こちらは埼玉県の『桃ちゃんめだか』のハウス内
大型のジャンボプラ舟がずらりと並ぶ圧倒的な光景が広がる。
屋号だけ聞くと、小売店のようなイメージを感じるが、こちらは小売業ではなく、卸をメインとしたメダカ生産業をされている。
ハウスの周りには、ジャンボたらいやプールなどが所狭しと置かれていた。
各容器は注水やオーバーフローによる排水の配管が大小の容器に施されていた。数を採るためにも、こうしたメンテナンスを効率よくできるように工夫されていた。
水の管理には気を使われており、エアレーションもしっかりされ、どの容器も澄んだ水で元気よくメダカたちが泳いでいるのが印象的であった。
お名前にも桃の字は入っていないのに、なぜ「桃ちゃん」なのか、代表の藤川泰広氏にお聞きしてみると、「昔、小学生の姪っ子が手伝ってくれていて」と、その子が「桃ちゃんが育てたメダカ」と楽しまれていたのがそのまま屋号になったそうである。
元々、熱帯魚を飼育するなど、魚好きであった藤川さん、ヒメダカと野生メダカしかいなかったところに、白メダカが登場したのを見て衝撃を受けられたそうで、そこからメダカへの興味が深まり、幹之の登場も思い出深いものとされていた。
以前はそれほど数も多くなく、オークションに出されたり、道の駅に置いたりされていたそうだが、7年ほど前から市場への出荷をメインにされるようになった。今では道の駅は4カ所ほどに出されており、週末には300パックが出ることもあるという。「朝4時からパッキングしてます」と笑っておられた。全体の出荷量としては年間5万匹位になっているそうで、埼玉と浜松の市場へ出荷されている。市場は年に40数回行われているそうで、ここ5年は皆勤賞で出荷されている。趣味で飼っていれば、調子が悪くなって死なせてしまってということもあるが、生産者としてはそうはいかない。もちろん調子を悪くして全滅させてしまったこともあるそうだが、市場の先輩や仲間からアドバイスをもらい、コンスタントで確実な出荷を心掛けておられた。
ジャンボプラ舟の上の小型容器や浮かべられた網カゴの中には、近日、出荷用のメダカたちが選別されていた。出荷するメダカのサイズは揃えられており、雌雄比も大きな偏りが出ないように選別がされていた。どちらも手間ではあるが、こうした気を使われた出品魚は、買い求める小売店側からすれば、安心でき、信頼できる出品者と評価されるものである。
出荷用に選別されていたメダカたち
小寺系の全身体内光。体内光がよく見えるように、黒みの出た個体は外されていた。
緑光。体内光の表現がしっかりと現れたタイプにまとまるように殖やされていた。
幹之。いろいろな高級品種も出てきているが、楊貴妃と幹之の人気は不動のものだそうだ。今年の幹之の出来には満足されているそうで、どれもしっかりと口先まで光るフルラインの姿であった。
こちらは紅三色カブキの光体形
お好みとしては光体形のメダカがお好きとのことであった。ただ、光体形は骨曲がりなど体形作りでどうしてもロスが出てしまうので、趣味の部分が強いそうだが、しっかりできた時は市場での評価は高いので、乙姫や黒黄金なども群れていた。
『桃ちゃんめだか』といえば、“バタフライ”である。
ヒレの伸張する2品種、“松井ヒレ長”と“スワロー”を交配し、光体形で仕上げられたタイプである。「ヒレの長い品種同士で掛けたら、F1でどちらとも言えない大きなヒレのメダカが出て、面白いと思ったんです」とされ、そこから光体形のよいものを残して固めてこられたそうだ。4世代ほど経過した2017年、チョウチョみたいということで“バタフライ”の名で紹介された。
現在では7世代目になっており、楊貴妃や琥珀、シルバーなど5タイプほどを作られている。
年をとっていた個体ではあるが、ヒレの輝きが印象的であった個体
“華蓮”のバタフライで、この体色にヒレの青さがよい感じである。この姿での群泳が楽しみでもある。
変わり種として見せていただいたメダカ
行田淡水魚の“北斗”を殖やしている中から出てきて“白北斗”と呼ばれていた。独特な腹膜の色合いをしており、体表に並ぶ黒い色素の表現も特徴的で、これも面白い姿であった。
ご自分の趣味的な楽しみもされながら、出荷するメダカに強いこだわりをお持ちの『桃ちゃんめだか』であった。メダカ話はいつまでも尽きず、あっという間に時間は過ぎていた。
常温で採卵するため、しっかりと産み始める4~5月が採卵の盛期だそうで、100組の親で2週ほど人工芝に産卵させ、4~5千匹をプールで管理されるという。
このプールでその稚魚たちが育つ時期には、見事な群泳を見せてもらいたいと思ったものである。
こんばんは。緋色体バタフライ居ますか?
弊社は出版社で生体は扱っておりません。
当時、桃ちゃんめだかさんでは、楊貴妃体色のバタフライも生産されていました。