『静楽庵』の作り出すメダカが教えてくれること
岡山県美作市にある『静楽庵』にて、2019年秋に撮影させて頂いた“サファイア”である。
『静楽庵』では、“背ビレなし黒ラメ幹之 サファイア系”として紹介されている系統である。
ピーシーズとしては、もう単に“サファイア”で良いだろうと判断しているほど、特徴的な青い輝きを持ったラメ光沢が目立つメダカである。
2020年春より正式リリースされてから、高い人気を得ている系統である。
『メダカ百華第10号』で掲載させていただいた、さくらめだかさんが初期のサファイアから累代繁殖しているものの中から出てきた、頭部に茶褐色の色合いを持った個体である。
https://www.instagram.com/sakuramedaka2017/
オスでだけ出るものかと思っていたのだが、この色合いのメスもいるようである。
こちらも『メダカ百華第10号』で掲載させていただいた、『静楽庵』が進めているサファイア×三色ラメ幹之の交配系統である。
この系統が今後、どのように固定されていくか?楽しみである。
そして、また別に『静楽庵』が進めているサファイア系の撮影をする機会をいただいた。
「白ブチラメ幹之 サファイア系」として進めておられる系統である。
白ブチラメ幹之と言えば、ラメ幹之系統の発表当初から知られているものだし、三色ラメ幹之のハネとしても出てくるもので、今では本気でこの白ブチラメ幹之を殖やしている、改良を進めているという愛好家が少ない系統でもある。
その白ブチラメ幹之に、「サファイア系独特の青味の強いラメ光沢を移行しよう!」というアイデアがあったからこそ、このような「白ブチラメ幹之 サファイア系」に相応しいメダカに仕上げられたのである。
サファイア系に関しては、背ビレなしの方がサファイアらしい二重に重なるようなラメ鱗の表現が出やすい。これは、背ビレなし琥珀ラメ幹之でも同様で、背ビレがないことで、ラメ鱗の表現が変わるのである。
同じことは、松井ヒレ長の血統をラメ幹之系統に入れると、ヒレ長と同時に、細かいラメ鱗が整然と並ぶ表現になりやすいことでも言える。
ラメ鱗は、ラメの多少だけを見るのではなく、じっくりと観察することで、その表現はまだまだ様々に変化させることが出来る。
また、体外光を持つ系統を交配することで、ラメ鱗の表現はサファイアのような二重に重なっているような表現を作りやすくなる面もある。
サファイアという人気品種がリリースされたことで、サファイアを殖やして販売する人は多いのだが、さらにサファイアに磨きをかけようとする人は意外に少ない。
改良品種はプラスマイナスを考えながら、現状維持させたり、進化させたり、時には回り道をして表現を固めていくことも大切である。
この写真をインスタグラムに掲載したところ、
https://www.instagram.com/p/CLEl62MJEyD/
久々に24時間で「いいね」が700超えをした。
それだけ、「パッと見」で多くの人から「美しい!」と思われる系統に仕上げられつつある。
『静楽庵』ではこの写真の個体の次世代を育成中で、その固定度、サファイア系らしいラメ鱗の表現を見ながらリリース予定を決められるそうである。
サファイアという魅力的な系統を手にしたなら、その累代繁殖をするだけでなく、「このサファイアが持つ青く重なり合うラメ光沢をどう使っていくか?」それをイメージ出来るか?を各自が試してみると良いだろう。
昨年のコロナ禍から、有名な系統を入手して、それを累代繁殖して販売する人が増大しているのだが、それって技がないというか、メダカ作りの情熱ではなく、お金儲けでしかなく感じる。
せっかく改良品種を手にするなら、メダカに情熱を持って、接してもらいたのである。
『メダカ百華第11号』の取材を、春来と共に始めるのだが、情熱を持ってメダカを作っておられる方って本当に少ない気がしている。改良品種は、アイデア、イメージ作りができる人だけが作れるもので、情熱を持って交配したメダカは、多くの人に感動を与えるものなのである。