シクリッドの楽しみ方 再考 1
熱帯魚の中でも、シクリッドの仲間は高い人気を誇っているグループである。
だが、ここ最近の動向を見ていると、シクリッドの面白さを順序立てて伝えていく、あるいはステップアップしながらシクリッドの魅力を知っていくような種類が欠けているように思える。
これは人気の高いアピストグラマ・エリザベサエである。
実は水質的な適応性が他のアピストグラマに比べると狭いのだが、種小名が有名で、アピストグラマを飼うアクアリストにとっては誰もが飼いたくなる種類になっている。
それは決して悪いことではないのだが、エリザベサエからいきなり飼うっていうのは「どうなのかなぁ?」と思うところはある。
こちらはアピストグラマ・トリファスキアータ
こちらはアピストグラマ・ボレリィ
そしてこれはアピストグラマ・カカトゥオイデスである。
エリザベサエと違い、比較的、広い水質順応性を持った種類で、体色も綺麗、そして繁殖も容易である。
最近のマーケットを見ていると、こういった誰にでも飼育、繁殖が楽しめる種類が大切にされていない印象を受ける。初めてドワーフシクリッドを飼育する人は、種類を選ぶのではなく、ショップで実際に魚を見て、「綺麗!」と思って飼いたくなるものである。
そういった部分が今は失われきつつあるのが何より心配である。
こちらはアピストグラマ・アガシジィ スーパーレッドと言われる飼育変種である。主にヨーロッパでブリードされた個体が輸入されてくる。
こちらはアガシジィのテフェ産のワイルドである。
魚類学者であるアガシズに由来した学名で、エリザベサエは、アガシズの奥さんのエリザベスに因んだ種小名である。
カカトゥオイデスもペルー産の種類だが、ペルー産のアピストグラマとして広く知られるようになったこのナイスニィも一世を風靡した種類である。
そして、やはりペルー産のアピストグラマ・アタフアルパである。
アピストグラマ・“インカ50”の名称で知られるアピストグラマ・ベンシュイも美しいペルー産のアピストである。
ペルー産のアピストはワイルド個体が比較的、コンスタントに輸入されているのだが、ブラジルのアマゾン中流域やネグロ川水系産のアピストに比べると価格は手頃なのだが、どうも大切にされていない感じもする。
実はシクリッド全般を紹介する『シクリッドBOOK』という本を企画しているのであるが、業界関係者と年末に話をした時に「キャットフィッシュ全般の本やグッピー、ベタとかは良いと思うけど、シクリッド全般の本は売れないよ!」と言われてしまった(苦笑)
自分にしてもcolにしてもシクリッドは好きなグループの一つであり、そう言われると悲しくなってしまうが、それが現状なのである。
ヨーロッパからの輸入魚にしても、チェコ産の奇形がいたり、安価さを追求するために、品質は二の次的な扱いが過去10年以上続いたことで、結果としてドワーフシクリッドの人気種であるアピストグラマが希少種だけが売れるような状況に陥ってしまっている。
2017年からは、またマーケットを再構築するぐらいの変化を期待したいが、それは輸入元、ショップなどが協力してくれなければ実現はしないかもしれない。
もちろん、日本国内のブリーダーが良い魚を作り、問屋、ショップに流通するような道もこれからは模索していく必要もあるだろう。
自分たちは『シクリッドBOOK』で魅力を紹介していくことを率先したいが、まずはこのホームページでアピストグラマを始めとするシクリッド類の魅力を定期的に紹介していくことにしたい。