『堀切めだか』訪問
久しぶりの京浜東北線に乗り、向かうはこれまた久しぶりの堀切菖蒲園駅である。この駅には年1回降り立っていたのだが、昨年はそれがなかった。楽友らんちう会の品評大会撮影のためであったが、昨年はコロナの影響で大会が行われなかったためである。その堀切菖蒲園駅から住宅街の中を歩くこと15分ほど、すると4階建てビルの1階にプラ舟やBOXケースが並んでいるのが見える。
昨年8月にオープンした改良メダカ専門店『堀切めだか』である。全国的にメダカ人気が高まっており、大小さまざまなメダカ専門店が増えているが、こと東京神奈川では数えるほどしかないのが現状である。こちらはある意味希少な、東京23区内葛飾区の専門店である。
店内に入ると、大型の水草レイアウト水槽やキューブガラス水槽が並び、舟が平面に並ぶ既存のメダカ専門店とは趣が異なり、落ち着けるアクアリウムショップのようなイメージである。
代表の兵頭さんは子供の頃から金魚や熱帯魚を飼育してきた魚好きで、先の楽友らんちう会にも所属し、品評大会での成績も数多くお持ちである。
40を過ぎた頃、近くにある専門店の影響から、ネイチャーアクアリウムにはまり、世界的なコンテストにも参加するほどになったが、こうしたレイアウト水槽は水草が主役で、ある時、ペット感のある魚を飼いたくなり、ディスカス、ナマズ、らんちゅうでどれにするか悩まれたそうだが、ヤフオクを通じて同会に所属する杉本氏と知り合い、ネイチャーアクアリウムかららんちゅうへ本気の取り組みが始まった。らんちゅうは育てていく途中、ハネと呼ばれる選別外の個体が出るが、それを近所の方向けに販売していたら、「メダカはいないの?」と聞かれることが多かったそうだ。そこで、やはり同じらんちゅう会の七尾氏からメダカをわけてもらい、繁殖を始められた。熱帯魚を飼っていた頃から、お店を出す考えは持たれていたそうで、メダカ専門店を強く意識しだしたそうだ。思い立ったら即行動する兵頭さん、関東近郊や浜松、岡山など各地のメダカ専門店を訪問し、種親を購入したり、お店としての参考にする部分などを貪欲に収集されたそうである。
4階建てのビルは、自宅兼仕事場になっている。就職サイトを主催されており、ビルの一部は就活大学生の合宿所として使用されていたそうだが、このコロナの影響により合宿事業が止まってしまったため、ビルの有効活用もあって専門店を開業された。学生の使っていた部屋は、メダカの養殖場となっていた。
二段ベッドをそのままメダカに活用されている。この部屋はエアコンで加温されており、収容された三台のベッドはメダカ容器で埋まっていた。
観察がしやすいように、ガラス水槽に採卵する親を入れており、5日毎に取り出す産卵床を手前の容器に並べている。フ化後しばらくすると、稚魚はより大きな下段の容器へという具合に、各ステージで容器を変えて管理されている。
屋上にもメダカ容器が並ぶ。
ジャンボダライを中心に、大小200個ほどの容器で、室内で産まれた稚魚たちがこちらで育成される。これから暖かくなると共に、容器はメダカで埋め尽くされていくだろう。現在は約120品種ほどを保有されており、室内では50品種ほどが冬場でも採卵されていた。昨年は種親集めに徹したそうで、現在販売されているのはその子供達である。即戦力的なサイズではなく、これから色や柄がでている幼魚であるが、大部分を占める初心者のお客さんにとっては、幼魚の方がまとめて購入もしやすく、育っていく過程も楽しめると分析されている。
お好みのメダカをお聞きすると、「しぼりにくい」と悩まれていた。多趣味なため、たくさんの品種があるメダカは合うそうで、どの品種も魅力があり、楽しまれている。「いろいろなことをやりたい気質なんです」と、飼育の仕方も熱帯魚やらんちゅうの飼育経験を元に、ろ過や水質など、試しながらよりよい飼育を突き詰めている。「常に食べさせているイメージで、そしてしっかり育てるには水量が大切ですね」とされ、大きな容器でしゅっと走るように泳ぐ姿が好きだとされていた。
背ビレなしメダカの“マルコ”
「らんちゅうも背ビレないから」と笑われていたが、こうした基本品種をしっかりと系統維持しなければいけないとも意識されていた。
“ルビー” “紅玉”の背ビレなし品種
しっかりと産卵しており、この親からの子供達が販売される。
べっ甲黄金
ダルマメダカは女性人気も高い。
“神龍”
松井ヒレ長アルビノ幹之の光体形品種。繊細な美しさを見せる。
最初の年は種親集めに力を入れられており、こうした親達の子供が販売の主力になっている。これから暖かくなり、より育った個体が出てくるのが楽しみであった。
40年のキャリアになるバドミントン、IT関連事業、サイト運営、出版、カメラマン、ネイチャーアクアリウムにらんちゅう、メダカと多彩な顔をお持ちの兵頭さん。どの分野も勉強を怠らず、様々な実践を糧に突き詰めておられる。特に最新の分野になるメダカに関しては、「こんなにすごい分野はない」と、老若男女大人から子供まで取り組めるメダカは、大衆娯楽として高い可能性を持っていると判断されている。「やれることやりたいことはいくらでもある。質の高い仕事ができる」と、ただのブームでは終わらないビジネスとしてのメダカを視野に、『堀切めだか』は発展していく。