惹かれた品種 “陽炎”
非透明鱗三色の銘品種として人気の“あけぼの”の作者である岡山県の小寺義克氏が、“あけぼの”に体外光を乗せるように交配を進めて作出したのが“陽炎(かげろう)”である。
2019年の春に小寺さん宅へお邪魔し、撮影した親個体
朱赤に染まる頭部に、体の墨模様、その上に入る体外光が目を惹く。小寺さんが、黒幹之に楊貴妃と幹之との交配系を掛け合わせ、さらに“灯”を交配して作出された体外光を持つ系統である“金色夜叉”、“紅夜叉”を“あけぼの”と交配したものが“陽炎”になる。
この当時は、三色柄に体外光を持つメダカはまだ少なく、破線状に入った体外光でも、強烈に印象に残ったものであった。
さらに、まだ若いサイズであったが、気になった個体がいた。
墨模様はまだこれからだろうが頭赤で青白く輝く体外光が背にしっかりと伸びている姿であった。この青みには強く惹かれた。
そして、翌年の秋。浜松の清水金魚の市場で、久しぶりにこれはという“陽炎”と出会った。
出品されていた“陽炎”。出品者は、何度も取材、撮影をさせていただいている宮本浩克さんであった。
後日、飼育場で種親を見せていただいた。小寺さんの所で見た、あの青みがかった体外光が太くしっかりと入った姿をしており、朱赤の頭赤表現といい、魅力溢れる姿に仕上げられていた。
三色柄で体外光を持つ品種も増えた今日ではあるが、この青みがかった光沢と頭赤の表現は忘れられない姿である。