紅
楊貴妃の光体形品種は“東天光”が知られ、楊貴妃透明鱗の光体形である“紅(くれない)”も古くから知られる人気品種である。光体形のメダカは、本来背ビレがあるべき場所にしりビレが位置することで、背ビレが後ろへ押し出される形で尾ビレの上側に癒合する。そのため尾ビレが大きく、背ビレしりビレと三つのヒレが大きく見応えある姿になるのが特徴である。
“紅”は、福岡県の小宮正城氏が2008年に楊貴妃透明鱗を固定し、翌年に楊貴妃透明鱗光“紅”として発表された品種になる。体やヒレに白飛びと呼ばれる部分的に朱赤色が抜けたようになる特徴を持ち、発表されてから10年以上経つが、キャリアの長い愛好家に根強い人気を持つ。透明鱗でエラ蓋が透けた個体では、エラの赤と目の青さが目立つ可愛らしい姿になる。
光体形の品種は、脊椎骨に変形が出やすいという弱点があるためか、殖やしていてもロスが多く、取り組む養殖業者や愛好家は減少気味なのが残念なところである。この脊椎骨の遺伝率は非常に高いので、親に使う個体には注意が必要である。ただ単純に殖やしてると、背曲がりばかりという状況になりかねない。上見だけでは見落としがちになるので、選別する際にプラケースなどで横からもチェックして、変形の見られる個体は積極的に淘汰し、脊椎骨がまっすぐな個体を残すようにするとよい。