色の範疇といった具合で、ラメ表現が強く出ていた。
黒体色のタイプ
基調色が黒っぽいことから、青みがかった体外光やラメ表現になっている。
ブロンズ体色のタイプ
“鱗光”の兄弟品種である“ブロンズ”のような体色を見せるタイプで、明瞭な体外光を持つタイプとラメが密に並ぶタイプとが見られた。
この個体は、特に“王華”らしいラメ並びを見せていた。
個人的には、このブロンズ体色をしたタイプが好みであった。
また、ベースタイプの中には、体外光が柄のように入る個体も見られた。
「こんな表現も面白そうですけど」と岡田さん。市場を主戦場とする養殖業のため、安定した系統を大量に作ることが大切ではあるが、こうした新たな表現作りも精力的に進められていた。
「作っていると可愛くなる」とのことで、別のお気に入りを最後に見せていただいた。
“煌ラメ”と呼ばれている系統である。“煌”というと、“体外光を持つ女雛”という姿が思い浮かぶが、特にラメ表現にこだわる『上州めだか』では、ひたすらラメを強めた姿に作られていた。3年ほど取り組んできて、ここ1、2世代でやっと満足いくラメ表現にできあがったそうである。それだけこだわって作った系統は、「可愛く」感じるものだろう。仕事としてのメダカ作りであるが、こんな風に感じながら作る岡田さんのメダカは、次の時にはさらに進化していそうで、また楽しみである。