今日はちょっと奇抜なメダカを
このメダカ、ただ単に見れば、篤姫のアルビノである。
この2点は同一個体である。上の写真では左側の胸ビレは普通にあるのだが、右側の胸ビレは消失している。
こちらも左側の胸ビレは上端が一本残っているだけである。
広島県福山市の『栗原養魚場』の栗原さんから、「お客さんのところで、胸ビレがないメダカが何匹かまとまって出たみたいなんだけど、何でだろう?」という話しからであった。
「胸ビレがない?」自分が飼育したメダカでそういった個体がいただろうか?と考えてみたのだが、確実にハネる魚なので結構、覚えているものなのだが記憶になかった。
そして、調べてみると、pℓという遺伝子があることを見つけた。
pℓ遺伝子とは、常染色体上にある潜性(劣性)の遺伝子で、卵の胚の時から、胸ビレが分化せず、欠失するというもので、どうやら、遺伝性のものだということが想像できた。
栗原さんに連絡し、サンプルを送ってもらうことにした。それが今回紹介する篤姫アルビノの胸ビレが欠失した個体たちである。
両胸ビレが欠失したメスである。
右側の胸ビレが上端だけを残して欠失したオスである。
右側の胸ビレだけが欠失したオスである。
アップで撮影してみるとヒレの基部はあるものの、右側の胸ビレが欠失していることがよく判る。
合計、7匹のサンプルを頂いたのだが、両胸ビレが欠失したものが2個体、右側の胸ビレだけが欠失、あるいは痕跡を残す程度の個体が5個体いた。
さらに調べてみると、左胸ビレ欠失変異lpℓという区分があるそうで、右胸ビレ欠失変異はrpℓということになるのだろう。
このpℓは、普通体色の兄弟、姉妹魚には全く出なかったそうで、アルビノにだけ出たと言われる。
アルビノの遺伝子ibと連鎖しているのかもしれない。
いずれにしても、累代繁殖をするメダカではなく、ハネるメダカなのだが、単純に「胸ビレがない」という言葉ではなく、しっかりと遺伝的な裏付けがあることを今回、知ることが出来た。
ちなみに、「両胸ビレがなくても泳げるのか?」と言えば、今回の7個体は普通に泳ぎ、普通に餌も食べることが出来ていた。
今回のメダカはあくまでも番外編で、記録として残しておくことにしたものである。