透明鱗三色の子ら
透明鱗三色と呼ばれるメダカは、琥珀透明鱗や朱赤透明鱗に斑模様が入ったタイプが起源になる古くから知られる品種である。透明鱗性の透け感のある体に朱色や墨斑が入ることで三色柄を表現している。後に登場する非透明鱗三色と比べると、地肌の色合いの白さが違うのではあるが、しっかりと作り込まれた透明鱗三色は魅力溢れる姿をしている。
こちらは、『わくわくメダカ』鈴木健二氏の作る“紅華錦”
鈴木さんは、透明鱗三色にひたすらこだわり、累代されること13年、職人気質のこだわりで仕上げたメダカである。「年間3万匹くらい」という数から選別された個体が、鈴木さんの種親として残されるのだが、「質は数から」と強いこだわりを持って取り組まれているからこその姿である。
前回お伺いした際に、この“紅華錦”の卵が付いたホテイアオイをいただいていた。
導入時の水がよくなかったのか、フ化させることができた数が少なかったのだが、そこから残った姿を見ると、透明鱗三色を作り上げることの困難さがよく理解できた。
朱赤の体に斑模様が入る、赤ブチなどと呼ばれる一番多く出たタイプ。ブチ模様好きな自分としては好きな表現ではあるが、透明鱗三色としては三色柄でないといけない。
こちらは白っぽい体色ではあるが、朱赤や墨の出が悪い。
微妙に地肌が見えている風ではあるが、色味は薄い。
墨が全体的にうっすら入っているためか、くすんだ感じで、さらに朱赤も少ない。
このタイプも多かった。朱赤ももっと濃く出ないとだが、墨がごま塩のように点在している姿。ある程度密集していないとブチ模様に見えない。
朱赤はそれなりに出たが、やはり墨が散っており、三色柄か?と思えてしまう。
唯一、と言った感じの個体。それなりに朱赤も濃く、墨もそこそこ集まっている。ただ、ブチ模様としてはもっと出て欲しいところである。
と、育てた数が50ほどなため、比率としてはなんとも言えないのだが、「やはり簡単ではない」というのが正直な感想である。柄模様は個人の好みがあるので、なにが正しいというのではないが、今回の場合は“紅華錦”の卵からなのだから、お手本のような姿を夢見るのではあるが、やはり「質は数から」、もっとしっかりと数を採って選び出すことが大切だろう。選びに選び抜いて鈴木さんが育て上げた個体が“紅華錦”と名乗れる。その難しさは想像の遙か上だろうが、そんな難しいメダカだからこそ、気に入った個体ができた時の嬉しさも大きいのだと思える。