今年、第114回という長い歴史を積み重ねてきた、横浜観魚会は、横浜を発祥とする関東東錦も品評会を行っている金魚愛好会の一つである。
東錦は、昭和の初め、今から90年以上も前に、横浜の金魚商、加藤金蔵氏により作出された品種である。以後、大きな人気を呼び、全国各地に愛好家が増え、らんちゅうの愛好会が、この東錦も一緒に品評するようになっていたのであった。
『日本東錦協会』なる全国をまとめる団体もあったほどで、多くの愛魚家の方々が、この金魚に魅力を感じ、支持をしたのである。しかしその時期はあまりにも短かったのである。大きな戦争があったにも関わらず、終戦後、日本が復活のきざしを見せた頃から、またその人気を盛り上がらせたのだが、昭和40年代後半には、あまり支持されなくなったのである。
「何故か?」その審査・審美の基準が、体形はもちろん、体色にも及ぶからである。その体色は、東錦の重要な部分だからである。「頭は赤、体は浅葱、尾は蛇の目」なるこの品種の理想体色を表す言葉が、深く浸透したからだろう。言うのは簡単が、そうそう理想の魚は出現しない。多産系で大食、年と共に体色は変化するので、先が読めない。大きくなるので、収容も大変であるなどであろう。
浅葱色の体色を維持するには、青水飼育が必須である。薄青水と呼ばれる程良い青水が関東型東錦には理想だとされているのである。高温での飼育や、透明鱗の皮下の黒色素胞(メラニン色素)は、光線に対して黒色を増すために、黒ずんでしまう。いわゆる焼けてしまうからで、無風状態の時の蒸れも大敵で、真夏では少しの油断もできないのである。体調には関係ないもので、一度焼けてしまうと、元には戻らないので、どんな銘魚でも、黒ずんだ体色をした魚は審査の対象にはならないのである。
現在では、この関東型東錦を品評する愛好会は、東京の葛飾愛魚会と茨城の土浦愛魚会だけである。特に葛飾愛魚会は飼育する方が減ってきており、年々、出品魚は少なくなっている現状がある。それでも東錦愛好家の方々は、先に書いた、この品種の難しさを大きな魅力であると感じておられるのである。どの品種でも突き詰めていくと奥は無限に深いのである。
日本オランダと三色出目金(キャリコ出目金)の交雑で作出された、関東型東錦(長手の東錦とも呼ばれる)は、当社が発刊していた『金魚伝承』でたびたび紹介するようになって以降、再び、大量生産型の東錦とは区別して認識されるようになってきている。しかしながら、流通量は少なく、入手も簡単ではない。入手に対しての一番の近道は、これらの愛好会に入会して、会員さんから分譲して頂く事だろう。プロの金魚生産者は選別量の多い品種を作ることを避けるのは当然のことで、体形で満足な魚を作るだけでも大変な長手のオランダ体形の上に、この関東型の東錦では、体色の善し悪しが価値観の優劣を決定的にしてしまうのである。良魚を購入して楽しむというより、昔ながらの「種親を分譲してもらい、翌年から自ら仔引きして良魚を得る」ことが不可欠なのである。幾分、認知度も高まり、少量であるが、販売ルートに乗るようにもなってきているので、入手の機会に恵まれたなら、じっくりと腰を据えて楽しんでいただきたい。
第114回品評大会
関東東錦
親魚の部

東大関 矢作雄一

西大関 中澤俊男

立行司 田村 智

取締一 中澤俊男

取締二 中根俊彦

東関脇 中根俊彦

西関脇 中澤俊男

東小結 矢作雄一

西小結 中澤俊男

勧進元一 中澤俊男

勧進元ニ 中澤俊男

行司一 高瀬有三

行司ニ 中澤俊男

行司三 中根俊彦

脇行司一 中根俊彦

脇行司ニ 中澤俊男
